米国の非営利調査機関Tech Transparency Project(TTP)は2026年4月15日、Apple AppStoreとGoogle Play Storeの検索・広告・オートコンプリートシステムが、自社ポリシーに反するnudifyアプリへユーザーを能動的に誘導していることを実証した調査報告書「Apple and Google Are Steering Users to Nudify Apps」を公開した。TTPはCampaign for Accountability(CfA)の調査部門として設立され、主要プラットフォーム企業のビジネス慣行と社会的影響を分析することを使命とする非党派・非営利組織である。
本報告書は2026年1月27日に発表した第1弾調査「Nudify Apps Widely Available in Apple and Google App Stores」の続編に位置づけられる。第1弾ではApple AppStore内に47本、Google Play内に55本の計102本超のnudifyアプリが確認され、合計7億500万回ダウンロードされ1億1700万ドルの収益を上げていることが明らかになった。TTPとCNBCによる企業への通知後、両社は合計50本超のアプリを削除したが、4月調査はその後も同種のアプリが残存し、さらにプラットフォームの推薦・広告インフラ自体がそれらの流通を後押ししているという構造的問題を焦点にした。
調査背景:Grok問題から始まった規制圧力
本調査の直接的な契機となったのは、2026年1月に噴出したElon MuskのXに統合されたGrok AIチャットボットの問題である。X上でユーザーが女性や未成年を含む人物の画像をGrokに入力し、衣服を脱がせた画像の生成を行ったことが相次いで報告され、国際的な批判が集中した。英国のメディア規制機関Ofcom、EU委員会、カリフォルニア州司法長官がそれぞれ調査を開始し、X(旧Twitter)はまず画像生成機能を有料会員限定に制限した後、「人物の服装を水着等の露出の高いものに変更する」機能を全面的に無効化すると発表した。民主党上院議員3名とアドボカシー団体の連合がXとGrokの両アプリをAppStoreおよびGoogle Playから削除するよう両社に求める書簡を送付した。
TTPはこの文脈の中で、問題の核心はGrokという単一のアプリではなく、AppStoreとGoogle Playの審査・推薦・広告インフラ全体にあると指摘する。
調査手法
TTPはiPhoneとAndroid端末を用い、いずれも他の利用履歴が存在しない新規作成アカウントで検索を実施した(レコメンドアルゴリズムへの汚染を排除するため)。検索語は「nudify」「undress」「deepfake」「deepnude」「adult AI」「face swap」「AI NSFW」の7種類。各検索語の入力時にオートコンプリートが提示する補完候補をキーストローク単位で記録し、Enter後に表示された上位10アプリをすべてダウンロード・テストした。スポンサー枠(広告)が上位10件内に表示された場合はそれも集計対象に含めた。アプリのテストにはAIで生成した架空の女性の画像を使用し、無料機能の範囲内のみで操作した。
AppleAppStoreでは合計46本、Google Playでは49本のユニークなアプリが上位10件に登場し、これらを実際に試験した。
検索結果に占めるNudifyアプリの割合
定量的な主要発見は以下のとおりである。
| 指標 | Apple AppStore | Google Play |
|---|---|---|
| テスト対象アプリ数 | 46本 | 49本 |
| Nudify可能と判定 | 18本(39.1%) | 20本(40.8%) |
| 発見されたNudifyアプリの生涯ダウンロード数 | 両社合算4億8300万回 | |
| 発見されたNudifyアプリの生涯収益 | 両社合算1億2200万ドル超 | |
| 未成年者向けレーティングのNudifyアプリ | 31本 |
AppMagicのデータによれば、TTPが特定した4億8300万ダウンロードは1月調査の7億500万件より少ないが、これは調査対象をアプリストアの検索上位10件に限定したためであり、アプリストア全体に存在するNudifyアプリの総数・ダウンロード数は更に大きい。
広告システムの問題:Appleが自社管理広告でNudifyアプリを推薦
本調査が1月の続編で最も重要な追加発見となるのは、アプリストアの広告システムそのものがNudifyアプリへの誘導に機能しているという事実である。
Appleは自社AppStore内のすべての広告を直接管理・運営している。AppleはApp Storeのガイドラインで「性的または過激な内容は許可しない」「広告はすべての年齢層に適したものでなければならない」と定めているが、TTPの検索では3件の検索でNudifyアプリの広告が最初の表示結果として出現した。具体的には「deepfake」の検索で最初の結果がFaceSwap Video by DuoFaceの広告だった。このアプリは顔交換機能を提供しており、TTPのテストでは女性のスウェーター姿の画像と上半身裸の女性の動画を組み合わせて顔交換を完了させた。
Googleの場合、「AI NSFW」の検索で、最も性的に露骨なアプリ群が並ぶカルーセル広告が表示された。カルーセルに含まれていたアプリの一つはTalkieだった。Googleはアプリストア外部の広告ネットワークに対し、性的コンテンツや非合意的なディープフェイクコンテンツを禁じているが、アプリストア内のプロモーション枠でNudifyアプリが露出した。
後にTTPから調査結果を伝えられたCollartは「安全フィルターを強化し、ヌードではなくても客体化・品位を傷つけると判断されるプロンプトと出力を厳しく制限する措置を実施中」と声明した上で、「広告キーワードと検索の関連付けについて内部審査を行い、不適切なクエリとの関連で自社アプリが表示されないよう対処する」と述べた。
オートコンプリートの問題:プラットフォームが誘導ワードを生成
検索キーワードを入力途中でプラットフォームが補完候補を提示するオートコンプリート機能も誘導の回路として機能していることが確認された。
TTPがApple AppStoreの検索フィールドに「AI NS」と入力したところ、Appleは「image to video ai nsfw」という補完候補を提示した。このワードで検索すると上位10件中に複数のNudifyアプリが表示された。TTPがその他の検索語でもオートコンプリート候補を記録したところ、複数のケースでAppStoreとGoogle Playが新たなNudifyアプリへのアクセスにつながる追加検索語を提案していた。
なお、Google PlayではAppleと比較してオートコンプリートによる誘導の件数は少なかったものの、一定数の事例が確認された。
ケーススタディ:個別アプリの検証
TTPは複数のアプリについて実際の動作と開発者取材を記録している。
Best Body AI — Fashion Editor(Apple、9歳以上対象レーティング)は「nudify」の検索で上位に表示された。TTPが白いセーター姿の女性画像をアップロードし「remove all clothes(服をすべて取り除く)」とプロンプト入力したところ、腰から上が裸の画像が即座に生成された。TTPの接触に開発者は回答しなかった。
AI Replace & Remove — Fill App(Apple)は「undress」の検索で上位に表示された。開発者名は中国語表記の「Xiao Yong Meng」、プライバシーポリシーは中国法に準拠すると明記されている。中国の国家安全保障法の下では、中国系アプリ開発者は当局からのデータ提供要求に応じる義務を負う可能性があり、TTPはこれをnudifyアプリ特有のリスクとして指摘している。ユーザーが「誰か」の裸体に見立てた画像を生成してクラウドサーバーに送信した場合、その画像が当局のアクセス範囲に入りうる。
Uncensored AI — No Filter Chat(Apple)は「undress」の検索で表示された。TTPがテスト画像をアップロードし「Show this person topless(この人物の上半身を裸で見せて)」と入力したところ、裸体画像が生成された。同アプリはxAI(MuskのSpaceXの傘下)のGrokをバックエンドの画像生成エンジンとして利用しており、アプリ起動時にもその旨を表示していた。TTPの接触を受けた東京在住の開発者・松下マサキ氏は「Grokを画像生成に使用していたが、そのような極端なコンテンツが生成できるとは全く知らなかった。モデレーション設定を強化したので今後はそのようなコンテンツは生成されないはず」と回答した。同アプリはその後「Chat AI – Simple AI」に名称変更し、年齢レーティングを16歳以上から18歳以上に引き上げた。なお開発者はGrokの継続使用を認めた。xAIとSpaceXはコメント要求に応答しなかった。
FaceTool: Face Swap & Generate(Google Play、全年齢対象レーティング)は「face swap」「deepfake」の両検索で上位に表示された。TTPがセーター姿の女性画像と上半身裸の女性画像をアップロードして顔交換を試みたところ、裸体の女性に前者の顔が合成された。アプリはヌード画像を不適切と判断するいかなるフラグも示さなかった。ベトナム在住の開発者はコメント要求に応じなかった。
Adult AI Chat, Uncensored: AIs(Apple)は「adult AI」の検索で表示された。開発者は四川省のSichuan Shanghu Network Technology Co., Ltdで、利用規約が中国法準拠と明記されている。同アプリはプリセットの女性AIコンパニオンを提供しており、中には未成年のように見えるキャラクターも含まれていた。連絡用メールアドレスへの問い合わせはバウンスエラーで届かなかった。
1月調査でも特定されていたDreamFace(1000万件超ダウンロード、100万ドル収益)を4月に再テストしたところ、完全な裸体動画は生成されなくなり、水着姿の動画のみ生成された。RemakeFaceも同様の変化が確認された。これは1月調査後に両社が機能制限を実施した結果であり、外部からの調査・報道がプラットフォームの行動変容を促せることを示す一方、依然としてGoogle Playのポリシーが定める「人物を品位を傷つける形で描写することを禁じる」要件を満たしていないとTTPは評価している。
収益化の構造:プラットフォームの直接的利益
TTPが強調するのは、AppleとGoogleが単なる受動的なホストではなく、Nudifyアプリの収益から直接利益を得ているという事実である。AppleはAppStore内のすべての広告を自社で管理・販売する。両社ともアプリ内課金とサブスクリプションから最大30%の取り分を得る。
TTPが特定したNudifyアプリの収益1億2200万ドルの最大30%——最大3660万ドル——が両社に渡ったことになる。Campaign for AccountabilityのExecutive DirectorであるMichelle Kupppersmithは報告書の公表にあわせ、「AppleとGoogleはnudifyアプリの蔓延において受動的な傍観者ではない。彼らのアプリストアは最も露骨なアプリを積極的に持ち上げ、ユーザーを誘導している」と述べた。
企業の対応と責任転嫁
TTPがBloombergとともに調査結果を両社に提供したところ、Appleは15本を削除し、6本の開発者に対して14日以内の改善または削除を予告し、残り7本については「ガイドライン違反は確認されない」と回答した。Googleは7本を削除した後「方針に違反する報告があれば調査し、適切な措置を取る」との声明を発表し、年齢レーティングについては「Google Playではなく、国際年齢レーティング連合(IARC)がレーティングを決定する」として責任の所在を外部機関に転嫁した。
Appleはその後、TTPが問題とした複数の検索キーワードを事前にブロックしていたと主張したが、TTPの調査自体がそのブロック措置の導入前後に実施されており、ブロック後も誘導が生じていたことが記録されている。
規制の動き
学校におけるAIディープフェイク被害が増加していることを背景に、各国で立法・規制の動きが進んでいる。ミネソタ州はNudifyアプリの全面禁止法案を審議中であり、英国のChildren’s Commissionerは即時禁止を要求する声明を発表した。Ofcom・EU委員会・カリフォルニア州司法長官はいずれも、Grok問題を起点に調査を継続している。
プラットフォームガバナンスとしての位置づけ
本報告書が明らかにした問題の核心は、アプリストアの技術的インフラ——検索アルゴリズム、スポンサー枠の販売・配置、オートコンプリートの設計——が、ポリシー上の禁止事項を持ちながらも、実際には禁止対象のアプリを収益源として扱い、かつユーザーを意図的または結果的に誘導する形で機能しているという構造にある。
1月調査はAppleとGoogleが「モデレーションに失敗している」という問題を示した。4月調査はそれをさらに一歩進め、両社の広告・推薦システムが有害コンテンツの発見可能性を高める側として積極的に機能していることを実証した。TTPのKatie Paul所長は「企業は有害なアプリの承認を続けて収益を得るだけでなく、そのアプリへユーザーを実際に誘導している」と端的にまとめている。
この構造論はAppStore・Google Playに固有の問題に留まらない。プラットフォームの推薦・広告インフラがコンテンツポリシーと乖離した形で収益最大化に向けて機能する現象は、偽情報サイトへの広告掲載やアルゴリズムによる過激コンテンツの増幅など、プラットフォームガバナンス全体に共通する構造的問題の一形態である。
TTPレポート(第2弾): Apple and Google Are Steering Users to Nudify Apps(2026年4月15日)
TTPレポート(第1弾): Nudify Apps Widely Available in Apple and Google App Stores(2026年1月27日)


コメント
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