Googleの報告書『Seeing Through a GLASSBRIDGE』の要点と日本への示唆

情報操作

 GoogleのThreat Analysis Group(TAG)が2024年11月23日に発表した報告書「Seeing Through a GLASSBRIDGE: Understanding the Digital Marketing Ecosystem Spreading Pro-PRC Influence Operations」(11月26日に日本語訳も公開)は、プロ中国(Pro-PRC)の影響力工作を詳細に分析したものです。この報告書では、デジタルマーケティングエコシステムを利用した偽情報の拡散手法を明らかにしており、情報リテラシーや偽情報対策に関心を持つ人々にとって貴重な知見が含まれています。

1. 概要

 報告書は、GLASSBRIDGEを「4つの企業グループからなるエコシステム」として説明しています。これらの企業は、以下のような特徴を持ちます:

  • 偽装したニュースサイトやニュースワイヤーサービスを運営。
  • 数百のドメインを作成し、独立したニュースサイトを装う。
  • コンテンツは、中国政府の政治的利益を擁護する内容に焦点を当てる。

 Googleは2022年以降、GLASSBRIDGEが運営する1,000以上のウェブサイトを削除しましたが、その活動は現在も続いています。


2. GLASSBRIDGEの基本構造

 次に、GLASSBRIDGEが運営する偽ニュースサイトの特徴やターゲットについて説明されています:

  • 運営手法
    • 独立したニュースメディアを装い、PRC(中華人民共和国)の国益に沿った記事を配信。
    • PRC国営メディアやDRAGONBRIDGEなど他の影響力工作ネットワークのコンテンツを転載。
    • ニュースワイヤーサービスを利用して、信頼性を装う。
  • ターゲット地域
    • 日本を含むアジア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地の読者を対象。
    • 多言語対応(日本語、英語、フランス語など)で、地域ごとのニーズに合わせたコンテンツを配信。

3. 主な関係企業

 さらに、GLASSBRIDGEに関わる4つの主要企業が紹介されています:

1) Shanghai Haixun Technology

  • 最も多くのドメインを運営しており、600以上の偽サイトがGoogleによって削除。
  • 手法
    • 「Times Newswire」「World Newswire」を利用し、合法的なニュースサイトに似たサブドメインを作成。
    • Fiverrなどのプラットフォームを利用し、ソーシャルメディアでプロ中国的なコンテンツを拡散。

2) Shenzhen Haimai Yunxiang Media

  • 「PAPERWALL」と呼ばれるネットワークを運営。
  • 特徴
    • 正当なローカルニュースを装った偽装記事を配信。
    • 特定の個人や団体を攻撃する中傷キャンペーンも実施。

3) DURINBRIDGE

  • 200以上のウェブサイトを運営し、DRAGONBRIDGEと連携。
  • コンテンツ例
    • 台湾の大統領選挙に関するプロ中国的なナラティブを掲載。

4) Shenzhen Bowen Media

  • 日本やドイツを含む各国のローカルニュースを装った記事を多言語で配信。
  • 特徴
    • ローカルコンテンツとPRCナラティブを混在。

4. Googleの対応

 最後に、Googleがこれらの活動に対して講じた対応策も記載されています:

  • 偽情報サイトやアカウントの削除。
  • 他のテクノロジー企業や政府機関との連携。
  • Google NewsやDiscoverにおける信頼性向上のためのポリシー強化。

考察

 報告書は、偽情報がどのようにデジタルマーケティングエコシステムを利用して広がるかを解明しています。この知見は、日本もターゲット地域であることから、日本での偽情報対策を進める上で重要な示唆を与えています。さらに、日本が国際的な偽情報対策の一環として積極的に取り組むことが求められます。

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