アメリカの「We Can Do This」キャンペーンがもたらした偽情報と信頼喪失の現実

議会報告書は偽・誤情報か?科学的議論と政策形成の在り方を考える ファクトチェック

 2024年10月、米国議会のエネルギー・商業委員会が発表した報告書「We Can Do This: An Assessment of the Department of Health and Human Services’ COVID-19 Public Health Campaign」は、米国のCOVID-19ワクチン推進政策の問題点を厳しく批判しています。この報告書は、2023年4月に開始された調査を経て、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)が9億ドルもの公的資金を投じたキャンペーンがいかにして国民の信頼を損ねたかを明らかにするものであり、現在のワクチン接種方針に対する疑念を示す内容が含まれています。

問題点の指摘:科学的根拠の欠如とCDCの方針

 報告書は、HHSが行った「We Can Do This」キャンペーンがCDCのガイドラインに基づいて進められた一方で、その多くのメッセージが科学的根拠に欠けていたと批判しています。以下の問題点が挙げられています。

  1. 感染防止効果の過剰な主張
    キャンペーンの根幹は、「ワクチンが感染や伝染を防ぐ」というメッセージでした。しかし、この主張はFDAの緊急使用許可(EUA)を超えるものであり、実際には証拠が乏しいものでした。特にワクチン接種がすべての国民に推奨されていることは、アメリカをCOVID-19政策における「国際的な異端児」としているとの指摘があります。このような過剰な主張は、ワクチンに対する国民の信頼を失わせる原因となり、後に信頼回復が困難な状態を生み出しました。
  2. マスク着用に関する一貫性のないガイドライン
    CDCは当初、マスク着用を推奨せず、その後に推奨へ転換しました。さらに、布マスクの効果についても2022年には限定的であると認めたため、信頼を揺るがすことになりました。このような一貫性の欠如が、国民に不信感を与え、政府の方針に対する疑念を引き起こしたと報告書は指摘しています。
  3. 子供へのリスクの誇張
    子供に対するCOVID-19のリスクが過剰に強調され、学校でのマスク義務やワクチン接種推奨が行われた結果、保護者の間で混乱と反発が生じました。このリスク評価の誇張は、科学的根拠に基づかない対応であり、子供に対する政策への信頼を損ねたと報告書は述べています。
  4. ビッグテック企業との連携とプライバシー保護問題
    HHSはキャンペーン資金の一部をビッグテック企業に投入し、個人のオンライン行動を監視するために利用しました。これにより、プライバシー保護への懸念が生じ、国民のプライバシーに対する不信感がさらに強まりました。特に健康データの監視や管理に関わる政策への信頼性が低下する要因ともなりました。

考察:信頼回復のために必要な改善策

 報告書から浮き彫りになった課題は、誤情報や過剰なメッセージが国民の不信感を助長し、健康政策全体への信頼を失わせるということです。以下に、信頼回復のための重要な教訓と提案を挙げます。

1. 科学的根拠の重要性とメッセージの透明性
 報告書が指摘するように、科学的根拠に乏しいメッセージは信頼の損失を招きます。今後の公衆衛生対応では、明確なデータに基づき、正確な情報を伝えることが不可欠です。信頼性を重視し、根拠が不足している場合にはその旨を明示することで、国民の理解を深めることが重要です。

2. 一貫性のあるメッセージング
 方針変更が必要な場合でも、その理由や背景を国民に適切に説明し、透明性を保つことが求められます。報告書が示すように、一貫性のないメッセージは混乱を招き、不信感を高める要因となります。

3. プライバシー保護と個人データの慎重な扱い
 HHSがビッグテック企業と連携して個人データを監視するシステムを開発したことは、プライバシー保護の重要性を再認識させます。政府が国民のプライバシー権を守り、透明性を持ってデータ管理を行うことが、信頼回復の鍵です。

日本への教訓

 この報告書は、アメリカに限らず、日本における公衆衛生対策にも多くの示唆を与えます。科学的根拠に基づく透明性と一貫性のあるメッセージが、国民の信頼を保つために不可欠です。特にワクチンやプライバシー保護に関する方針は慎重に管理されるべきであり、国民が信頼をもって政策に従えるよう、今後の対応に反映させることが望まれます。

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