2015年、米国のポインター研究所内で設立された国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は、フェイクニュースや誤情報に対抗する国際的な基準を確立し、各国のファクトチェック団体の活動を支援してきました。この活動は、国連をはじめとする国際機関でも注目され、デジタル時代における信頼できる情報提供の必要性を強調してきました。
2024年11月20日、モスクワで開催された「Dialog about Fakes 2.0」フォーラムでは、TASS通信社と「Dialog Regions」が新たに「Global Fact-Checking Network(GFCN)」を設立しました。GFCNは、責任あるファクトチェックのための国際的な規範「Code of Responsible Fact-Checking」を策定し、フェイクニュース対策における新たな取り組みを開始しました。この規範は、透明性、客観性、公平性を重視し、フェイクニュースの拡散を防ぐための具体的な指針を提供しています。
フェイクニュースの現状と課題
GFCN設立の背景には、「Research 2024」と呼ばれる詳細な分析が存在します。このレポートでは、フェイクニュースの国際的なトレンドやロシア国内の動向が以下のように指摘されています。
- AI技術の影響
- AI生成ツールを用いたフェイクが増加し、特にディープフェイクが選挙操作や詐欺に利用されています。
- 世界的にディープフェイクを用いた詐欺事例が急増し、2023年にはその被害総額が120億ドルを超えました。
- ロシア国内のフェイクニュース
- 2024年には約4,000件のユニークなフェイクが特定され、緊急事態や社会的事件に関するフェイクが増加。
- 地域レベルでのフェイクニュースの拡散が顕著であり、政治的プロパガンダや緊急事態に関する偽情報が多く見られます。
- 国際的なリスク
- フェイクニュースは国際的な選挙干渉や社会的混乱を引き起こすリスクがあり、特にAI技術の進化がその拡散を加速させています。
このレポートは、情報の透明性を確保するために国際的な協力が不可欠であることを強調しています。
GFCNとロシアの意図をどう見るべきか?
GFCN設立には、ロシア国営のTASS通信社や「Dialog Regions」のような組織が主導しています。「Dialog Regions」についてEUVsDisinfoの記事では、
クレムリンの利益に役立つように、国内およびグローバルに情報を操作するために設計されたクレムリンの資金提供を受けたエンティティです。そのディレクターであるウラジミール・タバクは、EUの制裁下にあり、2024年、米国財務省は、AI主導の選挙干渉やドッペルゲンガーの偽情報キャンペーンなど、ロシアの外国の影響活動に組織を結び付けました。
と書かれています。ロシアは同時に、偽情報を用いた影響工作を積極的に展開しているとされています。ウクライナ侵攻や米国選挙におけるロシアのプロパガンダがその典型例です。「Dialog about Fakes 2.0」でのディスカッションや「Research 2024」の分析は、こうした背景を考えると興味深い内容です。ロシアの価値観や情報基準を他国に押し付けるキャンペーンの一環として整理できるのでしょう。
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