Americans and AI 2026──チャットボット利用が急伸する一方、深まるAIへの懐疑

Americans and AI 2026──チャットボット利用が急伸する一方、深まるAIへの懐疑 AI

 本稿が扱うのは、米ワシントンD.C.に拠点を置く非党派の調査機関Pew Research Center(ピュー・リサーチ・センター、以下Pew)が2026年6月17日に公表した報告書「Americans and AI 2026: Chatbots, Smart Devices and Views on Impact」である。執筆者はJeffrey Gottfried(Internet and Technology Research担当Associate Director)、William Bishop、Monica Anderson(同部門Director)、Michelle Faverio、Eugenie Park、Colleen McClainの6名。Pewは政策提言を行わないfact tankであり、The Pew Charitable Trustsを親組織とする。本報告は同機関がAmerican Trends Panel(ATP、無作為抽出による米成人パネル)を用いて継続的に実施している「AIに関するアメリカ人の意識と利用実態」調査の最新版にあたり、2022年12月、2023年7月、2024年2月・8月、2025年6月の過去調査との経年比較を随所に含む。

 調査はATP Wave 187として2026年2月17日から23日にかけて実施され、抽出対象5,854人のうち5,119人が回答(調査単位の回答率87%)。実査はSSRSがPewに代わって担当し、オンライン回答4,930人、電話(ライブインタビュー)回答189人という構成である。非ヒスパニック系アジア系成人についてはオーバーサンプルが行われ、母集団比率に合わせてウェイトバックされている。全体の標本誤差は95%信頼水準で±1.6ポイント。データ品質チェックの結果、回答パターンに問題があった7人が分析前に除外されている。なお、チャットボットの利用ブランドを尋ねる設問(後述)はフォーム分割(Form 1: n=2,555、Form 2: n=2,564)で実施されており、ChatGPT・Claude・Copilot・Character.aiは片方のフォーム、Gemini・Meta AI・Grokはもう片方のフォームでのみ尋ねられている点は、数値を比較する際の前提条件として注記しておく必要がある。

チャットボット利用率の急拡大とその測定方法の変化

 報告書の核心的な発見は、AIチャットボットの利用率が1年余りで急激に上昇したという点にある。2026年調査では米成人の49%が「AIチャットボットを使ったことがある」と回答した。これは2024年8月調査の33%から16ポイントの上昇であり、Pewはこれを「2024年夏から実質的に増加した」と位置づけている。

 ただし、この経年比較には設問設計上の重要な変更が伴う。2026年より前は「ChatGPT、Gemini、Copilotのようなチャットボットを使ったことがありますか」という設問を、「チャットボットについて少なくとも多少は聞いたことがある」と回答した人にのみ尋ねていた。2026年調査ではこの前提条件を外し、全回答者を母数として算出している。Pewはこの変更を踏まえて2024年の数値を全回答者ベースで再集計しており、報告書中の脚注に明記されている。つまり49%という数値の伸びは、純粋な利用拡大に加えて、母数の取り方の変更による見かけ上の押し上げ効果も一部含む可能性がある点は、数値を引用する際に留意すべきである。

 利用頻度で見ると、全回答者のうち「ほぼ常に」利用すると答えたのは4%、「1日に複数回」12%、「1日1回程度」8%で、合計するとおよそ4人に1人(24%)が日常的にチャットボットを使っている計算になる。「週に数回」利用すると答えたのは10%、「それ以下の頻度」15%であり、合計51%は「まったく使わない」と回答した。

ChatGPTの独走とブランド別利用率

 個別ブランドの利用率を問う設問(CHATSPEC)では、ChatGPTが44%と圧倒的な首位で、前年(2025年2月から3月の調査、34%)から10ポイント増、2023年7月調査(18%)と比較すると2倍以上に達している。この経年比較は「ChatGPTを使ったことがあるか」という単独設問(GPTUSE)によるトレンド系列に基づくもので、フォーム分割の影響を調整した上で全回答者ベースに揃えられている。

 2位以下は、Gemini(24%)、Copilot(17%)、Meta AI(14%)と続き、Grok(8%)、Claude(6%)、Character.ai(3%)は1割未満にとどまる。以下は主要ブランドの利用率を一覧にしたものである。

チャットボット利用率(全成人)調査フォーム
ChatGPT44%Form 1
Gemini24%Form 2
Copilot17%Form 1
Meta AI14%Form 2
Grok8%Form 2
Claude6%Form 1
Character.ai3%Form 1

 ChatGPTの認知度についても、「多少なりとも聞いたことがある」との回答が全体の87%(「大いに聞いたことがある」44%+「多少聞いたことがある」43%)に達し、2024年8月調査の72%(28%+44%)から大きく上昇した。

年齢による断絶:利用は若年層、懐疑もまた若年層

 年齢層別の利用率は、18〜29歳66%、30〜49歳61%、50〜64歳42%、65歳以上23%と、明確な階段状の分布を示す。特に30代・40代の利用率上昇が顕著で、Pewはこの層が「若年層に肩を並べる水準まで急上昇した」と指摘している。ChatGPT単体で見ても、50歳未満は57%、50歳以上は28%と、ほぼ2倍の開きがある。日常利用(毎日利用)についても、50歳未満では3人に1人が該当するのに対し、50歳以上ではこの割合は大きく下がる。

 利用しない理由についても年齢差は明確である。65歳以上ではおよそ4分の3が「チャットボットをまったく使わない」と回答し、50〜64歳では過半数がこれに続く。一方、50歳未満の非利用率は4割以下にとどまる。

 一方で注目すべきは、利用率で先行する若年層が、AIの将来的な影響について最も悲観的な見方を示している点である。18〜29歳では、AIが社会に及ぼす影響について「否定的(非常に+やや)」と答えたのが48%に対し、「肯定的」はわずか14%にとどまる。この否定的回答の割合は、30歳以上の各年齢層(いずれも4割以下)よりも高い。自分自身への影響についても、18〜29歳では「否定的」が37%と、他の年齢層(いずれも3割程度)を上回る。他方、65歳以上は「わからない」との回答が societal 影響で21%、personal 影響で29%と、他の年齢層より高く、判断保留の傾向が強い。AIの進歩速度を「速すぎる」と答えた割合は61%〜65%の範囲で全年齢層においてほぼ一致しており、この点に関する懸念は世代を問わず共有されている。

性別によるギャップ:利用格差は縮小、懐疑格差は拡大

 チャットボット利用の男女差は、2024年時点で男性が女性より11ポイント高かったのに対し、2026年調査では男性50%・女性47%とほぼ解消している。ただし日常的な利用頻度には依然として差があり、「毎日利用する」と答えた割合は男性27%に対し女性20%である。

 ブランド別利用でも性差が見られる。Copilotの利用率は男性22%・女性13%、Geminiも男性の方が高い。一方、最も利用者数の多いChatGPTについては男女で利用率がほぼ同一という結果であった。

 用途面では、情報検索・仕事関連タスク・娯楽・ニュース取得のいずれも男性の方がやや高い一方、感情的サポートや相談目的での利用は女性の方がわずかに高い。生産性への効果についても、「チャットボットが生産性を助けている」と答えた男性は35%に対し女性は25%と差がある。

 AIの将来的影響に関する見方の性差はより顕著である。女性は自分自身への影響について「否定的」33%・「肯定的」17%と否定が肯定の約2倍に達するのに対し、男性は「肯定的」「否定的」がほぼ同水準で拮抗している。社会への影響についても女性の43%が「否定的」と回答し、男性より否定側に大きく傾いている。AIの進歩速度についても「速すぎる」と答えた割合は女性68%・男性58%で、女性の方が10ポイント高い。AI全般について「大いに聞いたことがある」と答えた割合も男性55%・女性41%と開きがあり、Pewはこれらの性差が10代を対象にした別調査やAI専門家を対象にした調査でも一貫して観察されていると付言している。

人種・エスニシティ別の差異:アジア系の特異な楽観

 人種・エスニシティ別の分析では、アジア系成人が利用率・認知度・楽観度のいずれにおいても他グループと際立った違いを示す。チャットボット利用率はアジア系70%に対し、白人46%、ヒスパニック系49%、黒人49%。日常利用についても、アジア系はおよそ半数に達するのに対し、他グループは4分の1以下にとどまる。この報告書の脚注は、この傾向が性別・年齢・所得・学歴を統制してもなお持続すると明記している。

 チャットボットについて「大いに聞いたことがある」と答えた割合もアジア系68%に対し、白人・黒人・ヒスパニック系はいずれも半数未満である。用途別でも、情報検索目的での利用はアジア系の約3分の2に対し、他グループは4割程度、就労者に限った職場での利用もアジア系60%に対し他グループはこれを下回る。画像・動画編集、医療情報、ニュース取得のいずれについてもアジア系の利用率が最も高い。

 将来影響に関する見方でも、アジア系は唯一「肯定的」が「否定的」を上回るグループである。自分自身への影響について「肯定的」41%・「否定的」20%とほぼ2倍の開きがあり、社会への影響についても他グループより肯定的な回答が多い。一方、白人・ヒスパニック系・黒人はいずれも社会への影響を否定的に見る傾向が強い。ただし「AIの進歩が速すぎる」という懸念については人種・エスニシティを問わず共有されており、白人・ヒスパニック系・アジア系で6割以上、黒人でも過半数がこの認識を示している。

スマートデバイスとAI検索サマリー

 チャットボット以外のAI実装についても調査は詳細なデータを提示している。スマートウォッチの保有率は37%(女性40%・男性34%、女性の方が高い数少ない項目の一つ)。自宅のAI搭載デバイスについては、スマートスピーカー(Amazon EchoやApple HomePodなど)35%、AIドアベル(Ring等)18%、ロボット掃除機13%、スマートサーモスタット(Google Nest等)11%という分布であった。いずれも30〜49歳の層で保有率が最も高く、この年齢層が「AI搭載デバイス全般の主要な担い手」であることを示唆している。

 なお、これらの数値は「サーモスタット・ドアベル・掃除機を保有しているか」を先に尋ね、保有者に限って「それはAI機能を備えているか」を追加で尋ねる二段階の設問設計に基づく。例えばドアベル保有者(全体の68%)のうち、AI機能付きだと回答したのは27%であり、これを全回答者ベースに引き直すと18%となる。

 検索エンジンが表示するAI要約についても、60%が「読んだことがある」、30%が「読んだことがない」、10%が「わからない」と回答した。男女差では男性63%・女性57%とやや男性が高い。

AIの社会的影響をめぐる悲観:肯定を上回る否定

 報告書のもう一つの軸は、AIの将来影響に対する評価である。今後20年間の社会への影響について、「非常に肯定的」4%、「やや肯定的」12%(合計16%)に対し、「やや否定的」20%、「非常に否定的」20%(合計40%)と、否定的な見方が肯定的な見方の2.5倍に達する。「等しく肯定的・否定的」と回答したのは31%、「わからない」は13%であった。

 自分自身への影響についてはやや緩和されるものの、依然として否定が優勢である。「肯定的」計23%(非常に6%+やや17%)に対し、「否定的」計31%(やや19%+非常に12%)。「等しく肯定的・否定的」は27%、「わからない」は19%であった。

 AIの進歩速度については、63%が「速すぎる」と回答し、「適切なペース」19%、「遅すぎる」はわずか2%、「わからない」16%であった。この「速すぎる」という認識は年齢層を問わず61〜65%の範囲でほぼ一致しており、世代間で最も合意が取れている論点の一つである。

 個人情報の安全性についての見方はさらに悲観的である。AIの普及が「個人情報をより安全でなくする」と答えたのは71%に達し、「より安全にする」はわずか3%、「大きな変化はない」10%、「わからない」16%であった。

政府規制・企業責任への信頼低下、党派間の逆転現象

 AI規制をめぐる政府への信頼については、「まったく信頼していない、またはあまり信頼していない」の合計が67%(あまり41%+まったく26%)で、2024年8月調査の62%(41%+21%)から5ポイント上昇した。AI開発における企業の責任ある行動についても、同様の合計は59%(あまり38%+まったく21%)で、2024年(59%+α、あまり39%+まったく20%=59%)とほぼ横ばいであった。

 特筆すべきは、この政府規制への不信の推移における党派間の逆転現象である。2024年時点では共和党支持層(共和党寄りの無党派を含む)の70%が政府のAI規制に不信感を示し、民主党支持層より不信感が強かった。2026年調査では共和党支持層の不信感は61%に低下した一方、民主党支持層は74%に達し、この2年間で20ポイント上昇した。結果として、2026年時点では民主党支持層(74%)が共和党支持層(61%)を13ポイント上回る形で政府への不信感を強めており、2年前とは立場が逆転している。企業の責任あるAI開発への不信についても、民主党支持層65%・共和党支持層53%と差が生じており、Pewは「2年前にはこの点で有意な党派差はなかった」と付言している。

チャットボットを使わない理由——「関心がない」が最多

 チャットボットを利用しない回答者(全体の51%)に対しては、非利用の理由を5項目について尋ねている。最も多く挙げられた「主要な理由」は「関心がない」(60%)で、これに「個人情報の取り扱いへの懸念」(54%)、「情報の正確性への不信」(45%)が続く。「使い方がわからない」を主要な理由として挙げたのは29%にとどまり、「他人から判断されることへの懸念」を主要な理由とした回答者はわずか3%であった。

 今後12カ月以内にチャットボットを利用する可能性についても、非利用者の67%(「まったく可能性がない」40%+「あまり可能性がない」27%)が消極的な見通しを示し、「非常に高い可能性がある」「極めて高い可能性がある」は合計4%にとどまる。この結果は、現在の非利用層が単なる「未着手」ではなく、明確な選好に基づいて距離を置いていることを示している。

チャットボットが生活に与える影響:生産性は「助ける」、幸福感は「変化なし」

 チャットボット利用者に対しては、生産性・創造性・幸福感・情報収集・対人関係という5項目について、利用が「助けているか、損なっているか」を尋ねている。生産性については「助けている(大いに+少し)」が計61%(21%+40%)に対し、「損なっている」は計9%(6%+3%)。情報収集についても「助けている」計58%に対し「損なっている」計10%と、同様の傾向を示す。

 創造性については「助けている」計43%(12%+31%)に対し「損なっている」計22%(14%+8%)と、他の項目に比べて否定的回答の比率がやや高い。一方、幸福感については「どちらでもない」が74%、対人関係についても「どちらでもない」が72%を占め、多くの利用者はこれらの側面への影響を感じていないと回答している。

調査の方法論的特徴

 本調査はATPの標準的な設計に基づいており、2018年以降は郵送による住所ベース抽出(Address-Based Sampling)で新規パネリストを募集している。米国郵政公社のComputerized Delivery Sequence Fileを用いた抽出方式で、同ファイルの世帯カバー率は90〜98%と推定される。今回の調査では非ヒスパニック系アジア系成人を確率抽出で組み入れるオーバーサンプルを実施し、年齢・性別・学歴・人種/エスニシティ・地域・党派・2024年大統領選の投票行動(有権者名簿と照合したvalidated vote)など多数の変数でウェイト調整を行っている。

 回答率については、Wave 187単体の調査回答率は87%(AAPOR RR1算出)だが、パネル募集段階からの累積回答率は3%にとどまる。これは、募集調査への回答率12%、募集に応じた人のうちパネル参加に同意した割合74%、参加同意者のうちWave 187開始時点で活動中だったパネリストの割合40%、という各段階の脱落を掛け合わせた結果である。この累積回答率の開示は、パネル調査の代表性を評価する上で重要な情報であり、報告書本文とは別に方法論セクションに明記されている。

 家庭所得の階層区分(低所得・中間所得・高所得)についても、地域別生活費調整(米商務省経済分析局のRegional Price Paritiesを使用)と世帯人数調整を経た上で算出されている。ATPパネル全体の調整後家庭所得の中央値は約77,800ドルで、中間所得層はその3分の2から2倍の範囲(51,900ドル〜155,600ドル、3人世帯換算・2024年ドル換算)と定義される。

総括

 この調査が描き出すのは、単純な「AI受容の進展」ではなく、利用拡大と評価の悪化が同時進行するという捩れた構図である。ChatGPTを筆頭にチャットボット利用は1年余りで劇的に伸び、スマートウォッチやAI検索サマリーなど周辺のAI実装も生活に浸透しつつある。しかし、その利用拡大を最も牽引する若年層こそが、AIの社会的・個人的影響について最も否定的な見通しを持ち、進歩速度への懸念は世代を超えて共有されている。性別では利用率の差が消滅した一方で評価の差は残り、人種・エスニシティではアジア系のみが利用でも評価でも際立った例外を成す。政府規制への信頼をめぐっては、この2年間で共和党支持層と民主党支持層の立場が完全に入れ替わるという、AI政策をめぐる世論の党派的再編成も観察された。利用の伸びをもって「AIへの慣れ」や「受容」を単純に読み取ることはできず、むしろ利用と懐疑が並行して深まっているというのが、この調査が示す最も具体的な像である。

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