COVID-19パンデミックの中、多くのフェイクニュースが作られました。今回紹介する論文「Covid-19 Lies and Truths: Employing the Elaboration Likelihood Model and Liwc to Gain Insights into the Persuasive Techniques Evident in Disinformation (Fake News)」は、フェイクニュースと本物のニュースがどのような説得技法を使っているのか、を心理学的な視点から分析しています。この研究は、読者がどのように情報を受け取り、判断するのかを明らかにし、フェイクニュース対策の方向性を示しています。
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フェイクニュースの特徴
フェイクニュースでは、主に以下の説得技法が使われていることが分かりました。
1. 感情的アピール
感情に訴え、恐怖や怒りを喚起する表現が多用されます。
- 例: 「このワクチンは史上最も危険で、わずか1か月で1000人以上を死亡させました。」
- 目的: 恐怖や不安を煽り、直感的な判断を引き出す。
2. LOUDNESS(強調表現)
大文字や感嘆符を用いて、メッセージを目立たせています。
- 例: 「RNAワクチンは実験的で、公衆利用の許可が下りていません!!!」
- 目的: 強いインパクトを与え、記憶に残す。
3. 視覚的要素
画像や図表を使い、メッセージの信頼性を高める。
- 例: 小さなデバイスの詳細な説明と図(「Theragrippers」のイメージ)。
- 目的: 視覚的証拠として受け取られやすくする。
4. 反復
同じフレーズを繰り返すことで、印象を強めます。
- 例: 「10,000 DEAD 10,000 dead…10,000 dead」
- 目的: メッセージの印象を強化し、読者の記憶に残す。
5. 著名人の利用
有名人の発言や行動を取り上げ、メッセージの信憑性を高めるよう装います。
- 例: ビル・ゲイツの名前を言及。
- 目的: 権威や知名度を利用して説得力を高める。
6. 個人的な物語
個人的なエピソードを用いて感情に訴えます。
- 例: 臨床試験中にワクチン接種後の深刻な障害を受けた家族の証言。
- 目的: 個人的な経験を通じて共感を引き出す。
本物ニュースの特徴
本物ニュースでは、以下の説得技法が多く見られます。
1. 論理的アピール
科学的な根拠や事実に基づき、読者の理性的な判断を促します。
- 例: 「無症状および前症状の感染者が感染拡大の主要因であるため、症状の有無に関わらず感染者を特定して隔離する必要があります。」
- 目的: 読者に論理的な思考を促し、信頼を構築する。
2. 統計データ
具体的な数字や統計を示し、情報の正確性を保証します。
- 例: 「COVID-19患者の約50%が人工呼吸器を使用中に死亡していることが報告されています。」
- 目的: 客観的で信頼性のある情報を提供する。
3. ポジティブなトーン
前向きで希望を与えるメッセージが多いです。
- 例: 「感染率は今週20%減少しました。」
- 目的: 読者に安心感や前向きな気持ちを提供する。
フェイクニュース対策への示唆
この研究は、フェイクニュース対策において以下の方法が有効であることを示しています。
- AI技術の活用: NLP(自然言語処理)技術を用いて、感情的アピールや反復、LOUDNESSなどの特徴を検出し、フェイクニュースを自動分類するシステムを開発する。
- 教育的アプローチ: 一般の人々がフェイクニュースの説得技法を理解し、それを批判的に評価できる能力を高めるプログラムを実施する。
おわりに
フェイクニュースと本物ニュースの説得技法には明確な違いがあります。感情的アピールや視覚的な要素を駆使するフェイクニュースと、論理や統計を重視する本物ニュースの違いを理解することで、誤情報を見極める力を養うことができます。この研究は、Covid-19のフェイクニュースに限定されていますので、より広い範囲での研究が望まれます。
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