このブログを訪れてくださる貴重な皆さまに、心より感謝申し上げます。約2ヶ月前の開設以来、インターネット上に公開された偽情報関連の記事や話題を紹介してまいりました。今年も、この取り組みをどのように発展させるべきか模索しながら進めていきたいと考えています。
2025年は、偽情報対策においてさらに重要な年となるでしょう。以下に、今年注目すべきトピックを整理しました。
EU:プラットフォーマーとの戦い
EUは、デジタルサービス法(DSA)を通じて、偽情報対策の責任をプラットフォーマーに課す姿勢を強化しています。民主主義を旗印としたこの取り組みは、偽情報の拡散を防ぐための規制を確立する一方で、プラットフォーマーが収益を得ているアルゴリズム主導型広告モデルに大きな影響を与えています。
特に、EUはプラットフォーマーに対してアルゴリズムの透明性や、偽情報削除の徹底、リスク評価の実施を義務付けていますが、これらはプラットフォーマーの利益を直接的に削ぐ可能性があると見られています。その上で、European Fact-Checking Standards Network(EFCSN)は、ファクトチェック機関との協定締結と金銭的補償を求めていくなど、プラットフォーマーの利益を奪う姿勢を鮮明にしています。GoogleやMeta、X(旧Twitter)などのプラットフォーマーは、これに強く反発しており、「言論の自由の侵害」や「企業秘密の保護」を理由に抵抗しています。
この対立は、2025年にさらに深刻化する可能性がありますが、一方でEUの取り組みは、偽情報対策における国際的な基準として注目を集めています。EUの規制がどのように発展し、他の地域に影響を及ぼすかは、今年の重要なトピックの一つとなるでしょう。
アメリカ:トランプ勝利後の政策後退とビジネス化
2024年の大統領選挙でトランプが勝利したことで、アメリカにおける偽情報対策の政策は大きな転換点を迎えています。トランプ政権下では、SNSプラットフォームによる偽情報削除や規制が「言論の自由の侵害」として批判され、偽情報対策への政府の関与が後退する可能性があります。
一方で、ガートナーが提唱する「偽情報セキュリティ」は、企業がブランドを守るためのセキュリティ対策として注目されています。偽情報対策が進まない状況を受け、民間主導のビジネスソリューションが発展することが期待されます。この動きは、偽情報対策を収益性のあるビジネスモデルとして確立しつつあります。
日本:海外追随と独自の課題
日本では、総務省や経産省を中心に偽情報対策の議論が行われていますが、その多くはアメリカやEUの動きに追随する形にとどまっています。災害時の偽情報対策や企業によるリスク管理の強化が進んでいるものの、SNSにおける日本語をターゲットとした海外からの影響工作への対応は未だ課題として残されています。
さらに、2024年の兵庫県知事選では、マスコミの信頼低下が明らかになりました。新知事に対する批判的報道を通じて信頼を取り戻そうとするマスコミの動きも見られますが、民主主義のガードレールとしての偽情報対策がどのように進められるかは、日本社会全体にとって重要な課題です。何らかの動きがあると予想されます。
結びに
2025年も、EU、アメリカ、日本それぞれの文脈で偽情報対策が進展していくことが予想されます。このブログでは、引き続き世界各地の動向を追いながら、有益な情報を紹介していく予定です。また、偽情報セキュリティという国際的な潮流の中で、日本がどのように対応し、独自の位置を確立していくのかを注視する年でもあります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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