若者と偽情報: 極右ネットワーク「Active Clubs」の影響とEUの対応

若者と偽情報: 極右ネットワーク「Active Clubs」の影響とEUの対応 偽情報対策全般

 SNSを中心に拡散される偽情報が若者の政治意識や社会観にどのような影響を与えているのか。欧州運動アイルランド(European Movement Ireland)が2025年2月6日に発表した報告書「The Disinformation Landscape: Youth in Ireland and the EU」は、この問題に焦点を当て、アイルランド、フランス、ドイツの事例を通じて、若者をターゲットにした偽情報のナラティブと、それに対する各国の対策を分析している。特に、極右系ネットワーク「Active Clubs」の活動がどのように偽情報を利用して若者を取り込んでいるのかが詳しく紹介されている。


1. 「Active Clubs」とは何か?

 「Active Clubs」は、欧州や米国を中心に展開する若者向けの極右ネットワークであり、主にナショナリズムや反移民感情を煽るために偽情報を利用している。もともとは、アメリカの白人至上主義団体「Rise Above Movement」(創設者ロバート・ルンド)が展開したストリートファイト系極右ネットワークに端を発し、現在は分散型のネットワークとして欧州各国に広がっている。

特徴的な戦略

  • ナラティブ操作
    • アイルランド:「アイルランド独立運動」を反移民ナラティブに利用(例:ジェームズ・コノリーの発言を歪曲)。
    • フランス・ドイツ:「ヴァイキングやゲルマン神話」を持ち出し、白人至上主義的なナショナリズムを推奨。
  • ライフスタイル戦略
    • 格闘技やフィットネスを推奨し、「強い男性像」を演出。
    • 「自己鍛錬=文化防衛」と結びつけ、暴力的な政治行動を正当化。
  • SNSを駆使したプロパガンダ
    • テレグラム、X(旧Twitter)、TikTok、Redditなどを活用し、ナラティブを拡散。

 特に、アイルランドでは「Comhaltas na nGaedheal(兄弟アイルランド)」という組織が「Active Clubs」ネットワークの一部として活動し、移民を脅威とする偽情報を拡散している。


2. 若者に広がる偽情報とその影響

報告書は、若者が特定の偽情報にどう影響を受けるのかを示す具体例を提示している。

①「アイルランドの独立精神」と反移民ナラティブ

偽情報の例

  • 「ジェームズ・コノリーは外国人労働者を批判していた」
    → 実際には、コノリーは資本主義の搾取を批判していたが、「Active Clubs」はこれを移民排斥の文脈で再解釈。
  • 「IRA(アイルランド共和軍)は移民のいないアイルランドを守った」
    → IRAの独立闘争は英国の植民地支配に対するものだが、「Active Clubs」はこれを「移民反対の歴史」として利用。

影響

  • 若者の間で「移民がアイルランド文化を脅かしている」という誤解が広がる。
  • 反移民デモに参加する若者が増加(2024年のクールック、フィングラス、アスローンのデモ)。

② 格闘技や健康ブームと結びつく極右思想

偽情報の例

  • 「移民は社会を腐敗させ、アイルランド人の男性性を弱めている」
    → 「Active Clubs」は、アンドリュー・テイト(女性蔑視的なインフルエンサー)の影響を受け、「強い男になれ」と煽る。
  • 「アルコールを断ち、格闘技を習い、民族を守る準備をしろ」
    → ストリートファイトを「文化的防衛」と位置づけ、暴力を正当化。

影響

  • 若者の間で「伝統文化防衛」の名目で暴力が容認される。
  • 反移民活動がスポーツ文化と結びつき、広がりを見せる。

3. 各国の偽情報対策の違い

アイルランド:「対話」による草の根的アプローチ

  • NYCI(National Youth Council of Ireland):「Transforming Hate」プログラムを実施。
  • 「キッチンシンク対話」:お茶を飲みながら若者と偽情報について話し合い、批判的思考を促す。

フランス:メディアリテラシー教育の徹底

  • 学校でメディアリテラシー教育を義務化(EU内で最多の25の教育プログラム)。
  • 「What the Fake」プロジェクト:映画制作を通じて偽情報の影響を学ぶ。

ドイツ:通報と法執行の強化

  • 「REspect!」通報システム(2023年の報告数は25,000件)。
  • 極右活動のオンライン監視(司法機関との連携強化)。

4. EUの取り組みと課題

  • 2022年 偽情報対策行動規範(CoPoD):SNSプラットフォームの自主規制を促進。
  • デジタルサービス法(DSA):偽情報を拡散するプラットフォームの監視強化。
  • 「No Hate Speech Movement」:若者のヘイト対策キャンペーン。

 しかし、報告書は「EUレベルの対策が各国の取り組みと統合されておらず、知名度も低い」と指摘。国ごとの戦略と連携する必要がある。


5. まとめ

  • 偽情報は若者にとって政治的影響を与えやすく、特に「Active Clubs」などの極右グループが歴史や文化を歪めたナラティブを拡散している。
  • 各国の対策には「対話(アイルランド)」「教育(フランス)」「通報(ドイツ)」の違いがあり、どの手法が最も有効かは議論の余地がある。
  • EUの取り組みは法的枠組みが整いつつあるが、各国との連携をどう強化するかが課題。

コメント

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