カナダの独立系シンクタンク Frontier Centre for Public Policy が発行したレポート 「WHEN COVID-19 CLAIMS OF ‘REVISIONISM’ AND ‘MISINFORMATION’ ARE THEMSELVES MISINFORMED」(2025年2月12日)では、COVID-19対策に関する「誤情報」や「修正主義」というレッテル貼りに疑問を呈し、政策決定の透明性や科学的議論の重要性を強調している。本稿では、同レポートの主な論点を紹介する。
1. 「誤情報」や「修正主義」の問題点
COVID-19対策を批判すると、「誤情報」や「修正主義」として片付けられることが多かった。しかし、こうしたラベリングは適切な科学的議論を阻害し、政策決定の過程を不透明にする要因となる。特に、ロックダウンやワクチン政策に関する異論が十分に検討されなかったことが指摘されている。
2. ロックダウンの効果は限定的
レポートでは、2020年初期の欧米のロックダウンが COVID-19による死亡をわずか3.2%しか減少させなかった ことを指摘している。これは、ロックダウンが予想ほどの効果を持たず、一方で経済や社会に大きな負担をかけたことを示唆している。また、
- ロックダウンは医療への負担を軽減したとされるが、実際には医療崩壊を防ぐための代替手段がほとんど検討されなかった。
- カナダの研究では、厳格なロックダウンと感染拡大の減少には明確な相関が見られなかった。
3. Great Barrington Declaration(GBD)の正当性
GBDは、「若年層の感染を許容し、高リスク層を重点的に保護する」という提言を行ったが、多くの公衆衛生機関から「科学的に否定された」と批判された。しかし、レポートでは次のような反論を示している。
- SARS-CoV-2の致死率は年齢依存性が高く、70歳未満の致死率は0.1%未満 であった。
- 高リスク層へのフォーカス・プロテクション(選択的保護)は、広範なロックダウンより合理的だった可能性がある。
- スウェーデンの例では、ロックダウンを回避しつつ、OECD諸国の中で最低レベルの超過死亡率を達成している。
4. ワクチン効果の再評価
COVID-19ワクチンは「何百万もの死を防いだ」とされるが、これは 数学的モデルに基づく推計 であり、実証的データとは異なると指摘されている。
- ワクチンの効果は短期間で低下し、ブースター接種を繰り返すことで「ネガティブ・インプリンティング(免疫応答の低下)」が起こる可能性がある。
- ワクチン義務化は接種率をわずか 0.9% しか向上させず、むしろワクチン不信を助長した。
- 追加接種は重症化を防ぐが、感染予防効果は期待ほどではなく、自然免疫との比較が十分に行われていない。
5. マスクの有効性に対する疑問
マスクの効果についても、無作為化比較試験によると統計的に有意な結果が得られていないことが指摘されている。
- 一部の研究ではマスクが感染拡大を防ぐとされているが、データ収集にバイアスがある。
- 子供への長期的なマスク着用は、社会的・感情的発達に悪影響を及ぼす可能性 も示唆されている。
6. 公衆衛生機関への信頼低下
レポートでは、COVID-19対策における CDCやWHOのガイドラインの不一致 が、公衆衛生機関への信頼低下を招いたと指摘している。
- CDCは2歳児のマスク義務化を推奨し、WHOや欧州の公衆衛生機関と矛盾する対応をとった。
- ワクチンパスポートの導入では、自然免疫の効果を考慮しない 形での義務化が行われた。
- パンデミックの対応が「科学」ではなく「政治」によって決定されたケースが多く、透明性の欠如が信頼低下を招いた。
7. 今後の課題と提言
レポートは、今後のパンデミック対応に向けて次の3つの提言を行っている。
- 科学的議論の自由を確保する
- 「誤情報」「修正主義」というレッテルを乱用せず、異なる視点を排除しない。
- 緊急管理の原則を再確認する
- 公衆衛生対策は単一の指標(感染者数)ではなく、社会全体のリスク・コストを考慮するべき。
- 政府の説明責任を強化する
- 透明性のある議論を通じて、政策の決定プロセスを明確にし、誤った判断があれば説明と謝罪を行う。
まとめ
Frontier Centre for Public Policyのレポートは、COVID-19パンデミックの対応を振り返り、政策決定の透明性や科学的議論の重要性を強調するものだった。「誤情報」とされるものの中にも、科学的根拠を持つ正当な批判があることを忘れてはならない。今後の公衆衛生政策には、より開かれた議論と、リスク・ベネフィットのバランスを考慮した柔軟な対応が求められるだろう。
コメント
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