WHOによる誤情報との戦い方 ー mpox対策ガイドラインの問題点

WHOは本当に誤情報と戦っているのか? ー mpox対策ガイドラインの問題点 偽情報対策全般

 2025年2月25日にWHOが発表した「Addressing mpox misinformation: practical tips for communities(mpox誤情報対策:コミュニティ向け実践ガイドライン)」は、mpox(サル痘)に関する誤情報・偽情報に対応するための方法を提示した文書だ。

 このガイドラインでは、誤情報が公衆衛生の努力を弱め、リスクの高い行動を助長する可能性があると指摘し、誰もが誤情報対策に関与できることを強調している。具体的には、以下のようなポイントが述べられている。

1. 誤情報の定義と拡散の原因

  • 誤情報(misinformation):意図せずに誤った情報を広める行為。
  • 偽情報(disinformation):特定の目的のために意図的に誤った情報を広める行為。

 誤情報は、SNSや家族・地域の会話、ニュース、ポスターなど、あらゆる場所で発生する可能性がある。また、科学的に見えるデータを用いて誤った説明をしたり、権威のある人物を装った発言が拡散されることがある。

2. WHOの推奨する具体的な誤情報対策

 WHOは、誤情報への対処法として以下のようなアプローチを推奨している。

トゥルース・サンドイッチ手法

 「正しい情報 → 誤情報の訂正 → 正しい情報の再提示」という構造で、誤情報の訂正を受け入れやすくする。

例:

「あなたがご自身とご家族を守るために熱心に情報を集めているのは素晴らしいですね。キャッサバの葉茶がmpoxを治療できるという科学的根拠はありません。WHOや保健機関は、ワクチン接種と感染者との接触を避けることを推奨しています。何か質問があれば、ぜひお聞きください。」

共感を示して正しい情報に導く

 誤情報を信じる人には、頭ごなしに否定せず、共感を示しながら信頼できる情報へ誘導することが重要だとされる。

例:

「本当にそうですよね。情報が多すぎて何が本当かわからなくなることってありますよね。私もそれについて気になっていたのですが、保健省のウェブサイトで調べてみたら、キャッサバの葉についての記載はなかったんです。でも、ワクチン接種や感染者との接触を避けることが効果的な対策だって書かれていました。一緒にコミュニティの医療スタッフに相談してみませんか?」

誤情報の拡散メカニズムを理解する

  • なぜ誤情報が信じられるのか?
    • 人々が情報を早く共有しようとする心理。
    • 偽の専門家が発言することで権威性を装うケース。
    • 画像や動画が誤解を招く形で使用される。
  • 誤情報に対する具体的な対処法
    • ソーシャルリスニング:コミュニティ内で誤情報がどのように広がっているかを観察し、適切な対応策を取る。
    • 信頼できる情報源の提供:WHOや政府機関の最新情報を広める。
    • 誤情報を信じる人を責めずに対話する:相手を否定せず、情報を一緒に確認する姿勢を持つ。

現状のWHOで、このガイドラインは有効か?

 このガイドラインは、誤情報対策として一定の合理性を持つものの、そもそもWHO自身が信頼される組織であることを前提にしている。COVID-19対応などを通じて、WHOの情報の信頼性が損なわれているため、その影響がmpoxの誤情報対策にも波及している可能性がある。

WHOの過去の情報統制の問題

 WHOはCOVID-19対応の中で、SNSプラットフォームと協力し、誤情報を削除・警告表示する施策を実施した。しかし、後に訂正された情報も「誤情報」として扱われ、結果として情報統制の印象を与えた 事例がいくつも存在する。

COVID-19の起源に関する情報

  • 当初、WHOは研究所流出説を「陰謀論」として否定し、SNSでも削除対象になった。
  • しかし、その後、一部の専門家や政府機関がこの説を再検討し、公式な議論の対象となった。

ワクチンの効果と副作用

  • 初期には「ワクチンは安全」と強調され、副作用に言及する投稿が誤情報扱いされた。
  • しかし、後に心筋炎・血栓症などの副作用が一部認められ、ワクチン接種の推奨対象が変更された。

マスク着用の有効性

  • 当初、「一般人はマスク不要」とされたが、後に「マスク着用が感染防止に有効」と方針転換。
  • かつて「誤情報」とされた内容が、後に公式推奨となった事例。

 このように、WHOの誤情報対策が逆に信頼を損ねる結果を招いたケースがある。この問題を解決しない限り、WHOの発信する情報が「誤情報対策」として機能することは難しい。


結論:WHOの誤情報対策には慎重な見直しが必要

 WHOが誤情報対策を進めることは重要だが、

  • 提案されている手法が実際に機能するのか慎重に見極める必要がある。
  • 誤情報の「定義」そのものに対する透明性を高めるべきである。
  • そもそもWHO自身が信頼される組織でなければ、「WHOが正しい」と主張しても意味がない。

 誤情報対策の名のもとに「議論を封じる」ことは、結果としてWHOの信頼をさらに損なうことにつながる。信頼回復のためには、透明性を高め、情報が変化する理由を明確に説明し、科学的な議論の場を提供する姿勢が求められる。

コメント

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