2024年米国大統領選挙におけるスペイン語話者を対象とした誤情報対策レポートの紹介

2024年米国大統領選挙におけるスペイン語話者を対象とした誤情報対策レポートの紹介 偽情報対策全般

 2024年の米国大統領選挙において、オンラインプラットフォームが誤情報にどのように対応したのかを分析したレポート「Platform Response to Disinformation during the US Election 2024」が発表されました。このレポートは、特にスペイン語話者を対象とした誤情報への対応に焦点を当てており、主要なプラットフォーム(Facebook、Instagram、TikTok、X(旧Twitter)、YouTube)の対応状況を詳しく調査しています。


レポートの目的と背景

 このレポートは、米国のヒスパニック人口が選挙において重要な役割を果たすことを前提に、彼らがターゲットとなった誤情報に対するオンラインプラットフォームの対応を評価するものです。ヒスパニックコミュニティは、ソーシャルメディアをニュースの主な情報源として利用する傾向が強く、そのため選挙期間中に特に誤情報の影響を受けやすいとされています。


主な分析結果

 レポートでは、2024年7月14日から11月5日までの期間に公開された誤情報投稿510件を分析し、プラットフォームの対応率と対応内容を比較しています。

  1. 対応率の比較:
    • Facebook: 対応率74%。多くはファクトチェックラベルの付与によるもので、最も高い対応率を記録。
      • 例: 「カマラ・ハリスが不法移民に25,000ドルを提供する住宅購入プログラムを提案した」との誤情報に対し、ラベルが付与された。
    • Instagram: 対応率59%。対応の95%がファクトチェックラベルで、ラベル付与率が最も高い。
      • 例: 「ハイチ人の不法移民が子供を殺害した」という虚偽の投稿も対象となった。
    • TikTok: 対応率32%。対応の79%がコンテンツ削除。
      • 例: 「フロリダ州知事が移民労働力を利用するために反移民法を一時停止した」との誤情報が1200万回以上再生され、削除された。
    • X(旧Twitter): 対応率24%。特に対応されていないバイラル投稿が多い。
      • 例: 「ヒラリー・クリントンが『誤情報を投稿したアメリカ人を投獄すべき』と発言した」というデマが7000万回以上視聴。
    • YouTube: 対応率19%。対応はほぼすべて一般的な注意喚起ラベルにとどまった。
      • 例: 「ジョン・ケリーが第一修正を改正して誤情報に対抗すると提案した」との誤情報が55万回以上視聴された。
  2. トピック別の誤情報:
    • 選挙関連の候補者や投票プロセスに関する誤情報が最多。
      • 例: 「カマラ・ハリスが討論会でイヤホンを装着して不正を行った」という誤情報。
      • 「トランプがラリー中に凍りついた」という編集済みビデオ。
    • 移民関連では、「移民が不法に登録して投票している」との主張が多く見られた。
    • 気候変動に関連する投稿もあり、「自然災害が気候改変の結果である」といった誤情報が確認された。
  3. 言語による対応差:
    • スペイン語投稿は英語投稿よりも19.7%多く対応された(特にFacebookで顕著)。
    • 一方で、Xでは英語投稿の方が対応率が高かった。
  4. バイラル投稿への対応不足:
    • 最もバイラルな誤情報投稿の多くがXで拡散され、その多くが対応を受けていない。
      • 例: 「FBIがヒラリー・クリントンの殺人を記録したビデオを押収した」というデマが100万回以上再生。
    • TikTokでも、「Lady Gagaが『トランプは恥だ』と発言した」とする音声付きビデオがバイラル化し、120万回以上再生されているが対応なし。

レポートの方法論

 このレポートは、IFCN(国際ファクトチェックネットワーク)認定の米国のファクトチェック団体が検証したデータを使用し、対応内容を以下のカテゴリに分類しています:

  • コンテンツ削除
  • アカウント停止
  • ファクトチェックラベル
  • 一般的なラベル
  • コミュニティノート(X特有の機能)
  • 可視的な対応なし

レポートの意義

 このレポートは、選挙期間中の誤情報対策における課題と成功例を浮き彫りにしています。特に、スペイン語話者を対象とした誤情報に対する対応がプラットフォーム間でいかに異なっていたかを明確に示しています。また、誤情報がバイラル化した場合の対応の遅れや不足が依然として課題であることも指摘されています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました