「Monitoring Report 2024」が示す欧州の報道自由と偽情報の新たな脅威

「Monitoring Report 2024」が示す欧州の報道自由と偽情報の新たな脅威 報道の自由

 Media Freedom Rapid Response(MFRR)が発表したMonitoring Report 2024は、EU加盟国および候補国における報道の自由の侵害を詳細に記録し、その全体像を明らかにしている。本レポートによると、2024年には1,548件の報道自由の侵害が確認され、影響を受けたのは2,567名のメディア関係者または組織にのぼる。
 その中で、偽情報がどのようにメディア環境に影響を与えているのかも重要なポイントの一つとして報告されている。


報道自由の侵害が急増する欧州

 MFRRのレポートは、欧州全域でジャーナリストが直面する主な脅威を分析している。
最も多い攻撃の種類

  • 取材の妨害(記者会見やイベントへのアクセス制限)
  • 脅迫・威嚇(特にSNSやデモ現場での攻撃)
  • ハラスメント・誹謗中傷(ジャーナリストの信用を貶めるオンラインキャンペーン)
  • 物理的攻撃(デモや選挙期間中の暴力)
  • 法的圧力(記者に対する訴訟や恣意的な逮捕)
  • ハッキング・DDoS攻撃(独立系メディアを狙ったデジタル攻撃)

 さらに、記者に対する攻撃の加害者は政府関係者や警察、国家安全保障機関であるケースが増えている。報道の自由を抑制する新たな法律や規制も多くの国で導入され、「偽情報対策」の名目で独立系メディアを弾圧する動きもある。


偽情報がメディア環境に及ぼす影響

1. スプーフィング攻撃とディープフェイク

 2024年は、偽情報がスプーフィング攻撃(なりすまし)という形で拡散されるケースが急増した。

  • ディープフェイクを用いた偽のニュース映像(実在のジャーナリストや報道機関を模倣)
  • 偽ニュースサイトの作成(信頼性のある報道機関を装い誤情報を流布)
  • なりすまし広告(著名ジャーナリストを騙り、詐欺的商品を宣伝)

 特に、ロシアによるDoppelgänger作戦と呼ばれるサイバー攻撃が発覚し、欧州のメディアサイトをクローン化して偽情報を拡散する手法が明らかになった。

2. 選挙期間中の偽情報拡散

 2024年は「スーパー選挙年」と呼ばれ、多くの国で地方・国政選挙、そして欧州議会選挙が行われた。その中で、以下のような政治的偽情報キャンペーンが活発化:

  • 候補者や政党に関する虚偽の報道
  • メディアへの圧力(報道内容の検閲や政治的な編集介入)
  • ジャーナリストへの脅迫や暴力
  • オンライン上での偽情報拡散

 特に、ジョージアやセルビアでは、政府が「外国の影響を受けたメディア」として独立系メディアを攻撃し、情報統制を強化する動きがあった。

3. 環境問題に関する偽情報

 偽情報の影響は環境問題にも及んでいる。

  • 企業や政治家が環境問題の調査報道を妨害
  • 環境活動家やジャーナリストを「過激派」として描く偽情報
  • 環境政策に関する誤った情報(例:「気候変動は陰謀論」「再生可能エネルギーは無意味」)

 フランスではオリンピック関連の水質汚染に関する偽動画が拡散し、ドイツ、スペイン、ギリシャでは森林火災や洪水をめぐる偽情報が出回った。

4. 偽情報対策を口実にした報道弾圧

 「偽情報対策」そのものが報道の自由を抑圧する手段として使われている国もある。

  • トルコでは「偽情報拡散」の罪でジャーナリストが逮捕・拘束
  • ウクライナでは、政府がジャーナリスト監視を強化
  • ジョージアでは、外国資金を受けたメディアを「スパイ」とみなす法案が再提出

 これにより、政府に批判的な報道ができない環境が生まれ、市民がアクセスできる情報が制限されるリスクが高まっている。


報道の自由を守るために

 MFRRの報告書は、偽情報と報道自由の関係を改めて明らかにしている。偽情報対策は必要だが、それを口実に政府が報道をコントロールする傾向が強まっていることが最大の懸念点だ。

 今後、欧州ではジャーナリズムの保護と偽情報対策のバランスをどう取るかが大きな課題となる。独立系メディアの支援やジャーナリストへの攻撃に対する法的保護の強化が必要だ。また、市民の側でも、偽情報に対抗するためのリテラシー向上が不可欠となる。SNSでの情報の真偽を見極める力が問われている。


まとめ

  • 2024年は報道の自由の侵害が大幅に増加し、取材の妨害、法的圧力、デジタル攻撃が顕著だった。
  • 偽情報がジャーナリズムの信頼性を低下させるために利用されるケースが急増。
  • 選挙や環境問題をめぐる偽情報キャンペーンが活発化し、市民の意思決定を妨げている。
  • 政府が「偽情報対策」を口実に報道を規制する動きが強まり、メディアの自由が脅かされている。
  • 報道の自由と偽情報対策のバランスをどう取るかが今後の重要課題。

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