スウェーデン心理防衛庁(MPF)は2026年10月16日、報告書シリーズ第15号としてThe Architecture of Repression: Russia’s Emerging System of Indoctrination, Digital Surveillance & Foreign Interferenceを公開した(PDF、316ページ)。執筆はルンド大学心理防衛研究所のジェームズ・パメントとバルバラ・クザ=タルコフスカ、カールスタード大学のダレジャン・ツルツミア、ストックホルム商科大学のセルゲイ・ポリアコフの4名で、資金はMPF、人的・物的支援は欧州対外行動庁(EEAS)が提供した。対象はロシア大統領府第一副長官セルゲイ・キリエンコが直接・間接に統制する50以上の組織と20以上の長期プログラムで、その年間予算を1,320億〜1,710億ルーブル(約13億〜17億ユーロ)と見積もる。国営テレビやRTなど従来型の国家プロパガンダ予算(約1,400億ルーブル)に匹敵する規模である。なお報告書は「ウクライナとロシアの射程内にある国々を支援するために書かれた」と明記し、EU制裁の拡大を提言する政策志向の文書である。主な素材は2024年に調査報道連合へ流出した大統領府の内部文書約50点、社会設計庁(SDA)から流出した約3,100点、2026年5月に流出したSDAと「センターS」の文書約50点、既存の報道、そしてロシアの求人サイトから収集した履歴書データであり、AIを要約・結論の一部生成に使用したことも開示している。結論は原則「中〜高確度」の評価である。
「要求の帝国」と三本柱
報告書はキリエンコの勢力拡大を要求の連鎖として捉える。2016年に内政担当として大統領府に入った当初の任務は、知事の管理、世論監視、選挙結果の調整によってプーチン体制の正統性を維持することだった。国営テレビを見ない若年層への対応が課題となると、2018年6月に情報通信技術局を掌握し、インターネット・教育・社会移動への統制を広げた。2022年の全面侵攻後は占領地を「内政」と位置づけて住民投票と統合政策を担い、さらに西側の意思決定を妨害する手段として対外影響工作の組織を取り込んだ。2025年9月のドミトリー・コザク失脚後は、その旧部局を統合した戦略的パートナーシップ・協力局も配下に収めた。
この拡大を支えた法形式が独立系非営利法人(ANO)である。会員基盤を持たず単独の設立者で設立でき、予算補助・助成・役務契約・収益事業を組み合わせられる。国家調達法(223-FZ)の対象外とされ、人員・給与・発注の裁量が大きい。報告書は、政府の外観を持たずに世論監視、若者動員、助成配分、「ファクトチェック」を担える点を、統制を手放さない外部委託の手段として分析する。
| 柱 | 主な組織 | 推計年間支出 |
|---|---|---|
| 愛国・教育 | 知識協会「ズナーニエ」、「ロシア―機会の国」(RSV)、第一人者運動、統合 | 580億〜970億ルーブル |
| デジタル統治 | ダイアログ、ダイアログ地域、インターネット発展研究所(IRI)、社会調査専門家研究所(EISI)、若者環境研究・ネットワーク監視センター(CISM) | 約390億ルーブル |
| 対外干渉 | 戦略的パートナーシップ・協力局、ロシア戦略研究所(RISI)、センターS、SDA、ストルクトゥーラ | 約350億ルーブル(ロスアトムの関与分は除外) |
揺りかごから墓場まで:愛国教育と社会的エレベーター
第一の柱について報告書は、教育・余暇・就職・昇進のすべてを貫く「揺りかごから墓場まで」の思想統制として描く。思想的核は、キリエンコ側近のアレクサンドル・ハリチェフとアンドレイ・ポロシンらが提唱した「ペンタバシス」で、国家・家族・社会・個人・国という五要素でロシア人の自己像を定義し、帝政期の「正教・専制・国民性」に相当する役割を担う。レフ・グミリョフの民族生成論が、衰退する西側と上昇するロシア文明という対立図式を補強する。ポロシンが設計した72時間の必修科目「ロシア国家の基礎」は2023年秋から全大学の新入生に課され、学校では2022年導入の「大切なことについての対話」が2024年に幼稚園、2025年に就学前教育まで拡大した。2024年9月開始の必修科目「安全と祖国防衛の基礎」では無人機操縦が教えられ、約1万7,000機の調達が計画された。
予算面では、愛国教育の連邦支出が2022年の49億ルーブルから2024年の499億ルーブルへと約10倍に増えた。国家プロジェクト「青少年と子ども」の2026〜2028年計画額は約1兆7,900億ルーブルに達するが、教員給与や施設費を含むため、報告書はキリエンコの統制下にある分を580億〜970億ルーブルと推計している。2022年設立の「第一人者運動」は2025年3月時点で会員1,100万人、年間予算213億ルーブルとされる。
報告書が重視するのは、この教化が人材選抜と一体化している点である。RSVが運営する管理者コンテスト「ロシアの指導者」や、2017年に始まった「知事学校」は思想的な適合を昇進条件に組み込んでいる。知事学校は現職知事89人中55人が修了者とされる。2024年開始の「英雄の時代」は、侵攻に参加した退役軍人を行政幹部に育成する2年制課程で、6万5,500件の応募があり、2025年5月までに第1期生42人が行政・立法機関や国営企業に任命された。RSVが約450大学に展開する調査基盤「無関心でない人」は学生の「社会的・心理的状態」を収集し、反政府的な学生の特定に使われていると指摘される。昇進経路と監視が同じ制度の表裏をなしている。
デジタル統治の垂直構造:ダイアログ、CISM、IRI
第二の柱の中心は、2019年11月にモスクワ市の主導で設立されたANOダイアログである。コロナ禍の情報センターとして、2020年に「デジタル経済」計画から231億ルーブルを得て急拡大し、同年7月に子会社ダイアログ地域を設けて全国展開した。2023年12月の監査役会議事録によれば、2024年初頭の職員は3,113人(ダイアログ370人、ダイアログ地域2,743人)で、うち2,254人が88か所の地域統治センターに配置されている(占領下ウクライナの4か所を含む)。さらに既存の自治体職員を流用する957か所の市町村統治センターが重なる。
中核ツールの「事案管理システム」は1億5,000万のSNSアカウントを常時監視し、2023年1〜11月に約500万件の「事案」を処理した。関与したオペレーターは1万2,000人を超える。2023年第1四半期の検出元はフコンタクテ(VK)が81%、テレグラムが10%、オドノクラスニキが7%で、西側プラットフォームは2%にとどまる。流出した手順書は信号機式の分類を定めている。赤は抗議行動や野党政治家を含む連邦規模の事象か、100万人以上に届く事案、黄は国家・地域指導部に否定的な発言や10万〜100万人規模の事案、緑は5万人までの生活上の苦情である。大統領府には事案を俯瞰するツール「プリズマ」が提供されている。報告書は、住民の不満処理を装いながら、地方知事の働きぶりを中央が監視する仕組みとして機能している点を強調する。
公式アカウント網も巨大である。本人確認済みの国家機関アカウントは24万4,000件(VK 17万、オドノクラスニキ5万4,000、テレグラム2万)、購読者は延べ1億5,700万に上り、毎週約120万件の投稿で最大2億5,500万回閲覧される。これとは別に、ダイアログ地域は所属を明かさない「非公式」網として、VKとオドノクラスニキの212コミュニティ(購読者約395万)と、地域245・連邦31のテレグラムチャンネル(購読者約212万)を運営する。内部データでは、地域ごとの購読者数上位10チャンネルのうち計143チャンネル(58%)がダイアログ地域の秘密運営だった。ただし内部調査が示す効果は乏しく、公式アカウントの平均投稿は閲覧175回、エンゲージメント率1.9%にすぎない。
偽情報研究者にとって注目すべきは、ダイアログが「偽情報対策」の語彙と制度を体系的に取り込んでいる点である。2023年には報道機関8、大学6からなる14団体のファクトチェック網を組織し、2,538件の「フェイク」を特定した。ファクトチェック媒体「ラプシャ・メディア」は購読者158万を抱える(エンゲージメント率1.1%)。2022年には7万6,315件のコンテンツに「フェイク」の標識を付け、VKとオドノクラスニキから51万4,702件のリンクを削除させた。ディープフェイク検出ツール「ゼフィール」も保有し、ラプシャ・メディアは「国産メッセンジャーMAXが通話を盗聴している」という主張の打ち消しにも使われた。「戦争とフェイク」チャンネルは中立的な検証を装いながらダイアログ幹部が調整するプロパガンダ媒体とされ、報告書は国家が検証を名乗る装置そのものを掌握している構図を示している。
若年層の監視はCISMが担う。当初は自殺や学校襲撃の予兆検知を名目としていたが、全面侵攻当日の2022年2月24日にマクシム・ルピンが代表に就任し、監視対象は「ナチズム」や「アナーキズム」へと広がった。自動情報システム「予防」は2024年までに子どもと若者のSNSプロフィール5億4,000万件(活動中の未成年の推定85%)を追跡している。AIで各児童に「破壊係数」と「反対係数」を割り当て、内務省のデータベースと連携させる。報告書はこれを第一の柱の「社会的エレベーター」の裏面と位置づける。
コンテンツ供給はIRIが担う。予算は2020年の30億ルーブルから2021年に100億、2022年に190億、2023年に207億、2024年に180億、2025年に253億ルーブルへと増えた。助成には成果指標(KPI)が付き、1,000万ルーブルの作品には50万回、5,000万ルーブル超の作品には400万回の視聴が求められる。IRIは2021年から社会広告の唯一の運営者となり、2025年の法改正で1日20万人以上が利用するマーケットプレイスなどに社会広告の掲示が義務づけられた。配信基盤では、キリエンコの息子がCEOを務めるVKの国産メッセンジャーMAXが2025年9月から端末への事前搭載を義務化され、2026年4月にはテレグラムが遮断された。
センターS:2026年流出文書が示した対外干渉の指揮系統
第三の柱で最も新しい素材は、2026年5月に流出した、大統領府情報通信技術局の部長ソフィア・ザハロワの個人端末由来とみられる文書群である。報告書はこれに基づき、侵攻関連の対外影響工作を統括する司令塔を、関係者の呼称に従って「センターS」と呼ぶ。センターSの下にはチームI、チーム4、チームE、HASKIの少なくとも4チームがある。対欧州の「包括的対抗キャンペーン」は水曜日、対ウクライナのキャンペーンは金曜日に定例会議が開かれる。チームIはSDAとストルクトゥーラ社(いずれもイリヤ・ガンバシゼが2017年12月の同じ週に設立)で構成され、日々10〜14人が共有オフィスで働く。チームIは監視・分析・制作を担い、配信は主にダイアログが担う。ハリチェフは対ウクライナ工作の戦略的物語を指示する「主任イデオローグ」とされ、ザハロワは思想よりも成果指標を基準に、物語と経路を継続するか打ち切るかを決める運用責任者として描かれる。
チームIの商品台帳は工作の単価構造を示す。2,000〜5,000字の長文記事は1本約26ユーロで、偽コメント10件と予告文3件が付く。短文投稿は約11ユーロである。コメントの生成にはAIのプロンプトが用いられる。拡散のおよそ60%は自前の接点網での再投稿・コメント、40%は有料広告で行われた。対ウクライナでは1年余りで2,800万件の偽コメントが投入され、広告や自動投稿と合わせて週最大2億5,000万回の接触機会を生んだと内部で報告されている。
一方で流出したチャットには、摘発による損失の具体的な記録が残っている。アカウント供給業者は「24時間で5万超のアカウントが破壊された」と訴え、6業者が取引を停止した。防弾ホスティング2社が閉鎖され、サーバー押収は5件以上、当局の命令でドメイン20件以上が差し押さえられた。決済サービス12社のうち3社が閉鎖され、30以上あったCAPTCHA回避サービスは2つに減った。報告書は、プラットフォームの協調的不正行為(CIB)対策と各国警察・情報機関の措置が、少なくとも工作の物理的基盤に実害を与えていたことの証拠として扱う。
同じ流出文書には、ウィキペディアを模した「自己強化型知識源」計画も含まれる。参照されていないページへのリンクが押されると原典を自動取得・整形して自前のデータベースに加え、検索エンジン最適化(SEO)で原典よりも上位を狙う仕組みで、トルコでホスティングし、ロシアからの接続は遮断する。アルメニアで拘束された実業家サムヴェル・カラペチャンを「良心の囚人」とする記事配置案も添付されている。「2026年の事業」と題する文書は、ドイツ向けに20万ページ超、アルメニア向けに5万ページ超を運用中とし、「編集済みコンテンツで6つのAIプラットフォームを月500記事で学習させている」と記す。ただし報告書は、この計画がSDAとセンターSのどちらのものかを高確度では特定できないとしている。
チャットには「エドワード・バーネイズ」という仮名の人物が登場し、ザハロワに「メディア案件」と破壊工作の提案・報告を送っている。前者には、パシニャン首相がマルセイユで高級別荘を購入した、ゼレンスキー大統領が母親のためにブルジュ・ハリファの部屋を購入したといった偽情報が含まれる。後者には、2025年2月にドイツで270台超の車の排気管が塞がれ、ハーベック氏の写真入りステッカーが残された事件、同年5月のパリのホロコースト記念館への塗料散布、同年9月のパリのモスク9か所への豚の頭部放置が並ぶ。報告書は、メディア案件の一部をStorm-1516に帰属させた外部調査と、仏政府機関VIGINUMが2025年にStorm-1516の資金源をGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)29155部隊と指摘した分析を組み合わせ、バーネイズのチームの少なくとも一部がGRU関係者であると推定している。ただし定例会議にGRUの出席形跡はないとも明記している。さらに、CISMの代表ルピンと副代表がハッカー集団NoName057(16)の指導部と疑われていることから、若者監視機関と分散型サービス妨害(DDoS)攻撃部隊の接続も論じられる。
対外干渉のもう一つの経路が、コザク失脚後に新設された戦略的パートナーシップ・協力局である。局長には、ロスアトムで国際事業を担ったキリエンコ側近のヴァディム・チトフが就いた。報告書は、同局が大使館に駐在するFSB・SVR・GRUの要員の活動を方向づける隠れ蓑だと評価する。2026年4月のハンガリー総選挙では、チトフと内政局長アンドレイ・ヤーリンが調整した「ブダペスト設計図」が展開されたが、目的は達成されなかった。
7,705件の履歴書が示す労働市場
報告書の方法論上の独自性は、ポリアコフとクリングがNew Media & Societyに発表した履歴書分析法の応用にある。ロシア最大の求人サイトHeadHunterから組織別の検索語で7,705件の構造化履歴書(除外989件)を収集し、雇用期間を月単位に展開して8,790の組織・月観測値を作成した。全職歴からは1,268ノード・7,270エッジの雇用主ネットワークを構築している。結果として、キリエンコ系組織の観測可能な人員は2020年8月頃から急増しており、とりわけダイアログの地域部門が2020〜2021年に拡大していた。報告書は全面侵攻が拡大を「始動させた」のではなく「加速させた」と結論づける。ネットワーク上の主要なハブは、ダイアログ地域、ダイアログ、地域統治センター、ズナーニエ、「大きな変化」、RSV、IRIであり、統治・メディア・教育・動員の人材が同じ労働市場を循環している。
| 組織 | 履歴書上の人数 | 流出文書上の人数 | 比率 |
|---|---|---|---|
| RSV | 341 | 430 | 79.3% |
| IRI | 156 | 264 | 59.1% |
| ダイアログ地域 | 1,372 | 2,468 | 55.6% |
| 大きな変化 | 326 | 126 | 258.7% |
| CISM | 40 | 158 | 25.3% |
| EISI | 19 | 110 | 17.3% |
報告書自身は限界を明記している。履歴書は自己申告の書類であり、公式な職員統計ではない。またエッジは同一人物の職歴上で共起したことを示すにすぎず、協力関係・資金・指揮系統を意味しない。それでも報告書は、この体制が教育課程を通じて自らの人材を再生産しており、プーチンやキリエンコ個人を超えて存続しうる労働市場になっていると結論する。
報告書の結論と提言
報告書は、キリエンコ体制の強みを、指標とデータで並行統治を正当化する管理主義と、忠実な中間管理者の網に求める。弱みとしては、過剰拡大とシロヴィキ(治安機関出身者)との摩擦を挙げる。テレグラム遮断はキリエンコの反対を押し切って決まったとされ、2026年3月にはズナーニエの元副代表が横領容疑で逮捕された。占領地、モルドバ、ブルガリア、ハンガリー、アルメニアでの選挙操作の失敗、KPIの使い方の粗さも弱みとして並ぶ。センターSの内部議事録が対外工作を「晴天時の活動」、すなわちロシア全体が好調なときにしか成果を出せない活動と自己評価している点も引用されている。提言は三つある。第一に、体制の全体像を欧州とロシア国内の住民に分かりやすく伝えること。第二に、国内の人権侵害と対外干渉を一体の生態系とみなし、EU制裁をキリエンコ個人と最側近から体制全体の関係者へ拡大すること。第三に、キリエンコの手口に即した対FIMI(外国による情報操作・干渉)・対ハイブリッド体制を構築することである。
分析:証拠の階層と、暴露が実績になる構造
以下は本稿の独自の分析である。本報告書を読むうえでは、証拠の階層を区別する必要がある。ダイアログの職員数、事案管理の分類、秘密運営チャンネルの数、センターSの単価表や損失記録は、流出した内部文書に直接記載された数値である。ただし、それらは上層部に向けて作られた自己報告でもある。報告書も、センターSが成果を誇示するスライドは「都合のよい事例を選んでいる」と注記している。キリエンコが「すべての対外影響工作を監督している可能性」や、バーネイズのチームとGRUの同一性は、断片的な証拠を組み合わせた推論であり、報告書自身もそれぞれ「可能性が高い」「確度は高くない」と区別している。また報告書内には数値の不整合が見られる。付録で2023年の直接連邦財政が「5,820億ルーブル(5億8,200万ユーロ)」とされているが、表の合計とユーロ換算から見て582億ルーブルの誤記とみられる。ダイアログの2023年予算「約90億」は内訳の合計(83億)と一致しない。ブルガリアは結論で失敗例とされる一方、本文では親ロシア派のラデフが絶対多数を得た移行先として記述されている。
そのうえで、本報告書の最も重要な示唆は二点ある。第一は、暴露が工作側の実績に変換される構造である。SDAはEU DisinfoLabなどによるドッペルゲンガー作戦の暴露や米司法省の差し押さえ令状宣誓供述書が生んだ注目を、標的国の議論を喚起した証拠として内部で報告し、新規契約につなげた。2026年の流出文書は、同時に、アカウント・プロキシ・ホスティング・決済・CAPTCHA回避という供給網への打撃が実際に効いていたことも示している。対策の評価軸は、注目度ではなく工作の物理的・商業的な基盤をどれだけ削れるかに置くべきだという含意が導かれる。第二は、国家が「ファクトチェック」と「偽情報対策」の制度を取り込み、検証の語彙を自国の情報統制の正当化に転用している点である。ダイアログのファクトチェック網やディープフェイク検出ツールは、欧州の制度と同じ名称と形式をまとっている。また、ウィキペディア模倣サイトで生成AIの学習データを汚染しようとする計画が実在するとすれば、検索とAIの参照源の健全性は、プラットフォームによるモデレーションだけでは担保できない領域になる。国内監視と対外工作を一つの統治技術として描いた本報告書は、FIMIの帰属判断を「どの部隊か」から「どの供給網と人材市場か」へ広げる手がかりを提供している。


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