ギリシャの同性婚合法化と偽情報──2024年の議論を分析したレポート

ギリシャの同性婚合法化と偽情報──2024年の議論を分析したレポート 情報操作

 2024年、ギリシャで同性婚と養子縁組が合法化された。これはギリシャがキリスト教正教会の国として初めて同性婚を認めた歴史的な出来事だった。しかし、その過程では大量の偽情報が拡散され、議論を混乱させた。

 ギリシャの偽情報監視団体「MedDMO」が発表したレポート『False Claims Targeting the LGBTQ+ Community in Greece’s 2024 Marriage Equality Discussion』(2025年3月11日)は、この偽情報の広がりを詳細に分析している。本記事では、このレポートの内容を紹介する。


ギリシャの同性婚合法化の背景

 ギリシャの同性婚合法化は長年の議論の末に実現した。

  • 1951年:同性愛が非犯罪化
  • 2015年:同性カップルのシビル・パートナーシップが合法化
  • 2024年:同性婚と養子縁組が正式に認められる

 これにより、同性カップルは異性愛カップルと同等の法的権利を持つことになった。結婚によって、医療決定権、親権、相続、税制上の優遇措置など、多くの権利が保障されるようになった。

 しかし、社会的には賛否が分かれた。調査では同性婚支持 54.8%、反対 42.5%と、ほぼ拮抗。国会の投票でも、与党(新民主主義党)内部で意見が割れた。こうした状況下で、偽情報が拡散され、議論を過熱させた


偽情報の広がり

 レポートは2024年1月から6月にかけて広まった偽情報の事例を整理し、分析している。偽情報は、以下のようなパターンで拡散された。

1. 既存の事実を歪曲する

「スイスが同性婚の国民投票を実施予定」

→ 実際は2021年に既に合法化
 ギリシャでも国民投票を行うべきだとする主張を正当化するため、スイスの同性婚事情が歪められた。

「アイルランドが同性婚を国民投票で否決した」

→ 事実と異なる
 アイルランドでは同性婚が合法化されており、反対したという事実はない。

2. フェイク画像・映像の拡散

「パルテノン神殿がLGBTQ+カラーにライトアップされた」

→ 画像がデジタル加工されていた
 実際にはそのようなライトアップは行われておらず、偽の画像がSNSで拡散された。

「妊娠したケン人形が発売された」

→ AI生成画像
 LGBTQ+の権利拡大に反発する勢力が、嘲笑的な意図で拡散した。

3. LGBTQ+の人々を誤った文脈に結びつける

「ギリシャ政府が獣姦を推進?」

→ 事実無根のデマ
 「Queer Destinations」というLGBTQ+フレンドリーな観光プロジェクトが、意図的に「獣姦」と結び付けられた。

「11歳の子どもが性転換のために思春期抑制剤を投与された」

→ 映像の誤解
 実際には医学的に認められた治療を受けている子どもであり、偽情報は誤解を招く形で拡散された。


偽情報を広めたのは誰か?

 レポートは、偽情報を拡散した主要なアクターも特定している。

1. 極右政治家

  • キリアコス・ヴェロポウロス(ギリシャ解決党首)
    • 乳製品会社Deltaのパッケージ変更を捏造
    • ユーロビジョン2024の優勝者Nemoが「逆さ十字をつけていた」というデマを拡散
  • コンスタンティノス・ボグダノス(元議員)
    • アイルランドの同性婚に関する誤情報を拡散

2. 宗教団体

  • ギリシャ正教会
    • 「同性婚は伝統的家族を破壊する」と主張し、政治家にも影響を与えた。

3. SNS・保守系メディア

  • フェイク画像や誤情報がXやFacebookで急速に拡散。
  • AI生成画像の利用が増加。

偽情報の影響

レポートは、これらの偽情報が以下のような影響を及ぼしたと指摘している。

  1. 議論の過熱
    • 偽情報が議論を感情的にし、社会の分断を加速させた。
  2. LGBTQ+コミュニティへの攻撃
    • 偽情報によって、LGBTQ+の人々が攻撃の対象になった。
  3. フェイクニュースの拡散が今後も続く可能性
    • すでに2025年にかけて、新たなデマが拡散されている。
    • 特に「家族の価値観」や「子ども」をテーマにしたデマが多い

まとめ

 このレポートは、ギリシャにおける同性婚合法化をめぐる偽情報のパターンや影響を詳細に分析している。

 特に注目すべきは、フェイクニュースが「家族」や「子ども」の問題と結びつけられ、感情的な反発を煽る手法が使われた点。これはギリシャに限らず、他国でも繰り返される手法であり、日本を含む世界のLGBTQ+の権利拡大に関する議論にも影響を与える可能性がある

 今後も、偽情報の広がり方に注意し、正確な情報に基づいた議論が求められるだろう。

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