ロシアの偽情報戦はどのように拡散されるのか?RANDの分析が示すプロパガンダの実態と影響

ロシアの偽情報戦はどのように拡散されるのか?RANDの分析が示すプロパガンダの実態と影響 情報操作

 ロシアのウクライナ侵攻は、軍事作戦と並行して大規模な情報戦が展開されている。その中心にあるのが、ウクライナを貶め、国際社会の認識を操作しようとするプロパガンダや偽情報の拡散である。2025年2月6日に公開されたRANDのレポート「Hate and Dehumanization in Russia’s Narratives on Ukraine」では、この情報戦の中核にある「人種・民族的動機による暴力的過激主義(REMVE)」ナラティブの広がりが詳細に分析されている。

プロパガンダの主要ナラティブ

 ロシアの偽情報は、特定のナラティブを軸に組み立てられている。その中でも特に目立つのが以下の4つのテーマである。

  • 非ナチ化(Denazification)
    ウクライナをナチス国家と位置づけ、軍事行動を正当化するナラティブ。プーチンは「キーウ政権による虐殺から人々を守るために、ウクライナを非ナチ化する」と発言し、ロシアのメディアも「ウクライナのナチズム」といった表現を繰り返している。
  • 非人間化(Dehumanization)
    ウクライナ人を害虫や動物に例え、侮辱する言説。メドベージェフはウクライナ人を「キーウの害虫」と呼び、プロパガンダ番組では「ホフロール(ウクライナ人への蔑称)」を用いた発言が頻繁に見られる。
  • 反ユダヤ主義(Antisemitism)
    ゼレンスキー大統領がユダヤ系であることを逆手にとり、彼をナチスと結びつける言説。プーチンは「ゼレンスキーはユダヤ人ではなく、ユダヤ社会の恥」と発言し、ソロヴィヨフは「ウクライナのナチズムは反スラブ的であり、ナチズムは必ずしも反ユダヤ的ではない」と主張している。
  • 反西側(Anti-Western)
    ウクライナを西側諸国(特にLGBTQ+やグローバリズム)と結びつけ、敵視するナラティブ。シモニャンは「ウクライナがLGBTの首都になろうが、ロシアは決してそうなりたいとは思わない」と発言し、ロシアのプロパガンダでは「ウクライナは西側の傀儡」とする主張が繰り返されている。

SNS上での拡散

 ロシアのプロパガンダはX(旧Twitter)やTelegramを通じて拡散されている。調査によると、ウクライナ侵攻直後には1日30万件以上の関連投稿がX上に見られ、特にロシア語、英語、スペイン語での投稿が多かった。ロシア語圏のアカウントが最も積極的に発信しているが、プロウクライナ派のカウンターナラティブも強く、情報空間は一方的に支配されているわけではない。

 拡散の中心にいるのは、ロシア国営メディア、プロパガンダ要員、軍事ブロガーなどである。特にTelegramでは、プロロシアのニュース組織や著名なプロパガンダ発信者が影響力を持つ。一方で、Xではプロパガンダの投稿を行うアカウントの多くがフォロワー数の少ない匿名アカウントであり、影響力には限界がある。

特定のターゲット層

 ロシアのプロパガンダは、多言語で発信されており、特にセルビア語・ブルガリア語圏で影響力が強い。これらの地域では、ロシア発の偽情報が容易に受け入れられやすく、極端な言説が拡散されやすい傾向がある。

 また、英語圏では、ロシアのプロパガンダが極右や陰謀論コミュニティと結びつき、ウクライナに対する憎悪を煽る内容が拡散されている。しかし、Xではプロウクライナ派のカウンターナラティブが強く、プロパガンダの影響が限定的であることも確認されている。

プロパガンダの効果と限界

 ロシアのプロパガンダは広範囲に拡散されているものの、その影響力には限界がある。特に、ロシア語圏では最も活発に発信が行われているが、多くの発信者はフォロワーが少なく、ネットワーク内での影響力は限定的である。一部のプロパガンダ拡散者は成功しているが、英語圏ではプロウクライナ派の発信者がより多くのフォロワーを持ち、情報空間は単なるプロパガンダの拡散の場ではなく、対立の場となっている。

まとめ

 ロシアのウクライナ侵攻におけるプロパガンダは、特定のナラティブに基づき、多言語で展開されている。XやTelegramを通じた拡散が行われているが、プロウクライナ派の反論も強く、必ずしも一方的な影響力を持っているわけではない。特に、セルビア語・ブルガリア語圏のような特定のターゲット層に対する影響が強い一方で、英語圏では反ロシア的なナラティブが優勢である。

 プロパガンダの拡散とその影響を理解することは、偽情報対策において重要であり、今後も継続的な分析が求められる。

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