2025年7月、WeMove Europeの依頼によりScience FeedbackとAlliance4Europeの研究者が実施したある実験は、EUが定める対ロシア制裁のデジタル領域での機能不全を明らかにした。対象となったのは、X上で拡散されるロシア国営メディア由来の投稿や、それらの拡散を助けるTelegramへのリンクである。制裁違反として明白なこれらの投稿を、実際にユーザーとして通報し、その反応を観察するという手法で、Xのコンテンツモデレーション能力、そして法令遵守の意思を問うた。
結果は、「Flagged and Ignored(通報されても無視)」というレポートタイトルが示す通り、深刻な対応の不備を示している。DSA(デジタルサービス法)で定義される「超大規模オンラインプラットフォーム(VLOP)」として、EU法に基づいた対応が義務付けられているにもかかわらず、Xの対応は形式的かつ不誠実なものであった。
通報された125件中、削除はたった1件
実験では、EU制裁違反が明白な125件の投稿をX上で通報した。通報内容には具体的な法的根拠(EU理事会規則833/2014、Article 2f)を記載し、European CommissionのFAQにもとづいて明確に「これは違法コンテンツである」と通知している。
だが、Xの対応は次の通りだった。
- 125件中1件のみが削除
- 57%の通報に対して受領確認すら行われなかった
- 多くの返信は「EU法違反ではないと判断した」という定型文
- 一部の返信は通報から2分以内に届いた
この2分以内という応答速度は、実質的にAIやボットによる自動処理である可能性が高い。つまり、制裁リストとの照合や法的判断などをせずに処理されている疑いがある。
「Doppelgänger」の影響工作は止められなかった
制裁対象となっているのは、RT(旧Russia Today)などの国営メディアだけではない。ロシアの影響工作「Doppelgänger」を運営しているSocial Design Agencyも、EU制裁対象である。研究者らはこのオペレーションによる投稿10件を通報した。
興味深いのは、これらの投稿に対するXの対応である。
- 1件だけが削除されたが、理由は「Scams and Fraud(詐欺)」と分類された。
- 他の9件については「違反なし」との回答だったが、そのうち6件は後日削除された。
- ただし、削除時点ではすでに当該アカウントは使い捨てられ、作戦は完了していた。
この「後追い削除」は、XがDoppelgängerの実態を把握していながら、運用上のリスクを放置したことを示している。ちなみに同様の情報提供を受けたBlueskyは有効な対応を取っていたという比較も報告書では言及されている。
Telegramを通じたバイパスと公然たる違反
投稿の多くは、制裁対象のコンテンツを直接載せるのではなく、「Telegramでフル動画が見られる」といったリンクの誘導を用いている。以下はその典型例である。
- RT編集長マルガリータ・シモニャンがXに動画を投稿し、「Telegramで全編はこちら」とリンクを提供。
- ロシア外務省の公式アカウントがRT制作のドキュメンタリーを切り抜いて投稿し、リンクで誘導。
こうした投稿は、「直接放送していないから制裁違反ではない」とされる可能性があるが、欧州委員会の見解では「アプリやプラットフォーム経由の拡散も放送・配信に含まれる」とされており、完全に違法である。
Xの通報機能は使い物にならないよう設計されている
報告書は、Xの通報システム自体に構造的問題があることも指摘している。
- 同一アカウントからは短時間に複数の投稿を通報できない(スロットルがかかる)。
- CAPTCHAによる遅延処理。
- そもそも通報後の確認メールが来ないことも多数。
- EU法対応を謳うフォームが存在するが、実際のプロセスには何の法的対応も見えない。
市民が制裁違反を通報しても、それを適切に処理するインフラが機能しておらず、さらに言えば、あえて機能しないように設計されている疑いすらある。
制裁が「形骸化」している現実
EUの対ロシア制裁は、2022年の全面侵攻以降、強化され続けてきた。だがこの報告書が示すのは、法律は存在していても、プラットフォームが協力しなければ実効性を持たないという事実だ。
現在、RTなどのコンテンツはX上で普通に見られ、制裁対象の情報操作オペレーションは通報されても止められず、40分間のプロパガンダ動画が何万ものEU市民に届く状況が継続している。
推奨される対策:観測、執行、制度設計の刷新
報告書では、以下のような具体的提案がなされている。
- EUレベルおよび加盟国レベルでの既存制裁の執行強化
- 通報体制の外部化:市民社会による「制裁違反観測所」の設置と通報ルートの確保
- 欧州委員会におけるデジタル制裁執行ユニットの創設
- 違反事例のデータベース化とプラットフォームごとの対応履歴の可視化
このようなインフラが整備されなければ、DSAの理念や制裁の法的正当性も絵に描いた餅に過ぎなくなる。
このレポートが明らかにしたのは、単なるモデレーションの遅れやリソース不足ではない。意図的な無視、構造的な放置、そしてプラットフォームによる選択的法令順守という、より深刻な問題である。制裁とは何か、その実効性を保つにはどうすればいいのかという問いを、我々自身の制度設計と監視の在り方に投げかけている。
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