TikTokとRumbleのレコメンダーアルゴリズムが未成年に反ユダヤ主義コンテンツを供給する構造——ISD・APT共同報告書の分析

TikTokとRumbleのレコメンダーアルゴリズムが未成年に反ユダヤ主義コンテンツを供給する構造——ISD・APT共同報告書の分析 プラットフォーム

 Institute for Strategic Dialogue(ISD、英国を拠点とする過激主義・偽情報研究機関)とAntisemitism Policy Trust(APT、英国のユダヤ人差別対策専門の政策シンクタンク)が2026年5月5日に共同発行した報告書 Amplifying Antisemitism: How Recommender Algorithms Serve Harmful Content to Children は、TikTokとRumbleのレコメンダーシステムが英国在住の未成年者に反ユダヤ主義コンテンツを推薦する経路と構造を実証的に分析したものである。TikTokでは15歳を模したソックパペットアカウント10件に対して14日間のボット自動操作を通じ5,500本超の推薦動画を収集し、Rumbleでは6か月間にわたりEditor’s Picksセクションから4,412本の動画を収集・分析した。英国のOnline Safety Act(OSA)施行(2025年7月)から約10か月後のタイミングで発行された本報告書は、同法の実効性への問いを正面から突きつける。

バイアス開示:ISDは反過激主義・プラットフォームガバナンス分野の政策提言型研究機関であり、本報告書はAPTとの共同発行である。両組織の立場上、プラットフォームに対する批判的結論に傾く構造的バイアスを念頭に置いて読む必要がある。


発行組織と調査の背景

 ISDはロンドンに本拠を置き、過激主義・偽情報・ヘイトスピーチのオンライン伝播を研究する機関で、プラットフォームガバナンスや政策提言を主要なアウトプットとして位置づける。APTはユダヤ人差別対策に特化した英国の政策シンクタンクで、政策立案者向けの調査・ロビー活動を行う。本報告書はこの二組織が2025年に実施したデータ収集に基づいており、対象プラットフォームとしてTikTokとRumbleを選定した理由は明確に説明されている。

 Ofcomの年次報告によれば、TikTokは12〜15歳のニュース消費者において最多利用の単一ニュースソースであり、英国の16〜17歳の約半数が利用している。一方Rumbleはカナダ拠点のビデオ共有プラットフォームで、「ビッグテック・ジャイアントに対するフリースピーチの代替」を自称し、右派・極右クリエイターおよびその視聴者の間で普及している。ISDの過去研究でも、Rumbleが右派過激主義・陰謀論のオンラインエコシステムで重要な役割を担うことが示されている。調査はOSA施行後に英国プラットフォームが負う子供保護義務の達成状況を検証する文脈を持つ。


調査設計:ソックパペットとデータ収集

TikTok

 英国在住のアナリストが、誕生日を2010年9月1日(調査時点で15歳)と設定した10件のTikTokプロファイルを作成した。プロファイルは以下の属性区分に従って設計された。

アカウント名性別カテゴリ検索語(各5語)
Zackary Brent紛争中立Israel / Gaza / Palestine / October 7 / Hamas
Roberto Dean左派Trans rights / Just Stop Oil / climate change protests / refugee support
Richard Sharp右派Free speech UK / anti-woke / illegal immigration / British patriot
Lewis Youngマノスフィア隣接Red pill / sigma grindset / alpha male / high value man
Dan Hadleyコントロールなし
Jenna Clifford紛争中立Israel / Gaza / Palestine / October 7 / Hamas
Jennie Hobbs左派Trans rights protect / Just Stop Oil / stop climate change / refugee support
Collette Calvert右派Free speech UK / anti-woke / illegal immigration / British patriot
Molly Francis極右TJD / ZOG / Jewish lobby / Rothschilds
Ayesha Huntコントロールなし

 各アカウントの訓練プロセスは15分×6セッション(計90分)の手動視聴で構成された。初回セッションではGCSE関連・同世代ユーザー動画・学校コンテンツを視聴し、TikTokが英国の15歳として認識するベースラインを確立した。アナリストは関連動画を最後まで視聴し、無関係な動画をスワイプすることで視聴パターンを形成した。

 90分の手動訓練後、各アカウントはAndroidスマートフォンに移管し、TikTokのデータエクスポートツールと独自開発のボットを用いた自動操作フェーズに移行した。ボットは各動画の説明文を10の関連キーワードと比較し、類似度に応じて視聴継続(60秒以上)またはスワイプを判定する仕組みで、1アカウントあたり14日間・1日15分の自動操作を実施した。その結果、総計5,500本超の推薦動画が収集された。動画は自動文字起こしツールで書き起こしたうえで、Nomic Atlasというセマンティッククラスタリングツールに投入し、意味的類似性でコンテンツを10のコアテーマに分類した。

Rumble

 Rumbleはアカウント登録なしに全コンテンツへアクセスできる非アカウントモデルを採用しているため、未成年ユーザーが見るコンテンツと成人ユーザーが見るコンテンツは同一である。この特性を踏まえ、アナリストはソックパペットアカウントではなくホームページの「Editor’s Picks」セクション(「Rumble.comの絶対的なリアルベスト」と自称する編集推薦枠)に注目した。2025年1月23日〜7月22日の6か月間にわたり712チャンネルから4,412本の動画を収集した。

 収集動画のうち上位10チャンネル(全チャンネルの1.4%)が推薦動画全体の18%を占めており、保守系インフルエンサーや男性ライフスタイルコンテンツに偏った編集傾向が確認された。203キーワードで動画説明文をフィルタリングして254本を絞り込み、yt-dlpでダウンロード・Whisperで書き起こしたのち、ローカルLLM(gemma3:12b-it-qat)で反ユダヤ主義との関連性をスコアリングした。LLMは254本中17本の動画から163の対話断片を「潜在的関連あり」と判定し、最終的に人手でレビューを実施した。


TikTok:レコメンダーが生成するコンテンツ構造

 収集された全動画をNomic Atlasでクラスタリングした結果、10のテーマが浮上した。動画数の多い順に並べると、イスラエル=パレスチナ紛争(1,523本・22%)、文化・ライフスタイル(1,278本・19%)、国内政治(1,070本・16%)、移民(1,036本・15%)の4テーマで全体の約7割を占める。

 トピックテーママップ上の構造的配置は示唆に富む。「文化・ライフスタイル」クラスターはマップの中央部に位置し、コントロールアカウント(Dan Hadley・Ayesha Hunt)のほぼすべての動画と他アカウントの初回セッション動画を包含する。このクラスターの中心性は、プラットフォームが未成年ユーザーを中立的なライフスタイルコンテンツから出発させ、そこから政治・陰謀論クラスターへと推薦連鎖を形成する構造を示している。

 マップの下半分には「イスラエル=パレスチナ紛争」「イラン」「宗教」の密接に連結したクラスターが位置し、左上方には「マノスフィア」クラスターが「文化・ライフスタイル」と近接している。反ユダヤ主義コンテンツが最も多く確認されたのは「陰謀論」テーマで、国内政治クラスターとイスラエル=パレスチナ紛争クラスターの双方に接する形で分布している。この配置は、反ユダヤ主義コンテンツがイスラエル=パレスチナ、宗教、陰謀論の交差点から生成され、隣接する政治・地政学テーマによって強化されることを示す。


ユーザージャーニー:3プロファイルの軌跡

 アナリストが手動訓練中に反ユダヤ主義との関連で特に注目したのは、Roberto Dean(左派)、Lewis Young(マノスフィア隣接)、Molly Francis(極右)の3プロファイルである。

 Roberto Dean は気候正義・LGBTQ+権利・難民支援を入力語とした左派設定のアカウントである。第3セッションでは親移民・反人種差別コンテンツが推薦された。10分後にはジェレミー・コービンやノヴァラ・メディアの動画が推薦されはじめ、中東に関する検索語を一切入力していないにもかかわらず親パレスチナコンテンツが自発的に推薦された。第4セッションでは「Your Party」(英国の反主流政党)の動画が継続的に推薦され、カンデス・オーウェンズがイスラエルと小児性愛の関連を主張するクリップも含まれた。第5セッションではコーランの一節を含む動画とともに、アヤトッラー・ハメネイの演説や暗殺されたイラン革命防衛隊(IRGC)司令官カセム・ソレイマーニーを称える動画が大量に推薦された。最終セッションではイランの軍事パレードや対ソレイマーニー賛美動画に加え、「ユダヤ人ロビー」「シオニスト占領政府(ZOG)」への言及を含む複数の反ユダヤ主義動画と、ハマス元スポークスマン、アブ・オベイダの演説を音声として使用した動画が推薦された。

 Lewis Young は「レッドピル」「シグマ・グラインドセット」「アルファ男性」「ハイバリューマン」を検索語とするマノスフィア隣接アカウントである。関連語入力後すぐに、ルックスマキシング(外見改善を追求するサブカルチャー)、レッドピル、ブラックピルのコンテンツが推薦され、ロープスマキシング(自殺を示唆するトレンド)を扱う動画も1本確認された。第3・4セッションではブラックピルの編集動画から動機付け系引用・マキャベリへと内容が変化し、「グレートリセット」など陰謀論的コンテンツが混入した。第5セッションではロスチャイルド家やBlavatniks(ウクライナ系英国富豪)の影響力を主張する反ユダヤ主義陰謀論動画が推薦され、極右コード語でユダヤ人がメディアを支配すると主張するコンテンツが出現した。第6セッションではユダヤ人がハリウッドを支配するという陰謀論、ネオナチのコード語、「14ワーズ」(白人至上主義の14語スローガン)、ヒトラーを支持しホロコーストを否定または讃える動画が4本、さらに2014年イズラ・ビスタ事件で6人を殺害したミソジニー的テロリスト、エリオット・ロジャーの画像を含む動画が推薦された。

 Molly Francis は「TJD(Total Jewish Death)」「ZOG」「Jewish lobby」「Rothschilds」を検索語とする極右設定アカウントである。TJDそのものはプラットフォームにブロックされたが、代替コード語「Totally Jolly Day」はブロックされておらず、極右コンテンツへのアクセスは維持された。「271」というコード語——公式死者数600万人を否定し、アロルゼン・アーカイブ(一部の収容所のみを記録した限定的文書)の271,000人という数字を根拠とするホロコースト歪曲——を含む動画も推薦された。フランシスのアカウントには、ロスチャイルド陰謀論、ユダヤ人ロビー論、チャーリー・カーク暗殺とイスラエルの関連を示唆する動画、ホロコースト否定論者デイヴィッド・アイクの出演動画、2019年ニュージーランド・モスク銃撃テロの犯人を称えるミームが推薦された。中東関連の検索語を一切入力していないにもかかわらず、推薦コンテンツの大部分が宗教またはイスラエル=パレスチナ紛争に関連するものだった。


TikTokで観察された反ユダヤ主義ナラティブの類型

ユダヤ人支配陰謀論

 最も横断的に観察されたテーマは、ユダヤ人が金融・政府・メディアを秘密裏に支配するという古典的陰謀論である。この系統のコンテンツは右派・左派・陰謀論サークルの三つの文脈を横断して流通しており、「シオニスト占領政府(ZOG)」という用語がその共通言語として機能した。ロスチャイルド家に関しては、バルフォア宣言の成立をロスチャイルドが操作したと主張するコンテンツが複数アカウントに推薦された。カンデス・オーウェンズはTikTok自体をユダヤ人が運営していると主張する動画で複数回推薦され、さらにジェフリー・エプスタインがイスラエルの工作員だったと主張し、イスラエル政府関係者と小児性愛の関連を示唆するコンテンツも推薦された。1本の陰謀論動画が33,500件のいいね・1,000件のコメント・4,600件のシェア・507,000回の視聴を記録しており、権威ある出典なしの「独自調査」として提示されたコンテンツが大規模なエンゲージメントを獲得していることを示している。

「ダンシング・イスラエリス」——9/11陰謀論

 2001年9月11日の同時多発テロをモサドまたはユダヤ人が仕組んだとする「ダンシング・イスラエリス」陰謀論は、極右エコシステムとパレスチナ連帯運動の双方に流通していた。AIが生成した燃えるツインタワーの画像の傍らで笑うユダヤ人を描いたステッカーや、「すべての9/11の側面はユダヤ的(Every single aspect of 9/11 is Jewish)」と記した「インフォグラフィック」型ステッカーがコメント欄に拡散していた。確認された動画の1本は約1,600件のいいね・30件のコメント・180件のシェアを記録した。

チャーリー・カーク暗殺陰謀論

 米国の保守系活動家チャーリー・カークの死について、イスラエルが関与したと主張するコンテンツがTikTokで推薦された。この陰謀論は9/11の「隠れた手」理論と同一の構造を持ち、ユダヤ人が無限の権力を持つ秘密エリートとして世界規模の謀略を実行するという枠組みで語られる。この動画は約200,000件のいいねと19,000件のシェア・4,000件のコメントを記録した。コメント欄のステッカーにはガス室への言及、ユダヤ人を石鹸として描いた表現、AI生成のナチス制服を着た白人女性がダビデの星形のクッキーをオーブンから取り出す画像が含まれていた。

ホロコースト歪曲・否定

 死者数600万人を否定するコンテンツは、「6 million cookies」「6 gorillion」「271k」といったドッグホイッスルで表現されていた。「600万人が確実だというなら30万人も名前を挙げてみろ。できないだろ?」「自分も600万人じゃなかったと知っている仲間と過ごす感じ」といったキャプションを持つ動画が確認された。このカテゴリの動画は平均で約31,000件のいいね・1,000件のコメント・5,000件近いシェアを記録し、データ収集から執筆時点の間にプラットフォームによって削除されていた。コメント欄ではヒトラーを「オーストリアの画像家」、親衛隊(SS)を稲妻の絵文字2つ、ユダヤ人をジュースボックスの絵文字で指すコード表現が一般的に使用されていた。

極右コンテンツ

 ヒトラーの演説にAI音声を重ねた動画、ユダヤ系俳優の名前をダビデの星とともに一覧表示した動画、ユリウス・エヴォラ(イタリアの極右哲学者)の著作を推薦する動画などが確認された。TikTokの「サウンド」機能では、ユダヤ系ユーザーへのドッグホイッスルとして機能することが先行研究で示されているユダヤ民謡「ハヴァ・ナギラ」が悪用されており、プラットフォームのモデレーションをすり抜けていた。

マノスフィアと反ユダヤ主義の交差点

 マノスフィア隣接コンテンツを消費するLewis Youngのアカウントには、「高ティアノーミー(high tier normie)」や「チャドライト(chadlite)」としてヒトラーを称えるステッカー、「チャド」をアーリア人種と結びつける画像が投稿されていた。271kや稲妻の絵文字2つ、ジュースボックス絵文字といった反ユダヤ主義コード語もマノスフィア動画のコメント欄に広く流通していた。報告書はマノスフィアと極右オンラインエコシステムの間の距離が短いことを実証的に示す事例として、この経路を位置づけている。


ステッカー・サウンド機能の構造的悪用

 TikTokが提供するインタラクティブ機能——コメント欄でのステッカー添付とサウンドの再利用——は、表面的に問題のないコンテンツから露骨な反ユダヤ主義コンテンツへの橋渡しとして機能していることが本調査で体系的に確認された。「Happy Merchant」(白人至上主義空間で広く流通するユダヤ系男性の侮辱的戯画)を素材にしたステッカーや、ダビデの星ブランドのテレビから視聴者の脳を操作するユダヤ系男性を描いたステッカーが、カンデス・オーウェンズ動画のコメント欄に投稿された。Bob Vylanの楽曲「Death to the IDF」(2025年グラストンベリー・フェスティバルでの演奏で広まったトラック)がドッグホイッスルとして転用され、それを使用した動画1本が約5,600件のいいね・597件のコメント・29,700回の視聴を記録し、コメント欄に非人間的なユダヤ人描写を含むステッカーが大量に投稿された。反ユダヤ主義として削除された動画のステッカーは、投稿自体が削除されない限り残存するケースが多く、TikTokの自動モデレーションが視覚的ヘイトの検出において有効に機能していないことを示している。


Rumble「Editor’s Picks」:露骨な反ユダヤ主義の増幅

ユダヤ人支配陰謀論——イスラエルロビーとソロス

 Rumbleのコンテンツは、TikTokの段階的エスカレーションとは異なり、初期から露骨な反ユダヤ主義の言説を含んでいた。「イスラエルロビー」、より具体的にはAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)が米国政府を支配しているという主張が繰り返し登場し、「ドナルド・トランプの大統領就任はイスラエルの作戦(OP)の一環」と断言するストリーマーも確認された。

 ジョージ・ソロスを悪の操り人形師として描き、COVID-19パンデミック・ブラック・ライブズ・マター運動・選挙不正の黒幕とする陰謀論も頻出した。227,000フォロワーのアカウントによる「ソロスが欧州と米国への不法移民を大量送り込んで西洋を不安定化させようとしている」という主張は262,000回以上視聴され3,500件のいいねを獲得した。114,000フォロワーのチャンネルによる「ソロスがUSAID資金で米国の司法制度を破壊した」という動画も101,000回視聴・1,000件超のいいねを記録した。

カザール神話——アシュケナージ系ユダヤ人の否定

 Rumbleで特徴的に観察されたのが「カザール神話」を援用したコンテンツである。これは8世紀にユダヤ教に改宗した中央アジアの遊牧民族カザール人の子孫がアシュケナージ系ユダヤ人であるとする歴史的に否定された仮説を悪用し、彼らを「偽のユダヤ人(fake Jews)」と呼ぶ反ユダヤ主義言説である。ISDの過去の調査では、同じカザール神話がロシアのウクライナ侵攻を正当化するためにTelegramのQAnon・主権主義・極右・親クレムリン集団によって利用されていたことが記録されており、ウクライナを「カザール・エリートが率いるカザール・プロジェクト」として枠組みするために転用されていた。340,000フォロワーのRumbleクリエイターが「カザリアン・マフィア」言説を展開した動画は210,000回視聴・4,000件超のいいねを獲得した。

9/11からOctober 7への陰謀論の適応

 Rumbleでも「モサドが9/11でビルを配線した」という主張や「9/11のときのようにユダヤ人が被害者ぶっている」という発言が確認された。さらに注目すべきは、October 7のハマスによるイスラエル攻撃についても同一の陰謀論的枠組みが適用されていたことである。ストリーマーの一方は「ハマスはモサドが創設した」と主張し(46,000フォロワーのアカウント・81,000回視聴)、別のストリーマーは「ハマスにはOctober 7規模の攻撃を実行する軍事能力がないため、IDF自身が攻撃した」と示唆した(88,000フォロワー未満のアカウント・120,000件近いシェア)。報告書はこれを「反ユダヤ主義陰謀論の現在の出来事への適応力と、プラットフォーム横断的な回復力」の証左として位置づけている。

スラーとトロープ

 ストリーマーは露骨な侮辱語(「J people」)、「選民(Chosen people)」のドッグホイッスル的使用、ユダヤ人を強欲と結びつける紋切り型の描写、「ユダヤ人はキリストを殺した」という神殺し神話(deicide myth)に根ざした非人間的発言を公然と使用していた。イスラエル=パレスチナ紛争や米国政治についての議論の中で、「ユダヤ人の目標は反キリストを召喚することだ」「ユダヤ人に悔い改めを求める」「イスラエル人は黙示録的カルトだ」という発言も確認された。ライブストリームの録画として残存する過去の配信では、視聴者がリアルタイムで投稿したコメントが画面上に永続的に表示されており、通常のコメント欄モデレーションの対象外となっている。さらに、ライブ配信中に視聴者が有料で表示できるスーパーチャット機能(メッセージ+GIF)が、「Happy Merchant」ミームを含む反ユダヤ主義GIFの配信中心部への挿入に悪用されていた。


プラットフォームのモデレーション限界

 TikTokでは、分析期間中に一部の反ユダヤ主義動画が迅速に削除された。報告書はこれがRothschild、271kなどのキーワードに対応する自動モデレーションの結果とみている。しかしステッカーや特定のサウンドを介したドッグホイッスルはほぼ検出されておらず、コメント欄のステッカーは当該投稿全体が削除されない限り残存した。Molly Francisアカウントへの実験では、TJD(Total Jewish Death)というコード語はブロックされたが、その回避表現「Totally Jolly Day」はブロックされなかった。

 Rumbleはアカウント登録不要のモデルと自称フリースピーチ方針を組み合わせており、年齢確認の仕組みが存在しない。ライブストリームの録画に永続的に付着する視聴者コメントは通常のモデレーション対象外であり、有料GIF機能を通じた反ユダヤ主義ビジュアルの放送中挿入に対しても有効な制御が存在しない。


Ofcomへの政策提言:Online Safety Actの実効性

 報告書は6項目の政策提言をOfcom(英国通信庁)に対して行っている。

#提言核心的要求
1アルゴリズム増幅を独立した規制対象とする反ユダヤ主義コンテンツのアルゴリズム増幅を違法コンテンツ義務・子供の安全義務の下での独立した規制対象として明示
2「受動的露出」経路を義務的リスク評価に含めるユーザーが積極的に検索しなくてもヘイトコンテンツに曝露される経路をリスク評価に組み込むよう義務化
3子供の安全義務の反ユダヤ主義コンテンツへの適用を強化・明確化文脈的・コード化された反ユダヤ主義も含めた最強レベルのセーフガード適用を義務化
4エンゲージメント駆動型エスカレーションへの対処を義務化武力衝突・テロなどの危機的局面でアルゴリズムが反ユダヤ主義コンテンツへのエスカレーションを加速させることへの対応を要求
5レコメンダーシステムの公開透明性を向上させるコンテンツ削除統計だけでなく、推薦・シーケンシング・アルゴリズム設計の透明性報告を義務化
6コンプライアンスをコンテンツ削除統計のみで評価しない削除統計ではなくアルゴリズム設計の構造的介入によるコンプライアンス立証を要求
7反ユダヤ主義の専門知識を規制監督に組み込むOfcomが反ユダヤ主義の文脈的・コード化された形態を評価できる専門知識へのアクセスを確保

 「受動的露出」概念は本報告書の政策的核心をなす。OSAは現在、ユーザーが積極的に有害コンテンツを検索するケースを主に想定しているが、本調査はアルゴリズムがプッシュ型のコンテンツ配信装置として機能し、ユーザーの意図なしにヘイトスピーチへの曝露を引き起こすことを実証している。報告書はOSAのコンプライアンス評価がコンテンツ削除統計に過度に依存する現状を構造的な問題として指摘し、推薦システム設計の事前介入を義務化するよう求めている。


研究の意義と限界

 本報告書の方法論的な強みは、ソックパペット訓練・ボット自動操作・セマンティッククラスタリング・LLMフィルタリングを組み合わせた多段階設計にある。特にNomic Atlasによるトピックテーママップは、個別コンテンツの分析にとどまらずプラットフォームのアルゴリズム的エコシステム全体の構造を可視化した点で方法論的に注目される。

 一方、限界も明示されている。自動手法によるデータ収集はすべてのユーザー体験を代表するわけではなく、ソックパペットの訓練プロセスは実際の有機的プラットフォーム利用を完全には再現しない。Rumble分析については、動画の長さが数時間に及ぶものも含まれるため、LLMによる一次スクリーニングを経由しているが、このフィルタリングの感度と特異度は明示されていない。TikTokのデータ収集は2025年9月という特定時点のスナップショットであり、プラットフォームのアルゴリズム変更によって現在の状況は異なる可能性がある。また、OSA施行(2025年7月)から約2か月後にデータが収集されており、施行後のプラットフォーム対応が完全に反映されていない可能性もある。発行が2026年5月であることから、報告書執筆から発行まで約7〜8か月のギャップがあり、プラットフォームの対応状況はさらに変化しているとみられる。

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