本稿が扱うのは、欧州連合(EU)がペルー政府と同国の国家選挙裁判所(Jurado Nacional de Elecciones、JNE)の招請により派遣した選挙監視ミッション(EU Election Observation Mission、EU EOM)が2026年に公表した「Peru 2026 Final Report – General elections and Presidential run-off」である。対象は2026年4月12日の総選挙(大統領・副大統領、国会議員、アンデス議会代表を選出)と、同年6月7日に行われた大統領決選投票の二回の投票プロセスで、ミッションは欧州議会議員アナリサ・コラード(Annalisa Corrado)を首席監視員とし、選挙専門家10名、長期監視員50名、短期監視員50名で構成された。両投票日にはEU加盟国の在ペルー外交使節およびEU代表部から現地採用された短期監視員も加わり、欧州議会からは第一回投票に7名、決選投票に6名の議員団が同行、通算でEU加盟27か国およびカナダ・ノルウェー・スイスから150名の認定監視員が投入されている。EUはこれ以前にも2001年、2011年、2016年、2020年、2021年にペルーへ選挙監視・専門家ミッションを送り、2017年と2024年にはフォローアップミッションを実施しており、本報告書はその蓄積の延長線上に位置づけられる。
報告書の性格は単なる開票結果の報告ではなく、選挙制度・法枠組み・選挙管理・候補者登録・キャンペーン環境・メディア・SNS・女性やインディヘナ等の参加・投開票・選挙紛争・結果と選後環境という20章構成の総合監査であり、末尾には55頁から81頁にわたる詳細な勧告表と、法枠組み・政治キャンペーン・メディアモニタリング・SNSモニタリング・最終結果の五つの附属資料(Annex A~E)が付されている。本稿はこのうち、報告書がとりわけ実証密度の高いデータを積み上げている第11章(メディア)、第12章(SNS)、およびAnnex C・Dの定量分析に焦点を当て、ペルーの選挙が「不正ナラティブ」「非有機的増幅」「第三者広告」という三つの軸でどのように情報操作の対象となったかを、報告書が提示する具体的数値とともに再構成する。
なお、SNSモニタリングを担当したのはEU EOMの社会メディア監視ユニット(Social Media Monitoring Unit、SMMU)で、監視期間は第一回投票キャンペーンおよび直後の選後期間(2026年3月10日~4月19日)と、決選投票キャンペーンおよび直後の選後期間(同5月7日~6月14日)の二期に分かれる。対象プラットフォームはFacebook、Instagram、TikTok、Xで、大統領・副大統領候補34アカウント、政党36アカウント、選挙管理機関3アカウント、インフルエンサー・政治コメンテーター5~7アカウントを体系的に監視した上、選挙関連のキーワード・ハッシュタグで抽出した広範な言説も対象に加えている。データ収集の主軸はソーシャルリスニングツール「SentiOne」で、SMMUは合計737,253件の投稿・コメントを定量分析し、4,725件を定性的にコーディングした。投稿は媒体・発信者・トピック・種別・情報源・トーン・言及対象に加え、不正ナラティブ・偽情報・選挙機関や関係者への攻撃・攻撃的または差別的言説・情報操作といったリスク指標でコーディングされている。有料政治広告と第三者による攻撃的活動は別途、WhoTargetsMe、Meta広告ライブラリ、Apify、Exolytを用いて監視され、データ分析と可視化にはPython、RStudio、4CAT、Gephiが用いられた。報告書自身が明記する通り、この監視は「高エンゲージメント・高可視性のコンテンツ」を優先して抽出する設計であり、選挙関連SNS活動の完全な悉皆調査ではない――この方法論的限定は、後述する数値を読む際に踏まえておく必要がある。
政治的危機を背景にした選挙――四代連続の大統領交代と制度不信
SNS上の情報環境を理解する前提として、報告書が第3章で描く政治的背景を押さえておく必要がある。2026年総選挙は、深刻な政治危機と国家機関への信頼低下を背景に実施された。現職大統領ホセ・マリア・バルカサル(José María Balcázar)は、2021年の大統領選挙で選出された任期における四人目の大統領である。ペドロ・カスティージョは2022年12月、議会解散を試みたことによる反乱罪で逮捕され、後任は副大統領ディナ・ボルアルテ、続いて議会議長ホセ・ヘリが務めたが、いずれも議会が「政治的に都合の良いとき」に汚職や道徳的不正行為を理由として罷免しており、行政府と議会の間の力の不均衡を浮き彫りにした。退任前の議会は、警察・検察の捜査要件を厳格化する法律や、1980年から2000年の国内武力紛争期の人権侵害の訴追対象者を利する恩赦法、さらに2018年の国民投票で90.5パーセントが反対した二院制の復活を、いずれも物議を醸しながら成立させている。ペルー研究所(Instituto de Estudios Peruanos)の調査によれば、選挙直前の時点で議会への信頼を表明したペルー人はわずか7パーセント、政党への信頼が「ほとんどない、または全くない」と答えた者は80パーセントを超えた。
この不信の広がりは選挙戦の構造そのものにも表れている。37の政治組織と35の大統領候補が競う空前の乱立となり、うち三分の二は2021年の選挙以降に新設された組織で、政党システムの定着不足を露呈した。第一回投票前の複数の世論調査では、有権者の20パーセント以上が白票・無効票を投じる意向を示していた。フエルサ・ポプラール(Fuerza Popular)を率いるケイコ・フジモリと、リマ元市長でレノバシオン・ポプラール(Renovación Popular)党首のラファエル・ロペス=アリアガが世論調査の首位を争い、他の候補は軒並み支持率6パーセント未満で推移した。フントス・ポル・エル・ペルー(Juntos por el Perú)のロベルト・サンチェス、ブエン・ゴビエルノ党(Partido del Buen Gobierno)のホルヘ・ニエト、市民運動オブラス党(Partido Cívico OBRAS)のリカルド・ベルモンテは選挙戦終盤になってようやく支持を伸ばした。
第一回投票の結果、フジモリが17.19パーセント、サンチェスが12.03パーセントの有効票を得て決選投票に進出したが、両者の合計支持は有効票の三分の一にも満たなかった。三位のロペス=アリアガとの差はわずか21,209票である。決選投票の結果確定は5月17日までずれ込み、その間、公的資金による選挙放送枠(franja electoral)の法定放送期間15日を7日に短縮せざるを得なくなった。決選投票そのものはフジモリが50.13パーセントの有効票を獲得し勝利、サンチェスとの差は49,641票にとどまった。両ラウンドとも、敗れた候補――ロペス=アリアガとサンチェス――が根拠を示さない不正主張で公然と抗議行動を組織し、それぞれの支持層への「不当な扱いと差別」を訴える二極化した言説で選挙結果の正統性に疑義を呈した。この構図こそが、後述するSNS上の不正ナラティブの土台をなしている。
メディア環境――国営は中立、民間は分極化
報告書第11章は、ペルーのメディア環境を「州営メディアは公正・中立な報道を提供した一方、民間全国メディアの大半による偏向報道が有権者の情報アクセスの多様性を制限した」と総括する。ペルーには2026年時点で8,283の放送メディアが存在し、インターネット普及率は82パーセントに達する。市場は集中と編集の分極化の影響を強く受けており、エル・コメルシオ・グループ(Grupo El Comercio)が保守・自由主義的立場を主導する一方、ラ・レプブリカ・グループ(Grupo La República)が中道左派の代替となり、RPPがラジオ・オンラインニュースの最大手として位置する。2026年5月にはエル・コメルシオ・グループの株式60パーセント超の売却プロセスが開始され、テレビ局ラティーナとパナメリカーナは所有権変更の渦中にあった――後者では新オーナーが左派寄りとみなすジャーナリストの排除方針を公言し、物議を醸している。
報道の自由をめぐる状況は悪化傾向にある。国境なき記者団(RSF)の2026年版世界報道自由度ランキングでペルーは180か国中144位に後退し、前年から14ポイント下落した。ペルー全国ジャーナリスト協会の集計では、直近1年間で458件の脅迫事件(殺害4件を含む)が記録され、選挙期間中だけでも60件超の事案(殺害予告を含む)が報告された。象徴的な事例として、1988年のジャーナリスト、フーゴ・ブスティオス殺害で2023年に有罪判決を受けたダニエル・ウレスティが2026年3月に釈放されたことが挙げられ、米州人権委員会(IACHR)やメディア監視団体が非難する中、ウレスティ自身はポデモス・ペルー(Podemos Perú)の選挙運動に積極的に関与していた。ロペス=アリアガは2026年1月16日のパナメリカーナTVのインタビュー中、ジャーナリストのアンヘル・パエスに対し「パエスを除くすべてのジャーナリストの命は助ける」と発言しており、これは同年11月に彼自身が同記者を相手取って加重名誉毀損訴訟を提起していた経緯とあわせ、報告書が名誉毀損罪の懲役刑(最大3年)の撤廃と罰金への置き換えを優先勧告に位置づける根拠となっている。
EU EOMのメディアモニタリングユニットは、テレビ6局(国営TVペルー、民間のアメリカTV・ラティーナTV・ATV・パナメリカーナTV・ウィラックスTV)、ラジオ3局、日刊紙6紙を対象に定量・定性分析を実施した。第一回投票期間の分析では、国営テレビは候補者報道において広範・公正・中立な報道を提供した一方、民間テレビのうち報道量最大のウィラックスTVとパナメリカーナTVで最も強い偏向が観測され、ロペス=アリアガとフジモリが最も多い報道量と直接発言機会を得た一方、カルロス・アルバレスはおおむね中立に報じられ、セサル・アクーニャ、ウォルフガング・グロソ、アルフォンソ・ロペス=チャウ、ロベルト・サンチェスはより頻繁に否定的に扱われ、直接発言機会も限られた。女性候補への報道は全テレビ局合計で19パーセントにとどまり、男性候補の81パーセントと著しい格差がある。
決選投票期間はさらに偏向が顕著になった。国営メディアは引き続き中立・均衡を維持した一方、民間メディアの大半がサンチェスとJuntos por el Perúに対して強い偏りを示している。報告書が具体的に示す数値は以下の通りである。
| メディア | 対Juntos por el Perú/サンチェス | 対Fuerza Popular/フジモリ |
|---|---|---|
| ウィラックスTV | 放送時間の45%を配分、うち75%がネガティブトーン | 放送時間の23%を配分、うち83%が中立・6%がポジティブ |
| パナメリカーナTV | 放送時間の40%を配分、うち58%がネガティブトーン | 放送時間の26%を配分、うち82%が中立・16%がポジティブ |
| ATV | 放送時間の50%を配分、うち48%がネガティブトーン | 放送時間の31%を配分、うち92%が中立・5%がポジティブ |
| アメリカTV | 報道の36%がネガティブトーン | ラティーナTVより偏向は強いが、より中立的な扱い |
新聞ではペルー21がとりわけ強い偏りを示し、サンチェスとJuntos por el Perúに関する報道の70パーセント超がネガティブトーンだった。エル・コメルシオ、コレオ、トロメの3紙もサンチェスとJuntos por el Perúへの報道量をフジモリとFuerza Popularの2倍以上割いており、大半がネガティブトーンである。対照的にラ・レプブリカは両陣営にほぼ均等な報道量を割いたが、その40パーセントがフジモリとFuerza Popularに対してネガティブという、逆方向の偏りを見せた。フジモリに関する報道内容はキャンペーン活動に集中したのに対し、サンチェスに関する報道は経済への悪影響懸念、アンタウロ・ウマラとの関係、違法採掘との関係疑惑、政党資金調査、テロリズム、そしてJuntos por el Perú所属の元国会議員候補が犯罪恐喝組織との関連で逮捕された事件に紐づけられていた――すなわち、単なる論調の差ではなく、報道が取り上げる論点そのものが候補者間で非対称だったことを報告書は指摘している。
SNS環境と「不正」ナラティブの発生曲線
ペルーのオンライン人口は広範だが、根強いデジタル格差の上に成り立っている。インターネットアクセスはリマなど都市部で高い一方、農村部では60パーセントを下回る。接続は携帯電話が中心で、短尺動画のようなモバイル消費に最適化されたキャンペーン発信を後押しした。SNS利用者はインターネット利用者の約88パーセントに上り、内訳はFacebookが約2,500万人と最大のリーチを持ち、TikTok(1,900万人)、YouTube(1,700万人)、Instagram(1,100万人)、X(400万人)と続く。若年層はTikTokとYouTubeを情報源・政治的コンテンツの入手先として重視する一方、Facebookは高齢層に、Xは限定的なリーチながら政治アクター・ジャーナリスト・高関与ユーザー間で重要性を保った。
報告書がSNS環境の総括として掲げる見出しは「不正ナラティブ、選挙機関への攻撃、協調的増幅がオンライン言説を形作った一方、公式の候補者発信はキャンペーン中心にとどまった」というものである。この対比――候補者公式アカウントの「抑制」と、その周囲を取り巻く情報エコシステムの「攻撃性」――が、報告書のSNS分析全体を貫く軸になっている。
まず「不正(fraude)」という語の言及頻度の推移が象徴的である。第一回投票期間(3月10日~4月19日)を通じ、この語の1日あたり言及数は投票日前まで二桁台(15日:26件、22日:117件、29日:21件など)で低迷していたが、投票日の4月12日に1,992件へ急増し、その数日後には7,931件でピークに達した後、4月19日には463件まで減衰した。これに対し決選投票期間(5月7日~6月6日)は、監視開始時点からすでに2,301件という高水準で始まり、その後も1,614件、1,958件、1,896件、1,280件と、数百から2千件超のレンジで高止まりを続けた。すなわち第一回投票では投票日を境にした単発的な急騰だったのに対し、決選投票では不正言説がキャンペーン開始時から持続的な言説の主軸の一つとして定着していたことになる。報告書はこの構造を「不正ナラティブが選挙をめぐるオンライン言説の主要な軸の一つであり続けたことを裏づける」と評している。
このナラティブの主要な発信源として名指しされているのがラファエル・ロペス=アリアガである。第一回投票直後、彼は選挙不正の物語を推進し、平均約5,000人の支持者を動員する「民主主義のための行進(Marchas for Democracy)」を組織した。リマにおける補充選挙の実施(総選挙の法枠組みでは想定されていない要求)、農村投票所票の無効化、選挙プロセスの国際監査を要求し、JNEとONPEに対する攻撃的・侮辱的言説、および対立候補の有権者層への差別的言説を続けた。決選投票期間も、不正ナラティブは主として同一のネットワークによって引き続き喚起・増幅され、ロペス=アリアガによるONPE・JNEへの非難と、5月14日のリマでの動員、Renovación Popular公式アカウントが不正関連コンテンツのピークを生成したことが確認されている。X上のトロール的アカウント群が不正主張、反左派メッセージ、決選投票二陣営双方への攻撃を増幅した。最終週には協調的な非有機的活動は減少したものの、不正関連コンテンツは各プラットフォームで持続し、決選投票そのものが「争われた正統性のもとで行われている」という枠組みを形成し続けた。
非有機的増幅の実証――william759という具体例
報告書の中でもとりわけ実証性が高いのが、Annex D第4節「不正ナラティブをめぐる協調的非有機的行動」で提示されるネットワーク分析である。SMMUはSentiOneのデータをGephiで分析し、2026年3月10日から4月19日の期間に「不正(fraude)」について5回以上投稿したXアカウントを抽出してメンションネットワークを構築した。結果として浮かび上がったのは、JNEとONPEが最も頻繁に標的とされた制度アクターであることに加え、他の公的機関、政治アクター、メディア関係者、国際的な参照対象も同一ネットワークに含まれるという構造だった。ネットワークは二つの関連するが異なるクラスターに分岐しており、一方はJNE・ONPEを中心とするペルー国内の選挙・国家機関に関する会話、もう一方は不正ナラティブをより広範な国際的政治言及やイデオロギー的アクターに結びつける会話だった。これは、不正主張がペルーの選挙管理の運営に対する批判にとどまらず、より広範な「制度的正統性そのものへの疑義」という政治的言説に組み込まれていたことを示している。
さらに分析は、協調的または非有機的な増幅と一致する反復的投稿パターンを特定した。ある一つのアカウントは、同一の不正主張を約60回、しばしば数秒間隔で、異なる制度・メディア・政治アカウントにタグ付けしながら投稿していた。報告書はこのアカウントを「william759(@william759)」として匿名化せずに実名(アカウント名)入りで例示し、実際の投稿内容――「リマでの不正の命令、投票資材を遅らせて配布し、農村部の投票袋を最小化する」という趣旨の同一文言が、宛先だけを変えて2026年4月12日22時35分から22時44分のわずか9分間に少なくとも8回以上繰り返される様子――をスクリーンショット付きで提示している。さらなる精査により、同様の頻度・反復性を示すアカウントが少なくとも35件確認され、選挙機関、メディア、政治的に特定の陣営に近いインフルエンサーを標的とする投稿パターンが共通していた。報告書はこれらのパターンを「不正ナラティブの可視性を人為的に高め、選挙プロセスに対する世論の認識を形作ろうとする試み」と結論づけている。
決選投票期間の言説ネットワークもこの構図を裏づける。第一回投票時の言説ネットワークが分散的で、ロペス=アリアガ、フジモリ、セサル・アクーニャ、ラ・レプブリカ、ONPE、複数の政治コメンテーターが横断的に高い相互作用を生んでいたのに対し、決選投票のネットワークはフジモリとサンチェスを中心に大きく集約された。しかし決選投票の言説全体は候補者本人の発信を単純に反映したものではなかった。メディアと影響力アカウントが引き続き高い可視性を保ち、ロペス=アリアガは決選投票の当事者でないにもかかわらず重要なアクターであり続けた。ネットワーク図に現れる大量の「赤い矢印」(ネガティブな言及)は両決選投票候補に向けられた強い敵対的トーンを表しており、同時にONPEとJNEの可視性が高まっていることは、第一回投票直後から続く不正ナラティブの重心化を反映している。両決選投票候補の公式アカウントの分析では、その発信内容は政治的・イデオロギー的な対立を反映しつつも、周辺で観測された制度への非正統化言説を再現してはいなかった――つまり公式候補者発信そのものは相対的に「抑制的」であり、不正ナラティブと制度攻撃は主として候補者の外側にあるアカウント群によって担われていたことになる。
攻撃的言説の的――女性候補と人種・階級の含意
決選投票期間の攻撃的コンテンツの分析(Annex D第5節)は、この言説の的が偏っていたことも明らかにする。5月7日から6月7日の間にFacebook、Instagram、X、TikTokで確認された攻撃的コンテンツ430件のうち、ロベルト・サンチェスが71.2パーセントと突出した標的となり、続いてケイコ・フジモリが20.9パーセント、ブリヒダ・クロが7.1パーセント、ミル・トーレスが0.5パーセントだった。サンチェスへの攻撃の大半は政治的属人化ではなく、反左派のレッテルや連想に基づいてフレーミングされていた。攻撃的コンテンツの内容分類では、政治的イデオロギーを理由とするものが65パーセントと大半を占め、その他が14パーセント、人種主義が9パーセント、階級主義とジェンダーに基づくものが残りを構成する。プラットフォーム別ではXがこの種の言説の主要な発信の場であり、確認された攻撃的投稿の圧倒的多数を占めた。ブリヒダ・クロへの攻撃の一部には人種主義的・階級主義的・エスニックナショナリズム的含意が含まれていたことも特記されている。この構図は、第10章で報告されている決選投票キャンペーン全体の傾向――ジェンダー・エスニシティ・社会階層に基づく人種差別・差別の事例が両陣営の言説に存在した一方、名誉毀損裁判所(Honour Tribunal、7月5日)とオンブズパーソン事務所(5月15日)の公的呼びかけを除き、こうした人種差別的・差別的で分極化したキャンペーン言説はペルーの国際公約に反して、権限ある国家当局によってほとんど対処されなかった――と符合する。
Metaにおける政治広告――第三者広告が決選投票の主役に
Meta広告のパターンは両ラウンドで様変わりした。第一回投票では、記録された広告支出の大半は政党・候補者本人によるもので、公式広告の主眼はキャンペーンの可視性、動員、政策メッセージにあった。総支出額はPEN 4,643,059(約EUR116万)で、内訳は政党65パーセント、候補者本人26パーセント、第三者9パーセントだった。政党別ではポデモス・ペルーがPEN 822,607で最大の支出主体となり、フエルサ・ポプラールがPEN 428,448、アリアンサ・パラ・エル・プログレソがPEN 306,891、パルティード・デモクラティコ・ソモス・ペルーがPEN 299,779、レノバシオン・ポプラールがPEN 219,061、パルティード・パイス・パラ・トドスがPEN 181,987と続いた。候補者個人の支出ではセサル・アクーニャ・ペラルタがPEN 997,143、ホセ・レオン・ルナ・ガルベスがPEN 676,848と突出しており、対照的に第一回投票の実質的な首位候補だったケイコ・フジモリ個人の広告支出はわずかPEN 8,201にとどまった――これはFuerza Popularが党として大部分の広告予算を担い、候補者個人ではなく組織単位で広告出稿していたことを示している。
決選投票では構図が一変する。総支出額はPEN 1,050,984へと縮小した一方、その内訳は政党28パーセント、候補者6パーセント、第三者65パーセントとなり、第三者による広告出稿がMeta上の政治広告支出の主要な源泉となった。第三者広告のうち支援広告はPEN 190,365にとどまったのに対し、攻撃広告はPEN 956,881――第三者支出全体の約83パーセントを占めた。この攻撃広告の大半はロベルト・サンチェス、Juntos por el Perú、より広く左派全体を標的とし、しばしば反共産主義・反社会主義的な語りを通じて展開された。報告書は、複数の第三者ページがキャンペーンアクターではなく報道・情報ページを自称していたこと、一部は選挙期間中に新設されたこと、一部が「ペルー国外から」運営されていたことも指摘している。これらの有料コンテンツは、とりわけ左派に対する扇動的・分極化的なメッセージを増幅し、しばしば感情的または警鐘的なフレーミングを用いて、オンラインキャンペーン環境の形成における第三者攻撃ページの役割拡大を裏づけた。
決選投票の政党・候補者レベルの広告支出データは、両陣営の資源格差をさらに鮮明にする。政党別ではフエルサ・ポプラールがPEN 283,310を支出したのに対し、Juntos por el PerúはわずかPEN 2,520――両者の差は100倍以上に達する。候補者個人レベルでもフジモリのPEN 49,568に対しサンチェスはPEN 1,280にとどまった。すなわち決選投票のMeta上の政治広告環境は、公式陣営による対称的な発信合戦ではなく、フジモリ側のわずかな公式広告と、サンチェス陣営を標的とする巨額の第三者攻撃広告という非対称な構図によって特徴づけられていたことになる。ONPEが公的資金によるSNS広告枠(franja electoral)を第一回投票でPEN 870万(全体の11パーセント、38組織に均等配分)から決選投票でPEN 8万8千(全体の0.8パーセント、2候補に均等配分)へと大幅に縮小したことも、この非対称性の一因である。加えて、2024年の制度改正でFacebook・Instagram・YouTubeへの公的資金アクセスがfranja electoralに組み込まれた一方、政治広告出稿数が急増していたTikTok(利用者1,900万人、若年層への影響力が特に強い)はこの公的枠組みの対象に含まれていない。公的資金による発信枠が実際の政治コンテンツ消費が集中するプラットフォームと一致していないという構造的なずれは、報告書が明示的に論じてはいないものの、上記の各データを重ねると浮かび上がる論点である。
ファクトチェックと制度的対応――ONPE・JNE・大学連携・市民ファクトチェッカー
情報操作への対抗策も報告書は具体的に記述している。選挙管理機関はSNS上での有権者情報発信・制度広報にFacebook、Instagram、TikTok、YouTube、Xを積極的に活用し、ONPEとJNEは選挙プロセスに関する虚偽の主張への反証発信でも高い活動性を見せ、自らのSNSアカウントで頻繁にデバンキング(debunk)投稿を行った。これを補完したのが、国連開発計画(UNDP)が支援するペルーの大学7校による共同監視イニシアチブで、キャンペーン期間全体を通じ、有害な言説・ヘイトスピーチ・偽情報を監視した。市民社会側のファクトチェック機関としては「PerúCheck」と、調査報道メディアOjoPúblicoが運営を主導するネットワーク「Ama Llulla」の名前が挙げられている。TikTokやYouTubeのような動画中心プラットフォームではインフルエンサー・コンテンツクリエイターが特に目立ち、公式アカウントを超えて政治的コンテンツのリーチを拡大する一方、政治的論評とキャンペーン宣伝、有料または協調的な発信の境界を曖昧にしていた。プラットフォームごとの透明性の水準の違いは、有料政治広告やオフィシャルチャンネル外で促進されるコンテンツの監視条件を不均一にしており、これが報告書の勧告「オンライン選挙広告への透明性強化――プラットフォームに対し、スポンサーと支出額を含む有料・プロモート選挙コンテンツの公開情報の維持を義務づけること」に直結している。決選投票に関する追加勧告としては、「有権者のデジタルリテラシーを高め、選挙関連情報を批判的に評価しSNS上で拡散される偽情報を識別する能力を強化するための、有権者教育イニシアチブの強化」が明記された。
なお、こうした制度的対応の実効性には限界がある。第一回投票キャンペーンでロペス=アリアガがプーノとアプリマックで暴力的攻撃に遭い、対立候補・ジャーナリスト・JNE/ONPE幹部への暴力的脅迫を発した際、いかなる国家機関も市民社会組織もこの暴力的・差別的言説を非難しなかった。JNE傘下の名誉法廷(Honour Tribunal)はポデモス・ペルー候補に対し、差別的・人種差別的・階級主義的言説を理由に警告を発し、暴力と差別のないキャンペーン環境を求めたが、その声明はほとんど影響を持たなかったと報告書は記す。選挙倫理協定(Electoral Ethics Pact)には競合する37組織中29が2025年12月に署名し、民主的原則の尊重と選挙結果の承認を誓約したが、注目すべきことに、ロペス=アリアガが率いる議会政党Renovación Popularはこの協定に署名していない。
選挙紛争における不正主張の帰結――申立ての大半は却下
不正ナラティブがオンライン上で拡散する一方、制度的な選挙紛争処理の場では、これらの主張は実質的な立証に至らなかった。第一回投票後には投票所無効化を求める申立てが202件、地区結果の無効化申立てが25件、選挙全体の無効化を求める申立てが325件記録されたが、大半は不受理(手数料未払い、申立人の当事者適格欠如、法定期限徒過)または実質不備(主張の精度不足、証拠不足)を理由に却下された。ロペス=アリアガ自身がシリアル番号900,000番台の全投票所(農村部のcentros pobladosに対応)の無効化を、ONPEにこれらの投票所を設置する権限がないとの主張のもとJNEに申し立てたが、証拠は一切提示されず、担当のパコアスマヨ選挙特別裁判所(JEE)は法定期限徒過と当事者適格の欠如を理由に却下、JNEも全会一致で控訴を棄却した。この裁定は、ロペス=アリアガの主張が繰り返しこれらの投票所の有権者を「無知で操作されやすい」と決めつけていた差別的側面を明確に指摘する内容だった。決選投票後には申立てがわずか13件に減少し、すべてがJEEレベルで却下されている。報告書は、この一連の申立ての「時機を逸し不適切な性質」が、選挙紛争制度とそのセーフガードの濫用に相当すると評価している。
報告書が示す構造――「抑制的な公式発信」と「攻撃的な周辺エコシステム」の分業
この報告書の分析全体を通観すると、ペルー2026年選挙のオンライン情報環境を特徴づけていたのは、単一の主体による組織的な偽情報キャンペーンというより、複数のアクター群が異なる役割を分担する形で機能する「分業構造」だったことが見えてくる。候補者本人および政党の公式アカウントは――報告書のネットワーク分析が繰り返し確認する通り――決選投票期間においても比較的キャンペーン中心・動員中心の発信にとどまり、制度への非正統化言説を自ら大々的に展開したわけではない。不正ナラティブと制度攻撃を主として担ったのは、ロペス=アリアガとその支持基盤、Renovación Popularの公式アカウント、william759のような反復投稿を行う個別アカウント群、そして第三者を装う攻撃広告ページという、公式候補者発信の外側に位置するレイヤーだった。
この構図は、情報操作の実証分析においてしばしば見落とされがちな点――「表の発信」と「周辺の増幅レイヤー」を切り分けて計測することの重要性――を具体的なデータで裏づけている。william759の事例は、単一アカウントによる高頻度・低品質な反復投稿(9分間で8回以上、異なる宛先への同一文言のタグ付け)がGephiのネットワーク分析で明確なパターンとして浮上することを示し、35件の類似アカウントの存在は、これが孤立した現象ではなく、ある程度組織だった増幅の試みだったことを示唆する。同時に、決選投票のMeta広告データが示す第三者攻撃広告の急増(第三者支出のシェアが9パーセントから65パーセントへ、金額としてはPEN 95万6千超)は、非有機的な言説増幅がオーガニックなSNS投稿だけでなく、有料広告インフラを通じても展開されていたことを示している。この二つのレイヤー――無償の反復投稿による可視性の人為的引き上げと、有料広告による標的型のネガティブメッセージング――が、同じ決選投票期間に並行して作動していた点は、報告書の個別データを重ね合わせて初めて見えてくる構造的知見である。
方法論上の留保も付記しておく必要がある。報告書自身が明記する通り、SMMUの監視は高エンゲージメント・高可視性のコンテンツを優先する設計であり、選挙関連SNS活動の完全な悉皆調査(census)としては読めない。プラットフォームの制約、削除された投稿、データアクセスの違いにより、把握された知見は「SMMUの手法によって識別された、最も可視的で関連性の高いオンラインダイナミクス」を反映するにすぎない。william759という一アカウントの事例や35という具体的な数字も、確認できた最低限の下限として理解すべきであり、実際の非有機的増幅の規模がこれを上回っている可能性は否定できない。それでもなお、本報告書が優れているのは、この限定を隠さずに明記した上で、発信者アカウント名・投稿時刻・具体的な広告支出額(PEN単位)といった検証可能な粒度でデータを提示している点にある。選挙不正をめぐる言説の「量」だけでなく、それがどのアクターによって、どのような時間的パターンで、どれだけの資金を投じて生成されたかを定量的に切り分けて見せたことが、この報告書をペルーの2026年選挙研究における一次資料として際立たせている。


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