ルーマニア大統領選挙をめぐる論争:TikTok、外国勢力、民主主義の揺らぎ

ルーマニア大統領選挙をめぐる論争:TikTok、外国勢力、民主主義の揺らぎ 情報操作

 2024年11月24日に実施されたルーマニア大統領選挙は、大きな混乱を招きました。極右候補のカリン・ジョルジェスク氏が第一回投票で予想外の勝利を収めましたが、憲法裁判所はこの結果を無効とし、第二回投票も中止しました。この決定は、外国勢力による干渉の可能性を理由に下されたもので、国内外からさまざまな意見が寄せられています。

 Bulgarian-Romanian Observatory of Digital Media(BROD)は、2024年12月11日に、この混乱の背景を探るためにFacebookでの議論を分析したレポート「BROD Observational Snapshot: Romanian Presidential Elections Controversy – The View from Facebook December 1-8th, 2024」を公開しました。


BRODレポートから見たFacebookの動向

 BRODレポートでは、2024年12月1日から8日におけるFacebookデータを分析し、ルーマニアの大統領選挙を巡る議論の主要な動向を明らかにしました。以下は、レポートに基づいた重要なポイントです。

選挙関連の議論と主要な日付

  • 12月3日
    ジョルジェスク氏の選挙運動に関する議論が急増。特にTikTokを利用した政治的な操作が注目されました。また、スポーツ選手ダビド・ポポヴィッチ氏による支持声明の偽情報が拡散し、619の反応を引き起こしました。この日は合計で6,198の閲覧数を記録し、大きな注目を集めました​。
  • 12月4日
    ジョルジェスク氏の選挙運動が犯罪組織とのつながりを持つとする議論が増加。この情報に関連する投稿では、多数の「怒り」リアクションが集まり、ルーマニアの選挙プロセスに対する信頼性が揺らぎました​。
  • 12月5日
    ルーマニア情報局が、ジョルジェスク氏支持のTikTokアカウントが2016年に作成されていたことを明らかにしました。この報告は選挙資金の合法性に疑問を投げかけ、外国からの資金提供の可能性についての懸念を引き起こしました​。
  • 12月7日
    ジョルジェスク氏の支持者が「カルト的」と見なされるような行動を示しているとの投稿が拡散。このような支持者の存在は、民主的議論に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されました​。

投稿内容と反応の概要

 レポートでは、期間中に465件の投稿が記録され、合計80,657の反応が集まりました。以下の感情が特に顕著でした:

  • 「怒り」リアクション
    外国からの干渉や犯罪的要素に関する投稿が多数の「怒り」リアクションを集めました。特に12月4日の投稿では、犯罪組織との関与が疑われる内容が話題となり、4,762件の「怒り」リアクションを記録しました​。
  • 「悲しい」リアクション
    民主主義の崩壊や選挙プロセスへの懸念を反映する投稿に対して多くの「悲しい」リアクションが見られました。総計で3,101件の「悲しい」リアクションが記録されました​。
  • 「ハハ」リアクション
    サティリカルな投稿や皮肉を含む内容には、「ハハ」リアクションが寄せられました。これには政治的な風刺や、ジョルジェスク氏のキャンペーン戦略を揶揄する投稿が含まれます​。

最も注目されたストーリー

 以下の投稿が特に多くの注目を集めました:

  1. マリウス・トゥカ・ショーへの出演
    ジョルジェスク氏が出演したライブショーに関する投稿が10,420の反応を得て、選挙に対する関心の高さを示しました​。
  2. 「カルト的支持者」に関する議論
    ジョルジェスク氏の支持者の一部が極端な支持を示すとの報告が9,979の反応を引き起こしました​。
  3. 外国干渉の警告
    ジョルジェスク氏のキャンペーンに外国勢力が関与している可能性を示唆する投稿が6,607の反応を集めました​。

ニュース報道からの補足情報

 ルーマニア情報当局が機密解除した文書によれば、2016年に「外国国家」によって作成された約800件のTikTokアカウントが、2024年11月に突然活発化し、ジョルジェスク氏を支持するコンテンツを拡散していたことが示されています。さらに、第1回投票の2週間前には、別の2万5000件のTikTokアカウントが同様に活発化していたとされています。これらの活動は、ロシアによる組織的なオンラインキャンペーンの一環である可能性が指摘されています。(BBC News

 ジョルジェスク氏だけでなく、対戦相手候補であるエレナ・ラスコニ氏も、選挙を無効にするという裁判所の決定を強く非難し、それは「違法で、不道徳で、民主主義の本質を粉砕する」と述べ、第2ラウンドを進めるべきだったと述べています。(AP News)


結論

 BRODレポートと外部情報は、ルーマニア大統領選挙を巡る議論がどれだけ複雑で多面的であるかを示しています。ソーシャルメディアを通じた情報操作や外国勢力の影響は、現代の民主主義における大きな課題となっています。今回のケースは、デジタル時代の選挙プロセスの透明性と公正性を確保する必要性を再認識させるものでした。

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