政府による偽情報 – 公的機関と権力の影響 (書籍「Disinformation, Misinformation, and Democracy」紹介第3回)

書籍『Disinformation, Misinformation, and Democracy』の紹介 論文紹介

 書籍Disinformation, Misinformation, and Democracy の紹介の第3回。本書のPart IIでは、政府が偽情報をどのように扱い、その影響を社会に与えるかを掘り下げています。この部分では、第4章と第5章を通じて、政府が権力を利用して偽情報を管理または拡散する方法と、それに伴う課題が明らかにされています。

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第4章: Communication of State Authorities: The Power of the Office

 この章では、政府や公的機関が持つ「権威」という特性を利用して、意図的または意図せずに偽情報を広める方法について議論されています。

  1. 政府のコミュニケーションの特徴
    • 公的機関は、その信頼性と権威をもって発信するため、情報の正確性が疑われにくい傾向があります。
    • しかし、その権力を使って、特定の政策や政治的目的を達成するために情報を操作する場合があります。
  2. 偽情報の拡散方法
    • 政府はソーシャルメディアや公式声明を通じて、選挙や政策に影響を与える偽情報を発信することがあります。
    • また、時にはデータを選択的に提示したり、誤解を招く表現を用いることも含まれます。
  3. 事例: 政府による情報操作の実例
    • 冷戦時代のプロパガンダ活動や、現代における特定政権の虚偽の経済指標発表が挙げられています。

第5章: Public Officials’ Lies and Their Effects on Disinformation

 公職者が発信する偽情報の影響について掘り下げた第5章では、次の点が強調されています:

  1. 公職者の影響力とそのリスク
    • 公職者は社会の信頼を受ける立場にあるため、その発言が広範囲に影響を与えます。
    • 意図的な虚偽発言は、公共政策の議論を歪めるだけでなく、市民の政府への信頼を大きく損なう可能性があります。
  2. 偽情報による社会的コスト
    • 医療分野での誤解を招く発言(例:COVID-19ワクチンに関するデマ)は、国民の健康に直接的な悪影響を与えることがあります。
    • また、選挙干渉や世論操作を通じて、民主主義の基盤を揺るがす可能性も指摘されています。
  3. 対策の必要性
    • 公職者の発言を客観的に監視するシステムの整備や、偽情報に対抗するファクトチェックの強化が提案されています。

政府による偽情報の課題と解決策

 本書は、政府による偽情報への対処が困難である理由を以下のように整理しています:

  • 規模と影響力の大きさ
    政府が行う偽情報キャンペーンは、資金力や権威を背景に、大規模で広範囲に影響を及ぼします。
  • 透明性の欠如
    情報操作は、政府の活動が公開されない場合に特に顕著になります。
  • 市民の認識不足
    市民が偽情報を見分けるリテラシーが不足していることが、問題を悪化させる要因となっています。

 これらの課題を解決するには、政府と市民社会の連携、ファクトチェック団体の強化、そして市民教育が不可欠であると提言されています。


 次回は、Part III: Regional Regulatory Approach to Disinformation: Europeに進み、ヨーロッパが採用している偽情報対策の枠組みを詳しく分析します。

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