Webs of Deceit:ブルガリアとルーマニアにおける情報操作ネットワーク

Webs of Deceit:ブルガリアとルーマニアにおける情報操作ネットワーク 情報操作

 2025年1月27日にブルガリアのシンクタンク Center for the Study of Democracy(CSD)が公開したロシアの情報戦がEUおよびNATO加盟国にどのように影響を与えているのかを詳細に分析した報告書「Webs of Deceit: Online Information Manipulation Networks in Bulgaria and Romania」。ブルガリアとルーマニアのオンラインメディアを対象に、プロクレムリンの情報操作がどのように広がっているのかを調査している。

ブルガリアにおける情報操作ネットワーク

 ブルガリアでは、親ロシア的なメディアが国内の情報エコシステムに深く組み込まれている。主要なプロクレムリン系メディアにはTrudBlitzPogled.infoがあり、これらはロシアの国営メディア(RIA Novosti、Tsargrad TVなど)からの翻訳記事を多数掲載し、親ロシア的なナラティブを拡散している。

 ニュースアグリゲーターのnovinii.comnovini247.comは、プロクレムリンメディアの記事を大量にリンクし、SEO(検索エンジン最適化)を操作することで、親ロシア的な情報が検索結果の上位に表示されるようになっている。

 また、公共放送 BNR(ブルガリア国営ラジオ)の一部の番組や、New Bulgarian Universityのような教育機関も、親ロシア的な情報発信に関与している事例が確認されている。BNRのラジオホストであるPetar Volginは、EUやNATOに対する批判的な発言を繰り返し、彼の番組内容はTrudやPogled.infoに頻繁に転載されている。

ルーマニアにおける情報操作ネットワーク

 ルーマニアでは、プロクレムリンの情報操作が特定の政治勢力と結びついている。主要なメディアとしてRomania TV(RTV)ActiveNewsSolidnews.ro60m.ro4media.infoが挙げられる。

 RTVはルーマニア国内で視聴率の高いテレビ局の一つだが、メディア規制当局(CNA)から多くの制裁を受けている。具体的には、ウクライナ戦争に関する偽情報や、少数民族の迫害といった虚偽の報道が問題視されている。

 60m.ro4media.infoは、民族主義政党AURと密接に関係し、選挙戦のプロパガンダメディアとして機能している。これらのメディアはAI生成の架空記者を使用し、フェイクニュースを発信している疑いがある。

 ActiveNewsとSolidnews.roは、アメリカの保守系陰謀論メディア(BreitbartThe Epoch Times)と連携し、欧米のナラティブに対抗する情報を拡散している。

 ルーマニアでは、ブルガリアとは異なり、親ロシア的なメディアは主流メディアとは距離を置いている。しかし、Facebook広告や政治キャンペーンと結びつくことで、影響力を維持している。特にAURは、Facebook広告に大規模な資金を投じ、60m.roや4media.infoを通じてプロクレムリンのナラティブを広めている。

主要なナラティブ

 ロシアがブルガリアとルーマニアで展開している偽情報は、いくつかの主要なナラティブに分類される。

  • シェンゲン協定加盟の危険性:「ブルガリアとルーマニアがシェンゲン協定に加盟すると、移民やテロリストの流入が増加する」といった主張。
  • ウクライナ産農産物の脅威:「ウクライナからの安価な農産物が地元の農業を破壊する」といったナラティブ。
  • ウクライナの領土分割:「ウクライナはロシア、ルーマニア、ポーランドに分割されるべき」とする主張。
  • ウクライナの少数民族の迫害:「ウクライナ政府がルーマニア系・ブルガリア系住民を弾圧している」との情報。
  • LGBTQ+の脅威:「LGBTQ+の価値観は西側が押し付けており、国家の伝統的価値を破壊する」との主張。

 これらのナラティブは、ブルガリアでは主流メディアを通じて広く拡散され、ルーマニアでは特定の政治勢力や陰謀論系メディアを通じて流布されている。

まとめ

 ブルガリアとルーマニアにおけるロシアの情報操作ネットワークは、それぞれ異なる方法で機能している。ブルガリアでは親ロシア的な情報が主流メディアに広く浸透しており、教育機関や公共放送とも結びついている。一方、ルーマニアでは、プロクレムリンの偽情報は特定の民族主義政党(AUR)や陰謀論系メディアと関連し、政治的プロパガンダの一環として利用されている。

 この報告書は、EUやNATO加盟国におけるロシアの情報戦略を理解する上で重要な資料となる。ブルガリアとルーマニアの事例は、偽情報がどのように拡散し、政治的影響を与えるかを示す典型的な例といえる。

コメント

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