地経学研究所によるレポート「偽情報と民主主義:連動する危機と罠」を読む

偽情報対策全般

 2024年の「選挙イヤー」は、世界中で重要な選挙が相次ぎ、偽情報が選挙の公正さにどのように影響を与えるかが改めて注目されました。このような背景を受けて、地経学研究所が2024年11月20日に発表したレポート「偽情報と民主主義:連動する危機と罠」は、偽情報が民主主義に及ぼす影響や、それへの対策を分析した内容となっています。


レポートの概要

1. 国際的な偽情報事例の分析

 このレポートでは、ハンガリー、米国、英国の3カ国を取り上げ、それぞれの国で偽情報がどのように拡散し、民主主義にどのような影響を与えているかを詳細に分析しています。

  • ハンガリーでは、政府によるメディア統制が偽情報の発信源となり、国内外に影響を及ぼしています。
  • 米国では、メディアや政府への不信感が偽情報の拡散を助長し、社会の分断を深めています。
  • 英国では、EU離脱を巡る「エンゲージメントの罠」が偽情報拡散の一因となっています。

2. 日本における偽情報と提言

 終章では、日本に焦点を当て、以下のような提言がなされています:

  1. 選挙期間や政治的危機での偽情報の危険性を認識
  2. 「エンゲージメントの罠」を逆手に取る対策
  3. 外国メディア情報の評価能力向上
  4. 災害時の偽情報対策の調整
  5. 官民連携による偽情報対策の体制構築

 これらの提言は、事実確認と体制整備を重視したものとなっています。


考察

 2024年11月17日の兵庫県知事選挙では、SNSを活用したナラティブ戦略が選挙結果に大きな影響を与えました。特に、「既得権益と戦う改革派」という斎藤元彦氏のナラティブは、多くの支持者を巻き込み、不確かな情報や意見と事実を巧妙に織り交ぜながら拡散されました。このような情報の影響力は、事実の正誤を検証するファクトチェックでは対応しきれない領域にあります。ファクトチェックセンターも、「検証可能な偽情報は多くなかった」と述べています。

 こうした多くの人が情報戦を体感した状況において、偽情報を「事実を歪めた情報」として捉える従来型のアプローチに基づくレポートの提言は、時代遅れに感じました。

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