欧州評議会が示す偽情報対策の包括的枠組み——10の構成要素による情報の健全性戦略

欧州評議会が示す偽情報対策の包括的枠組み——10の構成要素による情報の健全性戦略 偽情報対策全般

 欧州評議会のメディア・情報社会運営委員会が2025年12月4日に採択した政策文書「Resisting disinformation: 10 building blocks to strengthen information integrity」は、加盟国が偽情報に対抗し情報環境の健全性を回復するための戦略的枠組みを提示している。この文書は、欧州大学研究所メディア多元主義・メディア自由センターの研究者Konrad Beyeler-SimonとUrbano Reviglioが中心となって作成し、フランス通信社、ダブリン市立大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、欧州デジタルメディア観測所理事会メンバーなど11名の専門家による諮問プロセスを経て完成した。

 文書の特徴は、偽情報対策を単なる規制問題として扱わず、メディア環境、教育、選挙管理、デジタルインフラ、国際協力にまたがる構造的課題として位置づけている点にある。国連グローバルリスク報告書2024が偽情報を国家にとって最も深刻なリスクの一つに挙げ、多くの国が対応準備不足を認識している状況を背景に、この文書は欧州評議会の「欧州のための新しい民主的協定」の一環として位置づけられている。

偽情報の定義拡張と情報の健全性概念

 文書は従来の偽情報定義——「検証可能な虚偽・不正確・誤解を招く情報で、公衆を欺くことで害を与えたり経済的・政治的利益を追求するために意図的に作成・拡散されるもの」——を出発点としながら、より広範な「情報障害」の概念を採用している。この拡張には、情報操作、プロパガンダ、外国による情報操作・干渉が含まれる。重要な点は、有害な意図を欠くケースや明確な虚偽情報を含まないケースでも、情報の健全性を損なう可能性を認識していることだ。

 これに対応して、文書は「情報の健全性」という建設的概念を前面に押し出す。OECDの定義を援用し、情報の健全性を「正確で信頼性があり証拠に基づいた多元的な情報源へのアクセスを促進し、個人が多様な考えに触れ、情報に基づいた選択を行い、権利をよりよく行使できる情報環境の産物」と規定している。この概念的転換は、禁止・削除といった消極的アプローチから、情報環境全体の質を高める積極的アプローチへの重心移動を示している。

10の構成要素による建築メタファー

 文書は政策提言を「建物」のメタファーで整理している。屋根、5本の柱、4つの基礎原則という三層構造だ。

構成要素1:包括的国家戦略の必要性

 加盟国への質問票調査によれば、多くの国が断片的で反応的な措置に依存しており、構造化された対応を欠いている。文書は偽情報を「邪悪な問題」と位置づけ——つまり複雑で進化し続け、ニュース制作・配信、政府コミュニケーション、選挙管理、教育、国家安全保障、社会的結束政策など複数のセクターに影響する問題として——セクター横断的で定期的に更新される国家戦略の策定を求めている。

 この戦略には適切な人的・財政的・技術的資源の配分が不可欠とされる。文書が強調するのは、偽情報が既存の社会的脆弱性・不満・分断を悪用し、特に女性・少女、LGBTI、移民背景を持つ人々、マイノリティを標的とする点だ。さらに制度・メディア・ジャーナリスト・科学・学術界への不信を醸成し、健康や環境保護といった重要分野における公共理解と信頼を損なう。

 加盟国が懸念する新興脅威として、ディープフェイクとAI駆動の偽情報が挙げられている。これらは反応的・断片的アプローチをさらに悪化させる可能性があり、調整された横断的な定期更新戦略の必要性を裏づけている。

 具体例として、アイルランドの国家偽情報対策戦略が紹介されている。この戦略は政府省庁、独立規制機関、市民社会、学術界、研究機関、産業界の代表からなるマルチステークホルダー作業部会によって策定され、広範な市民からの意見聴取を経ている。同戦略は偽情報が「公衆衛生から民主制度への信頼まで、生活のあらゆる領域にわたって腐食的影響を及ぼす」ことを認識し、「横断的政策課題」として多数のアクターによる調整された行動を要求している。

構成要素2:偽情報研究とモニタリングの強化

 政策立案者は堅牢でタイムリーな学際的研究とデータへのアクセスを欠いており、これが国家戦略と対応の有効性を制限していると文書は指摘する。欧州では偽情報がどう機能し、実際にどう意見形成や民主的プロセスに影響するかについて、文脈特化的な研究が不足している。実時間モニタリングは短期的政策決定を導く洞察を提供できるが、根本原因・脅威の性質を理解し持続可能な解決策を特定するには、より深い長期的研究が必要だ。

 偽情報は社会的・心理的・技術的・地政学的要因によって形成される複雑で多次元的な現象であり、因果関係の特定は困難だ。堅牢な学際的・実験的研究とモニタリングなしには、政策は誤った情報に基づき、反応的で、逆効果になるリスクがある。

 オンライン空間は、虚偽・誤解を招くコンテンツの量・速度・拡散力、偽情報拡散者のネットワーク特性、デバンキング努力の到達度と有効性、特定のナラティブがどう注目を集め進化するかについて、データ収集の独自の機会を提供する。デジタルプラットフォームの絶えず変化する複雑な性質は、継続的モニタリングと、プラットフォーム技術がユーザー行動に与える影響についての因果仮説を検証する能力を要求する。

 勧告には、大学研究プログラム・市民社会への資金支援、進化する偽情報の増幅メカニズムを捉える実験的・縦断的研究枠組みの支援、研究倫理に従うことを条件にオンラインプラットフォームで研究を実施することを法的に可能にすること、メディア規制機関などの独立公的機関への技術的・方法論的ツールによる能力構築、偽情報政策を監視・評価するための体系的研究への投資が含まれる。

 EUのデジタルサービス法第40条は、EU加盟国に拠点を置く研究者に対し、プライバシー・機密性・プラットフォームセキュリティを保護する厳格な保護措置の下で、超大規模オンラインプラットフォームと検索エンジンからのデータアクセスを付与する、初の法的拘束力あるEU規定となった。

構成要素3:メディア・情報リテラシーとユーザーエンパワーメント

 欧州評議会加盟国の多くは、一貫した長期的なメディア・情報リテラシー戦略を欠いている。メディアリテラシー指標2023は、欧州の多くの国が情報課題への強靭性に欠陥を抱えていることを示している。MILだけで偽情報の有害な影響を個人と社会から排除することはできないが、個人が情報源を批判的に評価し、事実を検証し、操作的行動とナラティブを認識する能力を高める上で依然として鍵となる。

 MILは孤立した介入の成果ではなく、教育全体の質——特にデジタルリテラシー・デジタル市民性・歴史・市民教育における——と、制度・メディアへの公衆信頼のレベルによって深く形成される。メディアと情報の景観は絶えず進化しており、偽情報戦術と技術ツールも常に変化している。これは一度きりのスキル習得ではなく継続的学習を要求する。

 MILは事実ニュースと虚偽を識別する基本的能力を超え、偽情報アクターが用いる洗練された戦術——ソーシャルメディアプラットフォームが注意を引くために展開するアルゴリズム的・デザイン駆動の戦略を含む——に個人が耐える準備も必要だ。効果的なMILプログラムは、複数の教育分野から引き出し、多様な能力セットを育成し、デジタル公共圏における人権と責任の深い理解を促進する必要がある。

 オンラインコンテンツは、品質・ユーザー安全・公益よりもエンゲージメントと商業的利益を優先する不透明なアルゴリズムシステムによってますます形成されている。ユーザーは、デザインによるユーザーエンパワーメントを組み込んだデジタル環境からも恩恵を受けるべきだ——不要な素材にフラグを立てたり、信頼できる情報源からのコンテンツを優先したり、偽情報リスクを提起しうるコンテンツを特定する第三者ラベリングに依存できるようにすることで。

 スイスでは政治教育とデジタル教育が義務教育の全カリキュラムに含まれ、フィンランドの生涯学習重視はあらゆる年齢の市民をMIL取り組みに関与させる包括的モデルを提供している。

構成要素4:質の高いジャーナリズムの支援とメディア強靭性

 独立した質の高いメディアは健全な民主主義と情報の健全性保護に不可欠だ。正確で検証され文脈化された情報を提供することで、ジャーナリズムは個人が公的議論に参加し、情報に基づいた選択を行い、操作と偽情報に抵抗することを可能にする。しかし欧州全域の質の高いジャーナリズムは、財政的不安定性、政治的・経済的圧力、限られた資源、編集独立性と専門基準への不十分な保護措置といった、増大する構造的課題に直面している。

 インターネットの台頭と無料オンラインコンテンツの普及により、ジャーナリズムの伝統的ビジネスモデルは損なわれ、広告収入が侵食された。今日、この収入の多くは、オリジナルコンテンツを制作せずに情報の流れを支配する検索エンジンやソーシャルメディアプラットフォームといったデジタル仲介者に移行している。財政的脆弱性と弱体化した制度的保護措置はまた、メディアを「捕捉」——強力な政治的または商業的利益が編集決定に影響力を行使する——に対してより脆弱にしている。地方アウトレットは特にリスクが高く、多くの地域でコミュニティ問題の報道が消失し「ニュース砂漠」が生じている。

 オンラインでの偽情報の台頭は、情報の健全性維持における独立メディアの重要性をさらに浮き彫りにした。ファクトチェックは、誤解を招くナラティブと虚偽の主張の拡散に対抗し、ニュースと公共コミュニケーションへの信頼を高めることを目的とした、現代情報景観においてますます重要な役割を果たす新しい実践・専門職として浮上した。質の高いジャーナリズムの発見可能性を改善する並行努力——公益コンテンツの優先や信頼性指標の開発といった措置——は注目を集めてきた。

 イタリアでは、国が地方・全国・デジタル・印刷、新聞・定期刊行物を含む幅広いアウトレットを含むニュースメディア出版セクターを支援している。これらの資金へのアクセス基準は、情報の質と信頼性の基準を引き上げ、技術革新を促進し、ジャーナリストの人的資本を評価し、より持続可能で多様なメディア景観を育成することを目的としている。

構成要素5:選挙の健全性の保護

 偽情報が選挙プロセスに及ぼす影響は、欧州評議会加盟国全体で増大する懸念だ。しばしば外国による情報操作・干渉活動の文脈における偽情報キャンペーンを通じた選挙プロセスへの影響試行は広く文書化されている。欧州評議会議員会議は、外国干渉が欧州における民主的安全保障への脅威を構成することを明確に示し、特にロシア連邦を起源とする敵対的干渉の激化を非難している。

 オンラインプラットフォームと新技術は、悪意のあるアクターが虚偽または誤解を招くナラティブを伝播し、以前には不可能だった迅速さと広がりで公共情報を操作する新しくより影響力のある手段を可能にする。選挙報道と広告は印刷・放送メディアでは一般に比較的よく規制され保護されているため、デジタル環境、特にソーシャルメディアにおける監視と規制の欠如は懸念材料だ。政治家も他の利益団体もしばしば、明確な規則に従ったり、オンライン支出と戦術について十分に透明であることを求められない。

 AIは悪意のあるアクターがより効果的に視聴者を欺くことを可能にし、ターゲティングとマイクロターゲティングは個人と異なる人口統計グループにオーダーメイドのメッセージングを提供することを可能にする。EUの欧州対外行動庁は、複数の欧州評議会加盟国の選挙プロセスにおけるAI支援外国情報攻撃の兆候を特定している。

 2025年のBradshaw and others v. the United Kingdom判決で、欧州人権裁判所は、敵対的外国干渉が投票権の本質そのものを損なう現実のリスクを生み出す場合、国家は適切な措置を採択し定期的に見直す積極的義務を負う可能性があると判示した。

 フランスの2018年情報操作対抗法は、視聴覚規制当局の監督下でプラットフォームに透明性と協力義務を課し、主要選挙と国民投票前の3か月間の迅速トラック民事手続きを確立している。

構成要素6:デジタルエコシステムにおける競争と説明責任

 欧州評議会加盟国は非欧州デジタルインフラへの依存を抱えており、メディア多元主義、人権遵守、情報エコシステムに対する民主的コントロールを保証する能力を制限している。少数の非欧州支配的テック企業への現在の依存は、欧州がデジタルインフラをコントロールする能力を弱めている。

 大規模オンラインプラットフォームは、ユーザーに課す利用規約を通じて私的統治の一形態を行使し、プラットフォームがユーザーより有意に有利な立場にある構造的情報非対称性によって特徴づけられる契約関係を創出している。支配的地位とネットワーク効果により、大規模オンラインプラットフォームは消費者選択を損なっている。ユーザーエンゲージメントを優先し論争的コンテンツがより多くのユーザー活動を生み出すと仮定するプラットフォームのビジネスモデルは、低品質で潜在的に有害なコンテンツに優位性を与えている。

 鍵となる戦略は、相互運用性を促進し、異なるサービスが協働することを可能にし、より多様なデジタルインフラを支援することで、人々がプラットフォーム間を切り替えやすくすることだ。「オープンネットワークエコノミー」——ユーザーが少数の支配的プラットフォームが提供するものに依存するのではなく、自分のデジタル体験を構築できる分散型で相互運用可能なシステム——の台頭を通じて、パラダイムシフトが提唱されている。

 最も重要な新興イニシアティブの一つがEuroStackだ。EUとその加盟国を主な対象とするこのイニシアティブは、原材料と半導体生産からクラウドサービス、AI、ネットワーク、サイバーセキュリティまで、デジタルエコシステムの全ての本質的層を一つの調整された競争力のあるシステムに接続することで、欧州の技術的独立性を再構築することを目指している。

構成要素7:表現の自由の保護

 民主主義と情報を受け取る権利の保護には、国家が偽情報の課題に対処することが求められる。しかし偽情報への対応は表現の自由を制限する措置を含む可能性がある。欧州人権裁判所が警告したように、「偽情報の危険に対処することと完全な検閲の間には非常に細い線がある」。

 情報の健全性や民主的プロセスにリスクをもたらす可能性のあるナラティブは、しばしば公共の利益に関する問題に関わり、政治的言説の一部を形成している。したがって、コンテンツが情報障害に寄与する可能性があるという理由のみで制限を正当化する余地は必然的に狭い。

 欧州評議会加盟国の法的枠組みの調査は、虚偽または誤解を招く情報の拡散が他の犯罪と結びついている場合に刑事的に関連しうることを示している一方、一部の法域では虚偽情報の拡散そのものを犯罪化するより広範な規定が存在する。しかし偽情報に対抗するために刑法に依拠することは重大なリスクを伴う。訴追は誤用される可能性があり、特に犯罪が曖昧に定義されているか適切な保護措置を欠いている場合だ。

 虚偽の疑いを理由にコンテンツを制限する措置は、表現の自由への明確なリスクを伴う。こうした介入は陰謀ナラティブと偽情報アクターによる犠牲化の主張を煽り、分極化を深め、民主制度への信頼を侵食する可能性がある。過度に厳格または曖昧に枠組まれた規則は、マイノリティの見解や正当な批判を抑圧するために誤用され、萎縮効果をもたらしうる。

 これらの考慮は、表現の自由に過度に干渉することなく偽情報に対抗する強靭性構築措置を優先する必要性を示唆している。

 ロシアの全面侵攻後に異例の曝露に直面したモルドバ共和国は、民主的安全保障と情報空間の健全性を保護しながら、人権と法の支配を支持する適切な措置をとるという課題に直面してきた。同国は欧州人権条約の下で逸脱通知を提出し、その行動を透明な精査に服させ、欧州評議会を含む国際組織との協力と専門家助言を一貫して求めてきた。

構成要素8:国際協力と越境協力

 偽情報は国境を越える現象であり、どの加盟国も単独で効果的に対処できない。今日のデジタル時代において、誤解を招くコンテンツとナラティブは国境を容易に越えて拡散でき、特に言語的・文化的・歴史的つながりが存在する場合に重大なスピルオーバー効果を生み出す。複数の文化的文脈に精通した悪意のあるコンテンツ作成者は、これらのナラティブを地元住民向けに調整し、その影響と共鳴を増幅できる。

 課題の範囲と複雑性を考えると、欧州評議会加盟国間の協力も偽情報への効果的対処と情報の健全性構築にとって決定的だ。効果的な対応は、慎重に調整された国内政策を超え、国家措置の一貫性、データと専門知識の共有、人権と法の支配に根ざした共通基準の開発に焦点を当てなければならない。

 EUは国境を越えた偽情報に対処する政策の開発で最前線に立ち、欧州理事会は強靭性強化とハイブリッド脅威対抗に関する水平作業部会を設置した。NATOの戦略的コミュニケーション・センター・オブ・エクセレンスは、NATO加盟国間での専門知識・資源・ベストプラクティスの交流を促進している。欧州評議会レベルでは、2025年から2030年まで実施されるプロジェクト「RESIST:欧州における偽情報への社会的強靭性の強化」が、加盟国の包括的アプローチ開発と国境を越えた協調深化を支援する。

構成要素9:マルチステークホルダーの相乗効果

 特にデジタル空間における偽情報の増大する課題は、人権を尊重する長期的で包括的で効果的な対応を保証するための調整された分野横断的努力を要求する。偽情報はメディアチャネルと国境を越えて急速に拡散し、公共言説と信頼に影響する。偽情報への対応が堅牢で持続可能であるためには、政府・テックプラットフォーム・市民社会・学術界・その他のステークホルダーが政策の設計と実施において協力することが不可欠だ。

 多くの欧州評議会加盟国は依然として、ステークホルダーエンゲージメントのための構造化された包括的メカニズムを欠いており、説明責任のギャップと偽情報への不均等な対応につながっている。プラットフォームは、ステークホルダーといつどう関与するかについて重要な裁量を保持していることが多く、結果として拘束力がないか不十分に影響力のある協議につながっている。

 近年、市民社会・メディア・テック企業・政策立案者を含む幅広いステークホルダー間の協調を強化するため、EUとグローバルレベルの両方でいくつかの新しい組織が創設された。欧州デジタルメディア観測所は、学術界・ファクトチェック組織・メディアリテラシーコミュニティ・政策研究からの専門家を集め、データアクセスの形成、研究インフラの促進、メディアリテラシー措置とファクトチェックの拡大において決定的役割を果たしてきた。

 国家レベルでは、2023年2月にアイルランドが国家偽情報対策戦略を開発するマルチステークホルダー作業部会を設置した。イタリアの国家サイバーセキュリティ戦略2022-2026は、オンライン偽情報を予防・対抗するための政府機関間の協調メカニズムを確立している。

構成要素10:制度とメディアへの長期的信頼の構築

 多くの欧州評議会加盟国において、メディアと制度への公衆信頼の低下は社会的強靭性と民主的正統性を損なっている。欧州全域でメディアへの信頼は一般に低く、政府・医療システム・法執行への信頼も近年着実に低下してきた。この信頼の侵食は社会の全セグメントに影響する。偽情報と情報操作は問題を悪化させ、信頼をさらに損ない、分極化を促進し、社会的強靭性を弱める。

 民主制度・メディア・科学への信頼回復には、懐疑主義と離脱を煽る根底にある社会的・経済的・政治的要因への対処が求められる。これは構造的不平等を減らし、不信の文化的推進力に対処し、透明性を育成し、包括的で信頼できる情報エコシステムを促進する全体論的で証拠に基づく戦略を求める。

 高品質な実証研究は、信頼低下または増加の根本原因を特定し、介入の有効性を評価し、偽情報に対抗する証拠に基づく戦略を導く上で不可欠だ。ソーシャルメディアやその他のオンラインプラットフォームは、信頼を再構築するツールとして活用できる——たとえば「向社会的デザイン」や「架橋アルゴリズム」を通じて、肯定的エンゲージメントと多様な視点への曝露を奨励し、社会的結束を育成する。

 アイルランドでは、「選挙スマート」キャンペーンと有権者登録努力が、選挙期間中に市民が信頼できる情報を特定するのを助けている。ノルウェーは、COVID-19パンデミック中のオープンな政府コミュニケーションで称賛され、市民がデータを理解することを可能にし、提案された措置への批判と異議に関与し、社会を対話に巻き込んだ。

評価と展望

 この文書の重要性は、偽情報対策を技術的・規制的問題に矮小化せず、民主社会の情報環境全体の質的改善という包括的課題として位置づけた点にある。メディアリテラシー指標2023が示す欧州の多くの国における強靭性欠如、ユーロスタットが繰り返し明らかにする不十分なデジタルスキル保持者の高い割合、そしてメディア多元主義監視2025が記録する断片的国家対応——これらの実証データは、構造化された長期的戦略の必要性を裏づけている。

 文書が提示する10の構成要素は、相互依存的な関係にある。研究とモニタリングなしには証拠に基づく政策は不可能であり、メディアリテラシーと質の高いジャーナリズムなしには情報環境の質的改善は望めない。選挙の健全性保護とデジタル競争促進は相互に補完し、これら全てが表現の自由、国際協力、マルチステークホルダー参加、長期的信頼構築という基礎原則の上に成り立つ。

 特に注目すべきは、文書が刑法の使用に慎重な姿勢を示している点だ。ベニス委員会のトルコ刑法改正案に関する緊急共同意見や、欧州人権裁判所のBradshaw判決が示すように、虚偽情報の拡散を刑事罰で対処することは表現の自由への深刻な脅威となりうる。文書は代わりに、教育・能力構築・透明性・独立監視といった「肯定的アプローチ」を優先している。

 加盟国への質問票調査が明らかにした深刻な課題——AI駆動の偽情報とディープフェイクへの懸念、構造化された対応の欠如、不十分なリソース配分——は、この文書が単なる理想論ではなく、現実の政策ギャップに対応した実践的枠組みであることを示している。アイルランド・ノルウェー・ラトビアの国家戦略、フランスの2018年情報操作対抗法、モルドバの取り組み、EUのデジタルサービス法第40条といった具体例は、これらの構成要素が実装可能であることを実証している。

 しかし文書が認めるように、「情報の健全性は共通の課題に直面しているが、これらは異なる地域文脈において異なる強度・形態・緊急性をとりうる」。一律の解決策は存在しない。各国は自国の情報環境の特性、メディアシステムの成熟度、市民社会の能力、デジタルインフラの依存度を評価し、優先順位を設定する必要がある。

 最終的に、この文書は偽情報を「邪悪な問題」として認識しながらも、人権・法の支配・民主的価値に根ざした体系的対応の可能性を示している。情報の健全性への投資は、情報障害の長期的コストを大きく下回る——この認識が、欧州評議会加盟国の政策転換を促す起点となることが期待される。

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