LogicallyとEU DisinfoLabは2025年6月、欧州3カ国における気候関連偽情報の比較研究「HEAT(Harmful Environmental Agendas & Tactics)」の報告書を公開した。本稿で扱うのは、その数カ月後に公開された事後反省報告書(Post-Project Reflection Report)である。この文書が注目に値するのは、単なる成果報告ではなく、報告書公開後の言説の持続と変容、研究成果の波及経路、そして比較研究の実務的困難までを率直に記録している点にある。欧州メディア情報基金(EMIF)の支援を受けたこのプロジェクトは、フランス、ドイツ、オランダという異なる政治文化を持つ3カ国で、気候科学への懐疑論、政策への反発、陰謀論的解釈がどのように交差し持続するかを追跡した。
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分析枠組みと方法:Four Pillarsモデルの実践
HEATプロジェクトの中核にあるのは、Logicallyが開発した「Four Pillars」モデルである。この枠組みは、言説の中心的テーマと主張を特定するNarrative Pillar、アクターの動機(イデオロギー的、政治的、経済的、機会主義的)を検討するIntent Pillar、拡散アクターの組織的影響力とプラットフォーム横断的活動を評価するCapability Pillar、そして社会的・政治的効果の可能性を検討するImpact Pillarの4つから構成される。この枠組みは個々の偽情報クレームを列挙するのではなく、言説の構造、機能、潜在的影響力を比較可能な形で記述することを可能にする。
データ収集は、主要ソーシャルメディアプラットフォーム、代替的コミュニケーションチャネル、オンラインコミュニティ、デジタルニュース環境を横断して実施された。オープンソースインテリジェンス技術、高活動アカウントの継続的モニタリング、テーマ検索を組み合わせ、持続的なエンゲージメント、反復するモチーフ、プラットフォーム横断的な複製の兆候を示すコンテンツを優先的に収集した。ただし報告書は、プラットフォームの可視性変化、コンテンツモデレーション政策の進化、クローズドコミュニティの存在が資料の入手可能性に影響を与えたことを率直に認めている。
元の報告書が示した構造:国別の特徴
元のHEAT報告書の主要な洞察は、気候関連の誤導的・陰謀論的言説が3カ国すべてにおいて情報環境の首尾一貫した持続的な部分を形成しているという点にあった。科学的懐疑論と政治的メッセージングの融合が顕著で、気候変動の存在や深刻度を疑問視する言説は、環境政策が操作的、強制的、または隠された意図の一部であるという広範な主張としばしば共存していた。
フランスでは、長年にわたる国家機関への不信が、環境政策を政治的敵対性や社会不安のレンズを通じて解釈する環境を創出していた。気候規制が労働者階級家庭に不釣り合いな害を与えるという主張は、ガバナンスと社会的不平等に関するより広範な議論の文脈で反復された。ドイツでは、経済的懸念、特にエネルギーコスト、産業競争力、家計の財政的圧力が、環境措置を実現不可能または不公平なものとして位置づける言説の開口部を創出した。気候政策をイデオロギー的プロジェクトとして枠づける議論は、規制が伝統的産業または特定地域を不利にするという主張と結びついた。オランダでは、農業、土地利用、農村コミュニティと政府機関との関係に関する議論が言説を支配した。窒素規制や農業改革に関する主張は、国家アイデンティティ、食料安全保障、政策立案者と農村住民との断絶に関する議論と頻繁に結びついた。
報告書公開後の言説持続:消えない構造
報告書の事後分析が明らかにしたのは、これらの言説パターンが公開後も減少せず、むしろ政治的イベント、季節サイクル、国際的発展に応じて適応し再浮上したという事実である。
フランスでは、極端な暑さや嵐の活動期間中に、気候操作またはエンジニアリングされた気象イベントに関する言説が再浮上した。そのような主張は支配的ではなかったが、その反復的出現は、環境イベントの陰謀論的解釈が特定のオンラインコミュニティ内で共鳴し続けていることを示した。抗議活動や政策発表といった政治的活動が高まる期間中、環境政策を侵入的または公共のニーズと不整合なものとして枠づける議論は追加的な可視性を獲得した。フランスのデジタルエコシステムはまた、英語圏の陰謀ネットワークから気候行動を調整されたグローバルアジェンダの一部として枠づける言説が流入する証拠を示し、これらは主権、国家の正当性、社会正義のレンズを通じた環境問題の解釈に寄与した。
ドイツでは、科学機関と環境組織への不信を含む言説が、気候科学への懐疑論と政治エリートへのより広範な批判を組み合わせるオンラインコミュニティ内で活発に保たれた。国際的な気候コミットメントに関する議論は国家自治への制約として描かれ、欧州またはグローバルガバナンス構造を疑いを持って見るグループにとって焦点となった。エネルギーコストと産業競争力への懸念は継続し、環境措置の実現可能性または公平性を疑問視する言説の開口部を提供し続けた。
オランダでは、窒素規制、農業改革、政治家による公的コメントを取り巻く問題に対応して言説活動が激化した。環境措置が農業の実行可能性を脅かすという主張はオンライン言説の中心に残り、国家アイデンティティ、食料安全保障、政策立案者と農村住民との認識された断絶に関する議論と結びついた。気象操作とジオエンジニアリングに関連する言説も、異常な気象パターンの期間中に定期的に再浮上し、国際的な陰謀テーマが地域の文脈に適応される様子を示した。
この持続性が示すのは、有害な環境言説が制度的不信、政治的不満、経済的・社会的変化に関する懸念という、気候政策自体を超えて広がる深い社会的亀裂から強さを引き出しているという構造的現実である。報告書が明示的に指摘するように、「有害な環境言説は孤立して理解することはできず、政治的発展、新興イベント、公共的不安の瞬間に容易に適応する長期的な言説パターンの一部である」。
研究成果の波及:ニュースレターから国連へ
報告書の普及は、プロジェクトパートナーによる体系的努力と外部組織からの自発的注目の両方を通じて展開した。EU DisinfoLabは2025年6月、7月、10月の複数号のDisinfo Updateニュースレターで発見を強調し、これは研究者、ジャーナリスト、市民社会組織、政策立案者を含む1万人以上の購読者に到達した。公開ウェビナー「HEAT Is Rising」は99名が登録し62名がライブ参加、その録画は11月までに114回視聴された。10月のリュブリャナでの年次会議では、600人以上の反偽情報コミュニティのメンバーの前で「The Usual Suspects: Climate Edition」セッションが開催され、約120名が参加した。
外部組織からの注目も多様な領域に及んだ。Media and Learning Associationは報告書を環境偽情報への懸念の中で文脈化する記事を公開し、フランスのUP’ Magazineは気候陰謀言説の議論の中でHEATの分析を参照した。CheckFirstは7月のニュースレターで調査とウェビナーを必読として強調し、Civitates Foundationも7月のニュースレターに報告書を含め、情報の整合性を強化する欧州の努力への貢献として特定した。オタワ大学のInformation Integrity Labは気候コミュニケーションレビューでプロジェクトを参照し、デジタルエコシステムが環境問題の公共的理解をどのように形作るかを調査した。
しかし最も注目すべき展開は、Logicallyが2025年8月、国連気候サミットの高レベルSolutions Dialogueに招待されたことである。この対話は、世界気象機関(WMO)、国連防災リスク削減事務所、国際赤十字・赤新月社連盟、その他のパートナーによって招集され、早期警報システムと極端な暑さソリューションの改善に焦点を当てた。データ共有、信頼、科学に基づく行動の重要性を強調するこの場へのLogicallyの参加は、HEATプロジェクトの分析的貢献がグローバルガバナンスの議論において認識されたことを示し、環境言説の理解が高レベル政策枠組みをどのように知らせることができるかを具体的に例証した。この経路――1万人のニュースレター購読者から始まり、数十回のウェビナー視聴、600人規模の会議発表を経て、最終的に国連の政策対話に到達する――は、専門的な偽情報研究が実際の政策議論に届く可能性を示す事例となった。
比較研究の実務的困難:流動性と組織間連携
報告書が率直に記録する方法論的課題は、偽情報研究の構造的困難を浮き彫りにする。第一に、気候関連偽情報の高度な適応性が分析を複雑にした。初期研究期間中に現れた言説は公開後も変化し続け、この流動性は「有害な環境言説を固定された実体として捉えることができず、動的なプロセスの一部として理解されなければならない」ことを明らかにした。持続的な監視努力の必要性と、絶え間ない動きの中にある言説環境の境界を定義する困難が強調された。
第二に、データ収集をめぐる実務的制約が存在した。プラットフォームの可視性の変化、進化するコンテンツモデレーション政策、クローズドまたは半クローズドのオンラインコミュニティの存在が、関連資料の入手可能性に直接的に影響を与えた。報告書は、「これらの要因は分析の範囲を形作り、それ自体が流動的で時には不透明なデジタル空間における偽情報研究の固有の限界を示した」と認めている。この経験は、オープンソースインテリジェンス技術と質的判断を組み合わせてこれらの制約をナビゲートする価値を再確認した。
第三に、国別の文脈的差異が比較分析に挑戦を提示した。フランス、ドイツ、オランダはそれぞれ、政治文化、メディア構造、公共的議論によって形作られた独特の言説パターンを示した。比較作業の実施には、一貫した方法論的アプローチと各国の文脈的特徴への感受性のバランスをとることが必要で、「分析的柔軟性を維持し、意味のある国内エコシステム間の差異を不明瞭にする可能性のある硬直的な枠組みを避けることの重要性」が強調された。
第四に、組織間連携の実務的調整が課題となった。LogicallyとEU DisinfoLab間のチームの調整には、分析基準、運用プロセス、発見の解釈に関する継続的なコミュニケーションが必要だった。報告書は、「パートナーシップは研究の全体的な質を強化したが、プロジェクトタイムライン早期に共有された枠組みを確立することの重要性も明らかにした」と述べ、方法論と報告に関する共通の期待を発展させることが、より効果的な協働を促進し、発見が統一された理解を反映することを保証したと結論づけている。
構造的洞察:偽情報研究が直面する現実
HEATプロジェクトの事後報告書が提供する最も重要な洞察は、環境偽情報研究が直面する構造的現実に関するものである。報告書を公開しても言説は消えず、むしろ適応し再浮上する。その理由は、これらの言説が気候政策への単純な誤解ではなく、制度的不信、政治的不満、経済的・社会的不安という深い社会的亀裂に根ざしているからである。
報告書は、「環境偽情報に対抗するには、言説の共鳴を支持するより広範な構造的要因の理解が必要である」と明示的に述べる。政治コミュニケーション、社会学、デジタルメディア研究からの洞察が、特定の言説がなぜ牽引力を獲得し、どのように公共の会話に埋め込まれるかを説明するのに不可欠であり、「効果的な研究は言説の内容だけでなく、それらが循環する社会的文脈も考慮しなければならない」。
同時に、この研究は小規模なプロジェクトでも、適切な普及戦略と外部組織による自発的な知見の活用があれば、国際的な政策対話にまで到達しうることを示した。1万人のニュースレター購読者から国連気候サミットへという経路は、専門的な偽情報研究が実際の政策議論に影響を与える可能性を具体的に例証している。
HEATプロジェクトの事後報告書は、研究成果の評価というよりも、偽情報研究という営みそのものが直面する構造的困難と可能性を率直に記録した文書として読むべきものである。報告書を出しても言説は消えない。しかし研究は確実に届き、使われる。この両義的な現実こそが、気候偽情報研究の現在地を示している。

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