「The Nexus Between Online Radicalisation and Disinformation in the Western Balkans(西バルカンにおけるオンライン過激化と偽情報の連関)」は、EUの資金拠出による過激化防止支援機構「EU Knowledge Hub on Prevention of Radicalisation(EUKH)」の西バルカン活動部門が2026年7月16日に公表した会合結論文書である。著者はIoannis Armakolas(EUKHシニア研究員・リサーチコーディネーター)とBledar Feta(EUKH主任P/CVE専門家、第3専門部会「新技術とオンライン領域」事務局)。基になったのは2025年9月11〜12日にボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボで開催された「オンライン過激化と偽情報に関するアドホック会合」で、EUKHが同地域で開いた2回目の会合にあたる。文書自体は独立した実証調査ではなく、政策担当者・研究者・国家機関・市民社会関係者を集めた会合での議論を集約した結論文書であり、記述の多くは「参加者は指摘した」という形で会合参加者の見解を反映したものである点に留意が必要である。会合は4セッションで構成され、若者を標的とした過激化の変質、暴力的過激主義の防止と対策(P/CVE)の国家的枠組みへのオンライン領域の統合とデジタルサービス法(DSA: Digital Services Act)およびテロコンテンツオンライン規則(TCO Regulation)との整合、AIの倫理的活用や信頼できる通報制度を含む安全なデジタル環境の構築、政策・体制・協力に関する分科会形式の議論を順に扱った。日本の警察庁国際テロ対策課の代表団がEUのアジア地域安全保障協力強化プログラム「ESIWA+」の視察の一環として参加し、ゲーミング領域のリスクをEU・西バルカン・日本が共有しているとの認識が示された。
オンライン過激化のハイブリッド化
会合の中心的な結論の一つは、西バルカンで急速に根を張りつつある新しいハイブリッド型のオンライン過激化を子どもが標的にされている実態とともに確認したことである。従来型の過激主義と異なり、今日の過激化は断片的で日常のデジタル文化に埋め込まれた形で進行する。特定の民族や社会集団を揶揄するミーム、短い動画、暴力を美化する投稿、あるいは偽情報や陰謀論を拡散するユーモラスな投稿から始まることが多く、近年はマフィアやギャングを反体制的なアイコンとして描きその犯罪行為を権力・地位・反抗の象徴としてロマン化する傾向も強まっている。こうしたメッセージは音楽、ゲーム関連の言及、インフルエンサーのコンテンツ、ポップカルチャーを通じて意図的に加工され、脅威ではなく身近なものとして受け止められるよう設計されている。過激主義的コンテンツはエンターテインメントに偽装され、未解決の不満やアイデンティティに基づく苛立ちに訴えかけ、アルゴリズムとインフルエンサーによって増幅されニッチなフォーラムをはるかに超えた層に到達する。参加者は、地域の機関にこうしたコンテンツへ効果的に対応する能力が不足していることも認めた。とりわけ未成年者がこうしたコンテンツを消費する場合、専門的な少年司法制度の限界とインターネット上の年齢確認プロトコルの欠如が問題を複雑化させている。議論では4つの重要な懸念領域が特定された。第一に、ソーシャルネットワーク、分散型プラットフォーム、新興メディアを通じた過激化と勧誘。第二に、過激主義的メッセージの自動化・増幅への人工知能の悪用で、AI生成のプロパガンダやディープフェイクが公共の言説を歪める可能性を含む。第三に、組織犯罪とテロの結節点の拡大で、不正なネットワークが人・武器・イデオロギーの国境を越えた移動を促進している構図。第四に、暗号資産を通じたテロ資金供与で、匿名かつ追跡困難な取引が従来の監督メカニズムを回避する問題である。参加者は、西バルカンのためのテロ防止・対策に関する新たな共同行動計画において、オンライン過激化が5つの戦略的優先事項の一つに含まれたことを歓迎した。
エコーチェンバーと世代別の脆弱性
会合で指摘された重要な懸念の一つは、アイデンティティに基づく不満を過激化の感情的な引き金として戦略的に利用する動きである。西バルカンでは1990年代の未解決のトラウマ、民族間の緊張、制度への不信がオンライン上で繰り返し再生産されており、過激主義的な行為者はこうした断層線を利用して相互的な過激化のサイクルを助長している。ソーシャルメディアの情報バブルはこの力学を強化し、とりわけ一方的で感情を煽るコンテンツに晒される若年ユーザーの間で顕著である。自らの民族的・宗教的アイデンティティを標的とする敵対的な言説への反復的な接触は、脅威・孤立・脆弱性の感覚を醸成し過激化の温床を作り出す。特筆すべきは問題が若年層に限定されない点である。西欧で観察されるパターンと異なり、既存の研究によれば西バルカンで最も影響を受けている層の一つは40代・50代の男性であり、紛争当時に子どもや思春期であった世代で、戦争にまつわるトラウマと民族的分断によって形成年齢を過ごした人々である。この層は、未解決の不満を再燃させ集団間の不信を深める分極的な言説に対して特に脆弱なままである。参加者が示した対応策はエコーチェンバーの解体と感情的脆弱性への対処を通じた強靭性の構築であり、一般市民のデジタルリテラシー強化を出発点として、教育省や青少年機関が主導するプログラムは若者だけでなく40代・50代の男性を含む中高年層にも焦点を当てるべきだとされた。メディア規制機関とテック企業には現地語でのモデレーション強化とエンターテインメントに偽装された過激主義的素材の摘発が、市民社会には民族・宗教の分断を橋渡しする対抗言説の作成支援が、治安機関にはプラットフォーム横断的な監視能力の強化が、EU Knowledge Hubを含む国際的パートナーには技術支援と継続的な制度的支援が求められた。
アルゴリズム増幅とプラットフォーム別の戦術
サラエボ会合が示した重要な知見の一つは、テロ・暴力的過激主義コンテンツへの接触を加速させるアルゴリズムの役割である。ソーシャルメディアプラットフォームはエンゲージメントを報酬とする設計になっており、感情を煽る投稿、白黒二元論的な言説、陰謀論を優先的に表示する傾向がある。西バルカンではこの力学が特に危険で、挑発的なコンテンツへの一度の接触が急速なエスカレーションを引き起こし、ユーザーは自覚のないまま次第に過激な素材を提示され続ける。これにより不満や誤情報が強化されるフィードバックループが生まれ、とりわけ若年ユーザーにおいて分極的な言説への積極的な没入につながる。参加者は、プラットフォームに対してアルゴリズム設計とコンテンツ推薦システムの透明性を直接求め、EU基準の下での説明責任、現地語でのモデレーション改善、地域でほぼ皆無であるアルゴリズムの影響に関する独立した研究の支援を要請した。会合はまた、プラットフォームごとに異なる過激主義的行為者の戦術も指摘した。Instagramは、フットボールの熱狂的サポーター集団「ウルトラス」に結びついたミームなど拡散の速い美的コンテンツを中心とする。TikTokは人気の楽曲に乗せた短い感情喚起型の動画を好み、YouTubeは長尺のイデオロギー的素材を掲載し、TelegramとDiscordは暴力の扇動を含む過激なコンテンツを流通させる暗号化された空間として機能する。これらは層状の生態系を形成しユーザーを段階的により過激な言説へと導くため、参加者は各プラットフォームの構造、モデレーション能力、ユーザー行動様式に着目した機能別の分類法に基づくプラットフォームごとのリスク評価枠組みの構築を結論づけた。
AI・チャットボットのリスクと対応
参加者は、西バルカンにおけるAIガバナンスの未整備に対処する必要性を、オンライン過激化・偽情報への悪用が拡大している現状を踏まえて強調した。特に懸念されているのは過激主義的メッセージの自動化へのAI活用で、公共の言説を歪め信頼を損なうディープフェイクやプロパガンダを含む。未成年者が感情的に応答し信頼できるデジタルコンパニオンとして認識されがちなAIチャットボットと関わることへの警戒も高まっており、こうした関係は若年ユーザーの信念や意思決定を形作り、脆弱なケースでは適切な保護措置のないまま武器の使用方法や暴力行為の組織化に関する指南など有害なコンテンツへの接触につながる可能性がある。参加者は、EUがAIに関する初の国際的な法的枠組みを採択したことが西バルカンにとって法制度を調和させ制度的な保護措置を強化する契機になると評価し、EU Knowledge Hubが調整する研修と啓発活動による支援を求めた。未成年者がチャットボットや感情応答型とされる仮想人格と関わることの悪用は深刻な懸念である一方、AIチャットボットは過激化のリスクにある個人に代替的な言説やリアルタイムの支援を提供する建設的な役割も果たし得るが、データの透明性やアルゴリズムの偏りに関するリスクを避ける慎重な管理が必要とされる。提案された具体策には、SNSと暗号化プラットフォーム全体で過激化のパターンを検知するAIツールの導入、独立した審査を備えた倫理的監督メカニズムの確立、国家安全保障部門へのAIの統合、デジタルサービス法遵守の確保、EUパートナーとの協働による地域的AI基準の策定、公教育への投資が含まれる。
ゲーミング空間とテロ資金供与
参加者は、オンラインゲーム環境と暴力的過激主義との結びつき、とりわけ西バルカンの未成年者への影響について深刻な懸念を示した。ゲーミングプラットフォームは若年ユーザーが感情的な絆とアイデンティティを形成する没入型の生態系となっており、過激主義的な行為者はプライベートチャット、クランのメッセージング、ボイスサーバーを利用して脆弱な個人を特定し、ゲーム内の軽口に偽装した過激なイデオロギーを紹介する。改造機能やロールプレイ機能を持つゲームは特に操作されやすく、民族ナショナリスト的な意図を反映したカスタムワールドの作成を可能にし、一部では民族的に均質なチームがライバル集団への象徴的な勝利を祝うなど歴史的な不満が反響している。ゲーミング、トラップミュージック文化、匿名プラットフォームの融合は未成年者を有害な歌詞や暴力の美化、マフィア風の人格描写に晒し、過激化と組織犯罪への勧誘を助長するが、地域の当局は一部の警察捜査にもかかわらずこうした空間を検知するツールと専門知識を欠いている。対応策として、法執行機関への専門研修、リアルタイム検知を支えるAIツール、デンマークの「Politiets Online Patrulje(オンライン警察パトロール)」のようにDiscordやTwitchで若者と関わる専従のオンラインパトロール部隊の設置が挙げられた。附属書では、EU資金による「GEMS」事業の下で開発された「Watchtower」ツールが紹介されている。Discord、Steam、Twitch上のテキスト通信を分析し極右的言説や勧誘の試みを検知するAI搭載モデレーションシステムで、Meta社の大規模言語モデル「LLaMA 3」を基盤に精緻なプロンプトエンジニアリングで強化されており、ゲーミングにとどまらずフォーラムやアーカイブされた通信記録の監視にも拡張可能とされる。暗号資産を通じたテロ資金供与も西バルカンでエスカレートしている懸念であり、規制上の空白と技術的能力の限界が地域を脆弱にしている。北マケドニアのデジタル化・サイバーセキュリティ強化の推進は初期対応の例として挙げられた。テロネットワークは銀行の監督を回避できる分散型金融システムの悪用を強めており、緩い国境管理、組織犯罪、金融インテリジェンス機関間の連携不足がこの脅威を増幅している。参加者は、金融インテリジェンス機関内の専門部署設置、暗号資産取引所への顧客確認(KYC: Know Your Customer)およびマネーロンダリング対策(AML: Anti-Money Laundering)プロトコルのEU基準との調和、検察官・裁判官・法執行官への研修、フィンテック業界との官民連携、地域協力プラットフォーム、若者向け公教育キャンペーンを提言した。
インフルエンサー、帰還者、ディアスポラをめぐるリスク
サラエボ会合が示した重要な知見の一つは、ウェルネスやスピリチュアリズム、ナショナリズム的な郷愁といったライフスタイル系コンテンツと過激主義的メッセージを融合させるオンライン上の人物の影響力の高まりである。従来型のプロパガンダの担い手と異なり、こうしたインフルエンサーは公的な制度を不信視しアイデンティティと共同体を求める若者に感情的に訴求する。グローバルな陰謀論を現地の文脈で再パッケージ化し、未解決の地域的な不満を不正義や文化的衰退という広範な言説に結びつける。メンタルヘルスや社会サービス、若者向けアウトリーチにおける制度的支援が欠如する中で、こうしたインフルエンサーは力を与えるように感じられながらも過激主義的な含意を持つコンテンツで空白を埋めている。参加者は、青少年支援者・心理士・ソーシャルワーカーの研修を通じた地域密着型の代替手段への投資、保健省・教育省と市民社会の連携によるメンターシッププログラムの開発、収益化された過激主義的コンテンツを監視・制限するテック企業との連携強化を求めた。会合はまた、紛争地域からの帰還者、とりわけその子どもたちのオンライン活動をさらなる調査と監視が必要な重要領域として特定した。こうしたコミュニティは複雑な再統合の課題に直面し、デジタル空間はしばしば過激主義的な言説を維持ないし再燃させる場となっている。ディアスポラも重要な役割を果たしており、西欧やバルト諸国の極右系情報源を出所とすることが多い偽情報やイデオロギー的コンテンツを拡散し、資金支援を含む過激主義ネットワークとの関係を維持している。参加者は、デジタルプラットフォームが帰還者の再犯リスクの最も高い経路であり、ディアスポラを基盤とした影響力の強力な手段であるとの認識で一致し、個別支援計画(ISP: Individual Support Plan)に過激主義的コンテンツへの接触やオンライン行動パターンを評価するクラスターを追加すること、および西欧の極右系情報源を中心とする偽情報を追跡するディアスポラネットワークのより戦略的な監視を提言した。
偽情報が過激化を駆動する構造
偽情報はオンラインでも従来型メディアを通じても西バルカンにおける過激化の強力な推進力となっているが、地域の過激主義対策戦略において対応は著しく不十分なままである。参加者は、過激主義集団が地政学的な出来事を操作し現地の文脈に合わせた虚偽の言説を作り上げ、感情的な断層を利用して多様な層に影響を与えている実態を強調した。多くの場合、国家的行為者、ビジネスネットワーク、フットボールのウルトラスの影響下にあるメディアがこの力学を積極的に助長し、情報生態系を予防ではなく分極化のエンジンに変えている。既存の脱過激化モデルは、宗教的・政治的・民族的な不満が入り混じるイデオロギー的暴力を増幅する国家統制メディアの役割をしばしば見落としている。議論は、この現象が地方・地域・国際という相互に連関した層で作動していることを示した。地方レベルでは戦争犯罪の否認、有罪判決を受けた戦争犯罪者の美化、民族的被害者意識をめぐる言説が中心となり、スレブレニツァの虐殺を否定する言説など地方発のコンテンツが民族間の敵意を再燃させる武器として利用されている。地域レベルでは、こうした言説がアイデンティティ政治と記憶をめぐる闘争に組み込まれ、セルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの行為者が互いのメッセージを増幅させ合い、ウルトラス集団やインフルエンサーが国境を越えて協力し不満と誇りをめぐる越境的なエコーチェンバーを形成する。国際レベルでは、極右の陰謀論、親ロシア・反西側感情、そして地方の敵意を英語に翻訳してより広い層に届けるミーム文化と交差する。対応策として、若者と高齢層双方を対象とするデジタルリテラシーと感情リテラシー教育の拡充、アルバニアの「Faktoje」やボスニア・ヘルツェゴビナの「Raskrinkavanje」といった現地ファクトチェック団体、および地域的な監視団体「BIRN」や「SEE Check」の強化とP/CVE・デジタル安全戦略への正式な統合、テック企業とのより緊密な連携によるミームや翻訳プロパガンダの摘発、包摂的な記憶文化を促進する地域主導の対抗言説、法執行・司法関係者への研修と地域間の法制度調和が提言された。会合はまた、偽情報とエンターテインメントの融合という見過ごされがちな側面も取り上げた。未成年者はこうした言説を吸収するだけでなくミーム、皮肉めいたジョーク、音楽動画を通じて能動的に拡散し、非公式な偽情報の伝達者となっている。この様式は若者のサブカルチャーに根差すため研究者や政策担当者の目を逃れやすい。高齢世代がニュース源としてSNSに依存しながらメディアリテラシーを欠いている問題や、機関からの情報発信の遅さ・断片化がこの空白を広げている。家父長制的な家族構造も、偽情報の影響を受けた年長の親族がディアスポラの若者を含む若い世代へ言説を伝える世代間伝播を通じてリスクを増幅させ、過激主義的言説を私的領域で常態化させている。参加者は、偽情報が単なる虚偽コンテンツではなく操作・欺瞞・過激化を促す戦略的手段であるとし、ファクトチェックを超えて情報操作の全体構造とコミュニティの行動への影響に対応する体系的な対応、国際的なメディア組織・調査報道記者・主流メディアの連携強化、情報・娯楽・教育の均衡をとる欧州のメディアモデルの採用を求めた。加えて、偽情報は立法・ジャーナリズム・教育・デジタルプラットフォームを通じて民主的制度に浸透する体系的な脅威であるとし、犯罪行為からイデオロギー的影響まで対応する国家機関の設立、人権法制との整合、ジャーナリストとファクトチェッカーの保護メカニズム、市民教育の優先化を提言した。最後に、地域戦略・協調行動・資源配分を組み合わせた「社会全体アプローチ」の必要性が示され、国際機関、ドナー、西バルカンの諸機関、メディア、市民社会、民間セクター、学術界の関与に基づく持続的な取り組みが求められた。
政策・体制面のギャップと提言
会合最終セッションは分科会形式をとり、一方は国内規制・EU基準との整合・法的空白・市民社会の懸念を含む政策枠組みを、他方は技術的な準備状況・資源ニーズ・分野横断的な協力の機会を含む体制・協力の課題を扱った。報告書は両分科会の議論を課題と対応策の一覧として整理している。主要な論点を抜粋すると次のとおりである。
| 分野 | 課題 | 提案された対応 |
|---|---|---|
| 政策 | 予防政策が教育制度に体系的に統合されておらず、資源不足の地域で特に顕著 | 過激化・偽情報予防をデジタル環境重視の形で国のカリキュラムに組み込み、デジタル・メディア・感情リテラシーを育成 |
| 政策 | USAIDの資金撤退により偽情報対応の予防インフラが資金不足・断片化 | EUがUSAID撤退後の戦略的空白を埋め、偽情報対応の資金拠出・調整で主導的役割を担う |
| 政策 | ボスニア・ヘルツェゴビナなど一部の国でオンラインコミュニケーションを規制する法制度が未整備 | ボスニアの通信法を改正し、コンテンツ規制・プラットフォーム協力・デジタル執行に関する制度的な権限を明確化 |
| 政策 | 民族ナショナリスト的な言説やユーモアを装った過激化などボーダーラインケースで過激主義的コンテンツの明確な定義が欠如 | 学術界・市民社会・法律専門家を交えた多者間プロトコルを確立し、過激主義的コンテンツの定義と分類を行う |
| 体制・協力 | 法執行機関の人員・予算・専門性・デジタル対応能力が不足 | デジタル脅威検知に焦点を当てた法執行体制・研修への投資拡大とプラットフォームとの協力強化 |
| 体制・協力 | 未成年者のオンライン有害コンテンツ接触への対応能力が限定的で、保護者向けの相談手段も欠如 | 少年司法制度の対応力強化と年齢確認メカニズムの導入、保護者向けの地域レベルのプロトコルと啓発キャンペーンの整備 |
このほか、教育・保健・法執行・宗教機関間の連携不足に対してはアルバニアの国内リファラルメカニズムを参考にした分野横断的な枠組みの構築が、暗号化環境やディープフェイクなど新興の脅威への対応力不足に対してはデジタルフォレンジックとAI活用の監視システムへの投資が、それぞれ提案された。
グッドプラクティスと日本との接点
附属書は、地域が参照可能な先行事例を挙げている。デンマークの「Online Patrol」は、警察官がSNSとゲーミングプラットフォームを監視しながら若者と直接関わり、信頼関係の構築と安全なオンライン行動の促進を図る積極的関与型のモデルである。スウェーデンはサイバー犯罪センターの下に国家インターネット通報部門を設置し、過激主義的コンテンツを含む違法なオンライン活動に対し予防と摘発を橋渡しする分野横断的な体制を構築している。スペインの「Stop Radicalismos」構想は、ウェブサイト・モバイルアプリ・ホットラインを通じた秘匿性の高い通報経路を提供し、保護者を含む個人が過激化への懸念を通報し助言を受けられる市民中心のモデルで、家族が制度的支援を欠くことが多い西バルカンで特に参考になるとされる。「European Democracy Shield(欧州民主主義シールド)」は、偽情報・外国からの情報操作・干渉(FIMI)・オンライン上の過激主義的コンテンツを監視・対抗するEUの能力強化構想で、欧州民主的強靭性センターの設立、メディア強靭性プログラム、デジタルサービス法・AI法・欧州メディア自由法との連携を含み、西バルカンの国家戦略と越境協力メカニズムの青写真になり得るとされる。会合には日本の警察庁国際テロ対策課の代表団がEUのアジア地域安全保障協力強化プログラム「ESIWA+」による視察の一環として参加し、EU・西バルカン・日本がゲーミングエコシステムで類似のリスクに直面しているとの認識が共有され、欧州と日本のより深い協力の道筋を模索する契機となった。会合の中心的な結論として、参加者はオンライン過激化と偽情報、とりわけ過激主義的アジェンダと結びついた場合のそれを地域にとって最も切迫した課題の一つと全会一致で認識した一方、西バルカンが依然としてこれらの脅威への対応を国際的な支援に大きく依存している実情を指摘した。戦略的な文脈が整いつつある一方で人的・技術的・立法的な準備の欠如は残っており、EU Knowledge Hubは地域の関係者に的を絞った支援を提供し必要な知識移転を促進しうる中心的な制度として位置づけられた。

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