Counter-FIMI: 敵対的主体を「攪乱」する対抗策は正当化されるか——NATO StratCom COE報告書

Counter-FIMI: 敵対的主体を「攪乱」する対抗策は正当化されるか——NATO StratCom COE報告書 情報操作

 NATO StratCom COE(NATO Strategic Communications Centre of Excellence、ラトビア・リガに拠点を置くNATO認定の多国籍軍事組織で、NATOの指揮系統には属さないものの戦略コミュニケーション分野の調査・出版・訓練を担う)が2026年7月31日付で公開した「Counter-FIMI: The Case for Disrupting Hostile Actors」は、同機関の研究者Thomas Colley博士が単著で執筆した44頁のレポートである(ISBN 978-9934-619-85-4、プロジェクトマネージャーJake March、編集Merle Anne Read)。分析対象は2016年以降に英語で発表されたFIMI(Foreign Information Manipulation and Interference、外国による情報操作・干渉)およびcounter-FIMI(対FIMI)関連の報告書・論文であり、方法論は新規の一次データ収集や実験ではなく、既存の二次文献を横断的に整理するレビューである。焦点は「攪乱型(disruptive)」対抗策、すなわちFIMIコンテンツの拡散を抑える、あるいはFIMI実行主体そのものを標的にする介入に置かれる。報告書はこの領域を「counter-FIMI研究の中でも最も研究蓄積が薄い部分」と位置づけ、実務家が文脈に応じた判断を下すための独自フレームワークPERSISTENCEを提示する構成を取る。

FIMIという概念とcounter-FIMIの五分野

 報告書はFIMIの定義をEuropean External Action Service(EEAS、欧州対外行動庁)の第1回FIMI脅威報告書から引用する。FIMIとは「価値観、手続き、政治プロセスに悪影響を及ぼす、あるいはその可能性を持つ、ほぼ非合法的な行動パターンであり、国家・非国家主体(自国内外の代理人を含む)によって意図的かつ組織的に行われる操作的な性格を持つ活動」と定義される。この概念はディスインフォメーション(虚偽・誤解を招く情報の意図的伝達)よりも「行動」に焦点を当てる点で広く、他方で外国主体のみを対象とする点で狭い。もっとも報告書は、FIMIが実際に効果を持つとすれば、それは国内の影響力活動との相互作用を通じてであるとも指摘する。

 counter-FIMIの枠組みは実務者ごとに異なるが、報告書は既存の分類を統合し、対応策を五領域に整理する。状況認識(situational awareness)、社会的レジリエンス構築(building societal resilience)、コミュニケーション対応(communicative responses)、協力(cooperation)、そして攪乱的対応(disruptive responses)である。前四者について報告書は、ファクトチェック、メディアリテラシー、プレバンキング(事前警告)、インオキュレーション(心理的免疫化)を除けば、効果に関するエビデンスは限定的であると評価する。EUのRapid Alert System(2018年設立)、FIMI Information Sharing and Analysis Centre(2023年設立)、EU Hybrid Rapid Response Teams、NATO Rapid Response Group、G7 Rapid Response Mechanismなど協力枠組みの存在は確認できるものの、協力の効果を定量的に測定した研究はほとんど存在しないとされる。

counter-FIMI研究の構造的限界

 報告書は研究の偏りを具体的に指摘する。第一に、研究対象の主体はロシアが中心で、次いで中国、時折イランに限られ、非国家主体によるFIMIはほぼ手つかずである。これはFIMI概念がSalafi-jihadist(サラフィー・ジハード主義)勢力を対象としたカウンターテロリズム系のコミュニケーション研究から十分に接続されてこなかったことに起因すると分析する。第二に、研究地域はWEIRD諸国(Western, Educated, Industrialised, Rich, Democratic)に偏重し、コンゴ、チリ、インド、マリ、フィリピン、太平洋島嶼国、スーダンなどグローバルサウスを扱った研究は少数にとどまる。第三に、分析対象のフォーマットはテキストが中心で、画像・動画は定量化の難しさゆえに軽視されている。第四に、外国発の影響工作に焦点を当てることは政治的に扱いやすい一方、実際の効果は国内の政党・インフルエンサー・メディアによる増幅を経て初めて生じることが多く、この国内外の相互作用は「しばしば言及されるが、ほとんど検証されない」領域だと報告書は述べる。

 counter-FIMIの分類体系自体も乱立している。英国政府のDisrupt, Compete and Defend、Alan Turing InstituteのPrepare, Curb and Respond、EEASのSituational Awareness, Resilience Building, External Action, Disruption and Regulationなどが並立し、2026年6月時点でDISARM Blueのcounter-FIMI行動リストは140項目を超える。標準化されたTTP(Tactics, Techniques and Procedures)の記録手法としてDISARM RedおよびDISARM Blueが用いられ、EEASはサイバーセキュリティの手法に着想を得た情報の符号化・保存・共有システムを運用しているが、報告書は「特定のFIMI活動に特定のcounter-FIMI対応を一対一で対応づけられるかは未証明」であり、サイバー攻撃に対する対抗コードのような技術的対称性は情報操作には成立しないと釘を刺す。

戦術的攪乱の実証エビデンス

 報告書は攪乱型対抗策を「戦術的攪乱(tactical disruption)」と「戦略的攪乱(strategic disruption)」に分ける。前者はFIMIコンテンツの拡散を短期的に抑える措置、後者はFIMI実行主体そのものを標的とし長期的な抑止を狙う措置である。この区分は戦術航空戦力と戦略航空戦力の違いに例えられている。

 戦術的攪乱の中核はコンテンツモデレーション、デプラットフォーミング(アカウント・ドメイン・ネットワークの削除)、アルゴリズムによる優先度低下、収益化停止(デマネタイゼーション)、ターゲティング広告制限の五つである。コンテンツモデレーションについては、投稿後数時間以内のエンゲージメントが最も大きいため迅速な対応が効果を持つとされる一方、プラットフォームがモデレーション手法に関するデータを十分公開しないため効果測定は難しい。Wikipedia型のコミュニティベース・モデレーションは外国からの操作を困難にする可能性が指摘される一方、FacebookやXにおけるモデレーション体制の後退、Telegramのモデレーション拒否といった要因が課題として挙げられる。

 デプラットフォーミングについては比較的データが公開されており、2018年から2021年の間に350件を超える協調的操作キャンペーンの削除が報告されている。ロシアのDoppelgänger作戦(西側ニュースサイトのドメイン名を模倣した大規模な偽装サイト群)とFacebookが「世界最大級のクロスプラットフォーム型秘密影響工作」と評した中国のSpamouflage作戦(50以上のサイト・プラットフォーム、40か国にまたがる数十万規模のアカウント)が具体例として挙げられる。Doppelgängerに対するフォレンジック調査では、複製サイトの多くが未整備・簡素な作りにとどまり、運営者が削除を見越して労力をかけていなかった可能性が示唆される。両作戦とも大規模な削除措置の後も活動を継続しており、報告書はアカウント削除の実際の効果を「シャットダウンではなくスローダウン」と表現する。2020年米大統領選およびCOVID-19パンデミック期に特定のインフルエンサーがデプラットフォームされた際にはエンゲージメントが顕著に低下したが、同時に標的化されたこと自体が当該人物に注目を集める副作用も観察されている。

 アルゴリズムによる優先度低下については、2020年米大統領選でFacebookが暴力扇動の恐れがあるコンテンツを格下げし、COVID-19期には健康関連の誤情報・偽情報が格下げされた事例がある。Facebookは2018年、第三者ファクトチェッカーが「虚偽」と認定したコンテンツの格下げによりエンゲージメントが80パーセント減少したと主張している。ただしこの種の介入はエンゲージメント最大化を収益モデルとするプラットフォームの利害と衝突するため、実施へのインセンティブが乏しい構造的問題が指摘される。

 デマネタイゼーションでは、GoogleとMetaがCOVID-19、気候変動、選挙の公正性に関する誤情報・偽情報を含む広告を禁止した例が挙がる一方、2022年ブラジル大統領選に関する調査ではプラットフォームが誤情報・偽情報を含む広告を特定すること自体に苦慮していたことが示された。国家資金によるFIMIは広告収益への依存度が低いため、デマネタイゼーションは個別の主体や団体の抑止には有効でも、資金力のある国家アクターの戦略計算を変える効果は乏しいと結論づけられる。ターゲティング広告の制限については、EUのGDPR(General Data Protection Regulation)がページビューやウェブ売上を減少させ、デジタル広告の効果を弱めたとの研究がある一方、これは広告全般への影響であるため経済的な副作用も懸念される。

戦略的攪乱――FIMIの「供給側」への介入

 戦略的攪乱はFIMI実行主体を直接標的とし、制裁、規制、法執行、国家間の対外行動を通じてコストを引き上げ、抑止を狙う介入群であり、報告書はこれをcounter-FIMIの中で「最も議論を呼び、最も研究が手薄な領域」と位置づける。理論的根拠は「抑止の拡張」にある。報告書は抑止を四類型に分解する。社会的レジリエンス構築は攻撃の成功可能性を下げる「拒否による抑止(deterrence by denial)」、アトリビューション(実行主体の公表)は検知能力を示す「検知による抑止(deterrence by detection)」および評判コストを課す「非正当化による抑止(deterrence by delegitimisation)」、そして制裁や法執行は将来の作戦コストを引き上げる「懲罰による抑止(deterrence by punishment)」に相当する。デプラットフォーミングのような戦術的攪乱も、インフラ再構築のコストを課すという点で懲罰的抑止の要素を部分的に含むとされる。

 一方でリスクも明確に論じられる。報復とエスカレーションのダイナミクスは不確実であり、米欧がロシア国営メディアRTとSputnikの放送を制限した際、ロシアは西側メディアを標的とする形で応酬した。アトリビューションの決定には特に慎重な判断が要求される。FIMIコンテンツはしばしば標的国内の党派的言説を模倣するため、コンテンツモデレーションやデプラットフォーミングによる対応が「検閲」との批判を招きやすい。証拠収集の面でも、実効性のあるFIMI作戦はプロキシサーバーや暗号化通信、資金洗浄的な仲介構造を用いて痕跡を隠す一方、証拠の多くはプラットフォームが保有し、削除済みであれば検証が一層困難になる。アトリビューションが単一国家ではなくEUのような複数主体に分散して行われる場合、より信頼性が高く、より強い抑止シグナルになるとも指摘される。

規制・制裁・法執行の具体的事例

 規制は他の多くの対抗策の法的基盤となる。オーストラリア、台湾、英国、米国はFIMIを犯罪化しており、リトアニアの情報提供法(Law on the Provision of Information to the Public)は放送・テレビ委員会にドメインとIPアドレスの遮断、広告の収益停止、FIMI実行者への罰金賦課の権限を与える。EUのDigital Services Act(DSA)はプラットフォームとの「共同規制」モデルを採るが、NATO StratCom COE自身が実施した実験的研究では、プラットフォームは依然として非真正コンテンツの特定・削除に失敗しており、DSAの実効性は限定的であることが示されている。

 制裁の事例として、2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻前後のEUによるロシア国家プロパガンダ従事者への制裁、2024年から2025年にかけてモルドバの選挙介入に関与したロシア拠点のEvraziaグループへのEU・英国の制裁、Doppelgänger作戦に関与したロシア拠点のSocial Design Agencyおよび Structura National Technologiesへの英国の制裁、2024年米大統領選での社会的分断扇動を試みたイランのCognitive Design Production Centerへの米国の制裁が挙げられる。2022年3月のRT欧州向け放送禁止は、検索経由サイト訪問を100パーセント、ソーシャルメディア経由訪問を70パーセント、世界全体のサイトトラフィックを18パーセント即座に減少させた。もっともRTはミラーサイトの作成、既存メディアに酷似したドメイン名の使用、仲介サイト経由のリンク、他のYouTubeチャンネルを利用したコンテンツ拡散などにより制裁を回避し続けており、報告書はこれを「時間と資源のコストを課すが、活動そのものは止められない」典型例とする。EU DisinfoLabは2026年、制裁の執行不備により、Social Design Agencyが依然としてエストニアのオンライン仲介業者、ドイツのクローキングサービス、オランダのホスティング、アイルランドの広告サービスなど欧州域内の事業者にアクセスできていたと報告している。

 法執行の代表例はTenet Mediaのケースである。2024年の米国での起訴によれば、ロシアの国営放送RTは複数のペーパーカンパニーを介してTenet Mediaに1000万米ドルを支払い、ロシア政府のメッセージを隠した状態で米国の視聴者向けにコンテンツを制作・配信させていた。RT関係者2名がマネーロンダリング共謀およびForeign Agents Registration Act違反の共謀で起訴され、Tenet MediaのYouTubeアカウントは31万6000人の登録者を抱えたまま閉鎖された。米国上院情報特別委員会による2016年ロシア選挙介入調査、ブラジルの「フェイクニュース」および「反民主主義的行為」に関する複数の議会調査(ジャイル・ボルソナロ政権関係者の訴追につながった)も、法執行に先立つ事実解明の枠組みとして紹介される。

 メディア所有規制も見落とされがちな対抗策として扱われる。中国はこの15年、外国メディア企業への出資を通じて編集方針を自国批判の抑制方向に誘導してきたとされ、批判記事を書いた記者の解雇例も報告されている。英国ではTelegraph紙の買収をめぐり中国・UAE資金の関与が懸念され、政府に買収阻止を求める動きがあった。中国国営通信社の新華社は世界の数十のニュース媒体とコンテンツ提供契約を結び、無償で記事を提供する見返りに編集面での影響力を確保している。2017年にはフィリピン国営通信社が、南シナ海における中国の主権侵害を認定した国際法廷判断を批判する新華社の論説をほぼそのまま転載し、世論の反発を受けて削除する事案が起きている。サイバー作戦については、2018年米中間選挙時に米国がロシアのInternet Research Agencyを一時的にオフライン化した攻撃が公表例として挙げられるが、報告書はエスカレーションの不確実性から「offensive」なサイバー活動の大半は非公開のままであり、長期的な抑止効果を示す証拠はないと評価する。

台湾――「社会総がかり」型counter-FIMIの事例

 報告書は台湾を、他のどの国よりも多くのFIMIに直面していると分析される事例として詳述する。台湾は2019年のAnti-Infiltration Act(反浸透法)により外国主体による政治献金や不正資金を用いたロビー活動・選挙介入を禁じ、これを根拠に統一派候補への資金提供を行った実業家を訴追した。放送法(Radio and Television Act)は外国によるメディア所有を制限し、これに基づき北京寄りの虚偽報道を行った報道機関に罰金を科した実績がある。TikTokとTencentはFIMIへの懸念からアクセス禁止措置が取られ、2024年制定のFraud Crime Hazard Prevention Actはソーシャルメディア企業が虚偽・誤情報の削除を怠った場合に罰金を科す。これらの規制的措置は、Taiwan Fact Check Centre、ファクトチェック用チャットボットMyGoPen、Kuma Academyが運営する市民向けメディアリテラシー講座といったレジリエンス構築策と組み合わされている。

 台湾の「社会総がかり」アプローチは中国発FIMIへの対抗として評価される一方、それが実際に中国の行動を抑止しているというエビデンスはほとんど存在しないと報告書は明言する。さらに国内的な副作用も観察される。野党・国民党(KMT)は北京寄りの立場を取り、むしろ米国による台湾支援を外国干渉とみなす立場を取るため、政府が中国発FIMIにのみ対応し米国には対応しないことを「二重基準」だと批判する。加えて台湾の主要政党双方が、FIMI実行主体と同様の非真正アカウントや有償の投稿者といった手法を自らのメッセージ発信に用いているとの指摘があり、これが民主的正統性への疑義を招き、中国側のFIMIに新たな攻撃材料を与える構図が生まれている。

PERSISTENCEフレームワーク――文脈理解のための構造モデル

 報告書の中核的貢献は、攪乱型counter-FIMIの意思決定に必要な文脈理解を体系化するPERSISTENCEフレームワークである。既存のDIMEFIL、PESTLE、PMESIIといった汎用フレームワークはあるが、counter-FIMIに特化したものは存在しなかったと報告書は指摘する。PERSISTENCEは11の頭文字から構成され、各要素には実務者が自問すべき具体的な問いが付随する。

頭文字文脈要因意思決定における役割
PPolitical(政治)どのFIMI作戦が発生し、どの主体が関与し、どの対応を優先すべきかを左右し、国内外への含意を規定する
EEconomic(経済)FIMIとcounter-FIMI双方の費用対効果分析、攪乱措置に投入する資源、関係者全体への想定コストに関わる
RRegulation(規制)デプラットフォーミング、制裁、法執行を含む、プラットフォーム主導・政府主導双方の攪乱措置の政治的・法的基盤となる
SSocio-cultural(社会文化)どのcounter-FIMI介入が受容可能かつ効果的かを規定し、標的オーディエンスの深い理解を要する
IInformation and evidence(情報と証拠)FIMIのTTPとコンテンツに関する情報収集は最適な対応の決定を助け、プラットフォーム措置・制裁・法的措置の証拠基盤となる
SSystems and processes(体制と手続き)攪乱型対応の迅速性・効率性・執行可能性を担保し、counter-FIMIコミュニティ内の協力を可能にする
TTechnological capability(技術能力)FIMI作戦の特定・追跡・アトリビューション・攪乱に不可欠で、複数主体に分散するため協力が重要になる
EExposure and attribution(暴露とアトリビューション)多くのcounter-FIMI対応の要となる一方、より強い対応の便益と報復・エスカレーション・国内反発のリスクとの比較衡量を要する
NNational strategy(国家戦略)攪乱型対応が国家・組織の戦略目標に資するかどうかを見極める上で不可欠である
CCooperation(協力)能力が複数主体、特にプラットフォームに分散しているため、攪乱措置の執行可能性と効果に不可欠となる
EEvolution and escalation(進化とエスカレーション)FIMIとcounter-FIMIがどう推移するか、特に二次・三次的効果を理解することが、どの攪乱対応に価値があるかの評価に不可欠である

 各要素には実務的な問いが付随する。例えば政治的要因については「このFIMI実行主体の動機は何か」「その作戦は国内政治とどう相互作用するか」、アトリビューションについては「このFIMIキャンペーンはアトリビューションに値するほどのインパクトを持つか」「秘密裏の攪乱や非公式外交はより適切な代替手段か」といった具体的な設問が用意される。

 報告書はさらに、PERSISTENCEを既存の意思決定手法に統合する使い方も示す。英国政府のRESIST2カウンター・ディスインフォメーション・ツールキットが採用する三段階の確信度評価(十分な証拠から妥当な結論に至れる「高確信度」、証拠はあるが追加情報で結論が覆りうる「中確信度」、証拠が単発的または裏付けを欠く「低確信度」)を借用し、PERSISTENCEの11要素それぞれについて確信度を評価する表を提示する。例えば「特定のFIMI主体に対するアトリビューションの便益がコストを上回るとどの程度確信できるか」といった問いに高・中・低で回答する形式であり、報告書はこれを「単純化した例示」と位置づけつつ、SWOT分析のような既存手法に組み込むことで分析の網羅性を高められると位置づける。

今後の研究に向けた提言

 報告書は最終章で具体的な研究課題を列挙する。PERSISTENCEフレームワークを様々な文脈に適用しエビデンス基盤を構築すること、制裁や法執行といった供給側介入の効果に特化した研究を委託すること、デプラットフォーミング・コンテンツモデレーション・アルゴリズム的優先度低下・デマネタイゼーションの効果に関するエビデンスをプラットフォームとの連携強化を通じて構築すること、正負両方の効果(国内の反発や報復を含む)を考慮した縦断的研究を積み重ねること、オンライン以外の外交チャンネルを通じたFIMIにも分析対象を広げること、外交・制裁・経済的な国家運営に関する広範な文献からcounter-FIMIへの含意を引き出すこと、国・文脈横断的な比較研究によって介入の組み合わせを状況に応じて調整できるようにすること、ロシア・中国以外のFIMI主体、特にグローバルサウスにおける事例へ視野を広げること、既存の協力メカニズムを評価し何が機能しているかを検証すること、非国家主体に対するcounter-FIMIのエビデンスをカウンターテロリズムの歴史的文献から引き出すこと、FIMIと国内の影響力活動がどう相互作用するかを追跡する事例研究を深めること、制裁チームや組織犯罪対策機関など政府内の異なるチーム間の連携改善を検討すること、政治的圧力やプラットフォームの政策転換が市民社会団体やファクトチェッカーに与える影響を評価すること、テキストだけでなく音声・映像形式のFIMIコンテンツの効果研究を拡充すること、そしてディープフェイクやAIアバターの常態化が非真正コンテンツの信頼性・正統性認識をどう変えるかを社会学的・民族誌的に検証することが挙げられている。

結論――「測定」から「判断」へ

 報告書の結論部は、ベトナム戦争における米国の初期対反乱作戦との比較を用いる。当時米軍は「サーチ・アンド・デストロイ」作戦において殺害した敵兵や押収した武器の数を成功指標とし、これをもって勝利を主張したが、実際には南ベトナム政府の正統性という政治戦略レベルの争点で失敗しており、米軍の過度に攻撃的な作戦はむしろその正統性を損なっていた。報告書はこの構図をcounter-FIMIに直接重ね合わせ、削除したFIMIコンテンツの量を成功指標とすることのリスクを警告する。オンライン環境から操作的コンテンツを識別・標的化・削除する能力を高めること自体は望ましく、ある報告書が呼ぶ「徹底して実証主義的な」アプローチはcounter-FIMIをできる限りエビデンスに基づくものにしうるが、FIMIの攪乱を「コンテンツをオンラインから消す技術的作業」に矮小化し、それをもって攪乱が機能していると見なすことがあってはならないと結論づける。

 最終的にcounter-FIMIは、戦術的・戦略的、短期的・長期的な介入を組み合わせた多面的なパッケージとして構築されるべきであり、一部の介入については状況証拠しか得られないことを受け入れる必要があると報告書は述べる。どの介入を採用するかは、この戦略的な争いが行われている文脈についての健全な判断に依存し、PERSISTENCEフレームワークが支えるこの文脈理解の精緻化こそが、counter-FIMIを「より的確で、民主主義社会に対するFIMIの脅威により効果的に対応しうるもの」に近づける道であると結ぶ。

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