RSF「プロパガンダ・モニター:中国」――「党を姓とする」メディアから、出所の見えない世界的流通網へ

RSF「プロパガンダ・モニター:中国」――「党を姓とする」メディアから、出所の見えない世界的流通網へ 情報操作

 国境なき記者団(RSF、パリに本部を置き40年にわたり報道の自由を擁護してきた国際NGO)は2026年9月、『The Propaganda Monitor: The China Edition』を公表した。2025年のロシア編に続くシリーズ第2弾で、仏英2言語・112ページ、主執筆者はRSFのAleksandra Bielakowskaである。Anne Bocandé編集局長は序文で、ファクトチェックやデバンクで虚偽を後追いするのではなく、国家プロパガンダの経路・担い手・支配的な物語を体系的に可視化して主導権を取り戻すことをシリーズの目的に掲げる。構成は、第1部が国内の全体主義的な情報統制(6節)、第2部がアジア、太平洋島嶼国、米州、アフリカ、欧州の5地域に及ぶ対外プロパガンダ、最後が民主主義国家への提言である。前提として、RSFは報道の自由の擁護団体であり、本報告書は中立的な学術調査ではない。本文は未公表情報と、RSF.orgに既に掲載された記事の再編集から成り、代表的事例を示すもので網羅的ではないと明記されている。中国国家メディアを一律に「プロパガンダ」と呼び、新疆ウイグル自治区を「東トルキスタン」と表記してその状況を「ジェノサイド」と形容する用語法も、擁護団体としての立場を反映している。立証できなかった点を明示した箇所もあり、根拠の強さは事例ごとに異なる。

国内統制の制度設計:「党を姓とする」メディア

 第1部の出発点は、習近平が2016年に中央テレビ(CCTV)、人民日報、新華社を視察した際の「党と政府が運営するメディアは宣伝の陣地であり、党を姓としなければならない」という発言である。思想的な基盤としては、2013年に流出した宣伝指令「9号文件」が挙げられる。同文書は「言論の自由」を党のマルクス主義的報道観を脅かす西側の価値として退け、記者に「党の意思を反映し、その権威と団結を守る」ことを求めた。制度面の改革は3つある。2014年のメディア融合戦略は、既存の国家メディアとデジタル基盤、データ分析を党の監督下で統合した。2015年の国家安全法は、安全保障の定義にイデオロギー、情報、サイバー空間、社会の安定を加えた。2018年には中央テレビ、中国国際テレビ(CGTN)、中国中央人民広播電台(CNR)、中国国際放送(CRI)を統合して中国中央広播電視総台(CMG)が創設された。報告書はこれらを役割分担された単一の通信システムと描く。

 2020年以降は、報道してはならない話題、いわゆる「レッドライン」が急増した。武漢から感染拡大の初期を報じた市民記者の張展は、2020年に「騒動挑発罪」で懲役4年を言い渡され、2024年5月に釈放された後、同年中に再逮捕されて同じ罪で追加の懲役4年を科された。景気減速、若年失業、「寝そべり」現象といった経済報道も統制の対象となり、2022年11月の「白紙運動」は国家メディアでほとんど報じられなかった。民間メディアについては、国家発展改革委員会が2021年10月に非公有資本の報道機関への出資を禁止し、同月、国家インターネット情報弁公室が財新を転載許可の対象リストから外した。2023年12月には財新が経済改革を求める論説の削除を強いられた。2026年も、6月15日に南方週末が「ある地方公務員の死」を掲載数時間後に削除し、2月13日には微信(WeChat)上の媒体「水瓶紀元」がアップル供給業者での抑え込まれたストライキを報じた記事を最後にアカウントを閉鎖された。

機関設立報告書記載の規模
新華社―従業員1万人超、10言語、海外162支局(地域センターは香港、カイロ、ナイロビ、ニューヨーク、メキシコ市、ブリュッセル)
CGTN2016年160か国で5言語放送、従業員1万人超、70支局、制作拠点はロンドン、ワシントン、ナイロビ
中国国際放送(CRI)1941年44言語、海外の70超の放送局から送出
チャイナ・デイリー1981年公称90万部、読者1.5億人、海外有力紙への広告折り込みが推定400万部
人民日報1948年公称日刊300万部、ウェブサイトは16言語
環球時報1993年中国語版100万部、英語版10万部、ウェブサイトは10言語で公称1日1,500万訪問
中国外文局1949年10超の言語、海外20拠点、英文誌『北京週報』を発行

投獄120人と「情報のブラックホール」

 RSFの2026年世界報道自由度ランキングで中国は180か国・地域中178位であり、報告書は中国を世界最大のジャーナリスト収監国と位置づける。

項目報告書のデータ
収監者数120人(男性85.8%、女性14.2%)
拘束地域東トルキスタン67.5%、中国本土23.3%、香港6.7%、チベット2.5%
罪名罪名が判明している67人に少なくとも40種。多い順に「分裂国家罪」10件以上、「国家政権転覆扇動罪」6件以上、外国勢力との共謀または転覆の「共謀」6件以上
刑期10〜25年が27人以上、10年未満が18人、無期懲役が4人、死刑執行猶予が1人

 東トルキスタンでは、ウイグル・オンライン創設者のイリハム・トフティが2014年9月に無期懲役を言い渡され、サイト「Salkin」管理者のグルミラ・イミンは2010年に無期懲役(2017年に19年8か月へ減刑とされる)となった。2026年には、米国政府系の自由アジア放送(RFA)とボイス・オブ・アメリカ(VOA)がウイグル語放送を終了した。北京の外国人記者クラブ(FCCC)の2025年報告では、東トルキスタンを訪れた記者の61%、内モンゴルでは81%が妨害や嫌がらせを受け、チベット取材の許可を得た回答者は一人もいなかった。当局は一方で、2026年6月に19か国の記者28人を1週間の管理された取材旅行に招いている。報告書が掲載するフランス人記者の証言によれば、休暇で新疆を訪れた際に平均2台の車と4人に尾行され、「CCP」と書かれたTシャツの男たちに村から退去を命じられ、帰京後に外務省の「お茶」に呼ばれ、後にビザを拒否された。チベットでは、RFAとVOAのチベット語放送が一時停止された2026年、CNRがチベット語番組を1本から17本に増やした。

 香港は2002年の18位から2026年は140位に落ちた。2020年以降、少なくとも28人のジャーナリストが訴追され、うち8人が拘束中である。蘋果日報創業者の黎智英(78歳)は2026年2月に国家安全維持法違反で懲役20年を言い渡され、検察は同紙の記事160本超を証拠とした。2025年12月には国家安全維持公署が通信社の幹部記者を呼び出し、「警告しなかったとは言わせない」と告げた。国家安全維持法の施行以降にビザ拒否や入境拒否を受けた外国人記者は少なくとも13人で、執筆者のBielakowska自身も2024年4月に香港空港で拘束され、国外退去処分を受けている。

越境弾圧とサイバー攻撃

 報告書は、共産党の幹部が「海外の党の敵」、すなわち亡命記者への対応を優先するとの合意に達したことで越境弾圧が強まり、統一戦線工作部がそれを調整していると記す。財経誌の記者・白兆東は、2024年10月にタイ・チェンマイの入国管理事務所で中国の法執行官4人に待ち伏せされたとされ、その後潜伏した。2026年1月に収容施設へ移されたが、第三国行きの便への搭乗を2度阻止された。英マンチェスターでは2024年、RFA広東語放送の記者Matthew Leungが、中国領事館員による抗議の落書き消去を撮影していたところを副総領事らに取り囲まれ、「住所は知っている」と告げられた。ウイグル人記者グルチェフラ・ホジャの報道後には、親族25人が拘束された。2026年7月に施行された民族団結進歩促進法は、「民族団結を損なう」ことを口実とした訴追の余地をさらに広げた。

 サイバー攻撃の記述は具体的である。亡命ウイグル人媒体Uyghur Postは2026年3月の攻撃で5日間停止した。香港の亡命媒体Points Mediaでは、2025年5月に記事内への不正リンクの挿入、同年11月以降に複数国からの自動化された標的型ログイン試行と正規寄稿者名義の不正投稿が続き、2026年4月には乗っ取られたアカウントからカジノに関する英語記事が自動生成・投稿された。接続元はルーマニアのアドレスまで追跡されたが、実行者は特定されていない。国外の記者も標的となっている。2025年、フランス2の調査報道番組『キャッシュ・インヴェスティガシオン』が、デカトロンの主要下請け企業にウイグル人強制労働の疑いがあると報じると、担当記者2人と番組のアカウントに殺害予告を含む数千件の投稿が押し寄せ、新華社がその論調をなぞって番組を「出来の悪い反中プロパガンダ」と非難した。国家メディアが攻撃の要点を反復して嫌がらせを正当化し、国際化させる構造である。

AIと検閲技術の輸出

 RSFは2025年の調査で、DeepSeek、文心一言(Ernie)、通義千問(Qwen)の回答に政治的検閲と国家承認の論点が組み込まれていることを確認した。DeepSeekは劉暁波について回答を生成し始めたものの、「Liu」の文字が現れた瞬間に文章がリアルタイムで消えた。張展の収監理由を問うと名前に一切触れず、「独立した司法」「法の尊重」「偽情報の危険」を繰り返した。報告書にはオレゴン大学のHannah Waightへのインタビューも収められている。同氏の研究は、中国国家メディアの調整された言語空間が、非営利のウェブ収集計画Common Crawlなどを経て大規模言語モデルの学習データに入り、ChatGPT、Claude、Geminiの出力を中国語での質問時に親中国寄りにしていると主張する。Waightは、学習データの多くがモデル誕生以前に収集されたものであることを理由に中国当局の意図は認められないとしたうえで、この経路が存在すること自体が権威主義体制に情報空間を統制する新たな動機を与えると述べ、ベトナムやトルクメニスタンでも同様の過程が進んでいると見る。

 技術輸出の事例はミャンマーである。2025年9月、検閲監視プラットフォーム「Great Firewall Report」のMingshi Wuが「グレート・ファイアウォール」の大量流出文書を公開し、中国企業Geedge Networksが軍事政権に同等機能を持つ商用システムを供給していたことが明らかになった。Wiredの分析によれば、同システムは通信事業者のデータから利用者を特定し、通信パターンや社会的つながりを示すメタデータを収集する。国家の国際接続点に設置され、ウェブサイトの遮断やVPNの制限によって国内3,340万人の利用者に影響を及ぼす。NGO「Justice for Myanmar」が入手した内部文書では、2022年に試験導入され、2024年5月に稼働した。創業者の方濱興は「グレート・ファイアウォールの父」と呼ばれる人物である。ベトナム(174位、収監27人)はデータの国内保存義務と国家支援のサイバー部隊を、カンボジア(151位)は2021年承認の国家インターネットゲートウェイをそれぞれ導入しつつあり、日本経済新聞は後者の計画が2025年に再開されたと報じている。

「分散コンテンツ・集中統制」:対外発信の5段階モデル

 第2部の中心的な枠組みは、中央の統制のもとで、内容の制作は分散させるという構造である。2021年5月、習近平は「中国の特色ある戦略的コミュニケーション体系」の構築を指示し、各級の党委員会に国際発信を責務として組み込むよう求めた。2018〜2023年には100を超える「国際伝播センター」が省、市、県レベルのメディアに設けられ、Facebook、Instagram、YouTube、TikTokで、インフラ、技術革新、農村振興、文化遺産、観光といった政治色の薄い生活系コンテンツを量産している。予算面では、2023年の中央予算で「外交活動」(対外宣伝を含む)に540億元(80億ドル超)が計上され、前年比12.2%増と国防費の7.2%増、公安費の6.4%増を上回った。これとは別に、ジェームズタウン財団は2020年、統一戦線系の主要組織の支出を年約26億ドルと推計している。報告書は国家メディア以外の対外戦略を次の5段階で整理する。

段階手法代表例
1. 既存の媒体の借用華人系メディアの取り込み、コンテンツ提供契約、有力紙への広告記事の折り込み1990年代の星島新聞集団、2009年に報じられた450億元の対外メディア投資計画、2011年のタイムズスクエアでの国家イメージ広告
2. フォーラムと研修制度化されたメディア協力、記者の交流と研修2012年の中国アフリカ・メディア協力フォーラム(2026年に第7回)、2018年の中国ASEANメディア協力フォーラム
3. プラットフォームへの直接進出TikTokの世界展開、「ブロガー外交」、外国人インフルエンサーCGTNの人材公募企画「メディア・チャレンジャー」
4. 協調的な物語の管理外交官、国家メディア、インフルエンサーの同時動員新型コロナの米軍起源説、批判を「汚名化」として退ける対応
5. 情報環境の支配国家、民間企業、メディアの協働による未検証の主張の増幅2023年、国家コンピュータウイルス緊急対応センターと奇虎360の未公開報告に基づく「米国による武漢地震観測センターへのハッキング」説が海外のセキュリティ専門媒体に転載された事例

「本物の外国人の声」の製造

 2016年に習近平が打ち出した「四つの自信」のうち、報告書は文化的自信を背景に置く。2021年には、中央宣伝部副部長でCMG台長の慎海雄が「多言語インフルエンサー・スタジオ」の育成メカニズムの改善を指示した。同年に始まった「メディア・チャレンジャー」は国際的な人材コンテストの形式をとり、北京、ワシントン、ロンドン、ナイロビでの職を提示した。最終候補24人のうち、香港の記者だったEnoch Wong(当時35歳)は2022年9月から2年間CGTNの番組司会を務め、アイルランド人のSéan Dohertyは2026年1月までCGTNのグローバル経済部門で新媒体編集者を務めた。他の候補者は独立系の発信者として中国の日常を好意的に伝え続けており、報告書は国家メディアの司会者と一見自律的な発信者との境界が曖昧になっている点を強調する。CRIチェコ語部は「船を借りて海に出る」戦略のもと、新型コロナ流行期に中国系のチェコ人・スロバキア人学生へ、中国の対応を称賛するスローガンを唱える動画1本につき20ユーロを提示したと、チェコ紙Deník Nが報じている。

 特派員募集企画「グローバル・ストリンガー」に登場する武漢在住の米国人教師Marissa Lindsayや、東トルキスタンで西側報道を非難した英国人の動画投稿者Jason Lightfootらについて、RSFは国家からの直接的な資金提供を立証できなかったと明記している。ただし、企画のウェブページには内容不明の「ボーナス」の記載がある。上海日報に所属するニュージーランド人のAndy Borehamは、X上で18.67万人、YouTube上で12.9万人のフォロワーを持つ。旧ツイッターは2022年に同氏を中国国家系と表示していたが、2023年4月にその表示を外した。同氏は前述のフランス人記者への攻撃を増幅し、その投稿は新華社、人民日報、チャイナ・デイリーの記事素材として使われた。チャイナ・メディア・プロジェクトのDavid Bandurskiは、物語より協力の仕組みを懸念し、「中国の物語をうまく語る」「前向きなエネルギーの報道」「コンテンツ共有協定」といった語の反復に着目すること、資金の出所、議題の設定者、最初に接触してきた者、所有構造を調べることを記者に勧めている。

地域別事例:同じ道具、異なる結果

国・地域主な手法報告書の具体データ
フィリピン大使館による名指し攻撃と不正アカウントによる増幅2026年2月25日深夜の大使館副報道官の投稿から2時間で100超のアカウントが反応、2か月で大使館投稿8本、反応したアカウントの21〜34%が不正の可能性大
台湾生活系ページへの政治的な物語の混入Wubianjie社が数百のFacebookページを運営、Metaが2026年3月に摘発した別のネットワークは広告に1.5万ドルを投入、報道への信頼度は25%(世界平均37%)
ソロモン諸島資金・機材の提供に編集上の条件を付与記者協会の会員70人中30人以上が訪中、政府広報部門の職員の約9割が2019年以降に訪中
グレナダ招待旅行による現役記者の取り込み現役記者の「90〜95%」が訪中(現地記者の推計)
米国華人向けサイトへのWeChat経由の指示アーケイディア市元市長Eileen Wangが2026年5月に無登録の外国代理人として有罪答弁
エジプト大使館のWhatsAppグループ経由の招待と記事確認アル・アハラーム紙の職員が2022年9月と2025年末に空港で拘束
南アフリカ資本参加と通信社経由の配信国家系の2社がIndependent News and Mediaに20%出資、2018年にウイグル問題を書いたAzad Essaの連載が打ち切り
ジョージア地元テレビでの番組枠と国家メディア記事の転載テレビ局Obiektiviの週刊番組「中国パノラマ」に大使館が資金提供(2025年の規制当局データ)

 フィリピンの事例では、調査報道センターPCIJと寄稿者Regine Cabatoが、中国プロパガンダの見分け方を解説した記事を理由に標的となった。デジタル権利団体Democracy.Net.PHは、19世紀末以降ほぼ使われなくなった発音区別符号をフィリピン語に付けるアカウントを確認し、運営者の一部は非母語話者と推定している。攻撃の3月11日のピーク後、大使館は3月19日に、抗議したRSFなどの団体を攻撃する側に回った。台湾では、高齢者向け健康ページ「50 Plus Healthy Life」が2026年3月、米国のイラン攻撃に際して中国国家メディアに近い論調の分析を投稿した。名言ページ「Classic Quotes」は2023年7月に「郭台銘の名言」へ改名され、選挙期間中に北京寄りの候補を推すページへ転じた。Wubianjie社は2020年に国営の秦皇島ラジオテレビと戦略提携を結び、その4か月後に河北省の宣伝部とネット情報弁公室の幹部が同社を訪問しているが、報告書はこれらの関係がすべてのコンテンツへの政府の指示を立証するものではないと付記している。

 南アフリカの記述で目を引くのは「情報ロンダリング」の構造である。Independent News and Mediaの会長Iqbal Survéは、人民日報が議長を務める「一帯一路ニュースネットワーク」(25か国40媒体)の理事となった。同グループが2015年に清算済みの南アフリカ通信社の資産を引き継いで設立したアフリカン・ニュース・エージェンシー(ANA)は、初年度に新華社と契約を結び、2019〜2021年には新華社の記事を定期的に転載していた。その記事は地域の他の報道機関へ出所を明示されないまま流れていく。エジプトでは、国営の情報機関である国家情報局と新華社の協力が2016年1月の覚書に始まるが、中国大使館の招待で訪中しようとした国営紙職員が情報機関に拘束されている。Mahmoud Diabは3年間の強制失踪を経て、2025年9月に「スパイ」罪で法廷に姿を現した。この事例は、受け入れ国の側にも摩擦があることを示している。

 欧州では、デンマークの大使館がBerlingske紙の台湾報道に書簡と声明で抗議した。フランスでは、CGTNフランス語版のShanhui Zhangが2025年5月から24時間ニュース局CNewsに「CNews北京特派員」などの肩書きで出演し、報酬は受け取っていないと調査報道サイトMediapartが報じた。ドイツでは、公共放送NDRが2017年にCGTNとの共同討論番組を「無修正・無編集」で放送する合意を結んだ。Berliner Zeitung紙は2024年秋からCMG特派員による月例連載「中国の視点」を24回掲載している。ウクライナの被占領地では、鳳凰衛視ロシア支局長の盧宇光(抖音のフォロワー4,300万人)がロシア側の呼称「特別軍事作戦」を用いて報じている。微博上では、ロシア国営のスプートニクが1,186万人、RTが214万人のフォロワーを集め、中国の国家メディアがそれを情報源として使っている。中露の物語は相互に補強し合っている。

規制の論点と提言

 報告書が民主主義国家にとって再現可能な法的手段として示すのは、英国の放送規制機関Ofcomの判断である。Ofcomは2021年2月、CGTNの免許を剥奪した。免許保有者のStar China Media Limitedが実質的な編集責任を負っておらず、最終的に共産党が支配しているため、政治団体による免許保有を禁じる英国の規則に反するという判断である。同年にはさらに、2019年の香港デモ報道の公平性違反や、2013〜2019年に桂民海、Simon Cheng、Peter Humphreyの強制された自白を放送したことなど4件で、計57万ドル相当の制裁金を科した。報告書は、この判断が内容の評価ではなく所有と統治の透明性に基づいていた点を重視する。一方、CGTNは2021年8月、欧州評議会の越境テレビ協定を根拠にフランスで認可を得た。衛星事業者Eutelsatがフランス企業であるため、当時の視聴覚高等評議会(CSA、現在の視聴覚・デジタル通信規制機関Arcom)が管轄当局となったのである。RSFがEU23か国の351のテレビ事業者カタログを調べたところ、69のカタログにCGTNまたはCCTV-4が含まれていた。2026年7月23日と8月19日のCGTNフランス語版では、午前6時〜午後8時の14時間のうちニュースは2時間で、フィリピン沿岸警備隊との衝突をフィリピン側の責任とする報道や、択捉島をめぐる日露の緊張でロシア当局に発言の場を与える報道が見られた。公共放送と同列に並ぶことで生まれる「偽りの同等性」が、CGTNの信頼性を補っていると報告書は指摘する。

 提言は4つの柱から成る。第一は情報空間の保護で、設立地を問わない同一ルールの適用、独立規制機関による所有・資金・広告収入の開示要求、証拠に基づく場合に限った比例的で期限付きの配信停止を含む。第二は、RSFが主導する報道の信頼性基準「ジャーナリズム・トラスト・イニシアチブ」などに準拠する信頼できる情報源を、プラットフォームとAI事業者に優先表示させる法的義務である。第三は亡命記者の保護で、ノン・ルフールマン原則(迫害の恐れがある国への送還禁止)の徹底と、長期ビザの迅速な発給を求める。第四は、黎智英、張展、董郁玉、桂民海ら120人の釈放要求で、中国憲法第35条から第40条の保障を根拠に掲げる。

分析:報告書の新しさと射程

 以下は筆者の分析である。報告書の最大の価値は、中国の対外発信の重心が「国家メディアが直接語る」段階から、「出所が見えなくなる流通経路を設計する」段階へ移ったことを、5地域の事例で並べて示した点にある。ANAを経由した新華社記事の転載、Wubianjie社の生活系ページ、外国人発信者、Berliner Zeitung紙の定期連載はいずれも、虚偽を含まなくても成立する。ドイツの章が述べるとおり、特定の側面を強調し、他を体系的に省く構造である。そうであれば、評価の単位は個々の投稿の真偽から、契約、出資、最初の接触、研修の履歴といった供給網へ移らざるを得ない。Bandurskiの助言とOfcomの判断基準は、この点で同じ方向を指している。

 第二に、報告書は受け手側の脆弱性を繰り返し描いている。ソロモン諸島の広告市場の縮小、ナイジェリアの給与未払い、2025年の米国際開発庁解体による独立メディア支援の撤退はいずれも、影響工作の成否が送り手の能力だけでは決まらないことを示す。Bandurskiも中国の役割を過大評価すべきではないと述べており、中南米の漁業問題やエジプト情報機関の警戒は、影響が無摩擦には進まないことの具体例である。第三に、根拠の強さには幅がある。米国の裁判記録、Ofcomの決定、ミャンマーの流出文書は検証可能性が高い一方、匿名証言やRSF自身が立証できなかったと認める事例も同じ紙幅で並ぶ。トルコの章では、新華社トルコ語版のフォロワー数1億300万人と、関連アカウント合計3,800万人という数値が整合しないなど、数値の精査を要する箇所もある。日本は報告書でほぼ扱われていないが、日本人記者の香港入境拒否や、択捉島をめぐるCGTNの報道は、日本の情報空間がこの枠組みの外にはないことを示唆している。

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