ロシアのウクライナ侵攻から3年が経過し、情報戦の重要性がますます明らかになっている。EUvsDisinfoが発表したレポート「What we have learnt about FIMI after three years of full-scale war in Ukraine」では、ウクライナが直面した外国による情報操作(FIMI)と、それに対する対策について詳細に分析されている。本記事では、その内容を紹介する。
1. ロシアの情報戦の進化
ロシアのウクライナへの情報干渉は侵攻前から始まっており、戦争が本格化するにつれて手法が進化してきた。
- 2000年代初頭:「Kolchugaレーダー売却疑惑」など、ウクライナの国際的信用を失墜させるための虚偽情報を拡散。
- 2014年のクリミア併合後:「クーデター」「ネオナチ政権」などの偽情報を拡散し、ロシアの侵攻を正当化。
- 2022年の全面侵攻直前:「ウクライナは失敗国家」「ウクライナはテロ国家」などのプロパガンダを展開。
2. 戦争におけるFIMIの戦術
ロシアの情報戦はフェーズごとに変化し、その目的も異なっている。
初期(2022年2月〜):「情報電撃戦」
- 「キーウを3日で制圧」という虚偽の情報を拡散。
- ディープフェイク技術を使用し、ゼレンスキー大統領の「降伏宣言」動画を作成。
- Telegramを活用し、占領地域の「地元ニュース」を装った偽情報を発信。
情報の持久戦(2022年秋〜2023年初頭)
- 停電、動員、汚職問題を利用し、政府への不信感を煽る。
- ウクライナの社会分断を狙った情報操作を強化。
情報消耗戦(2023年末〜)
- AI生成コンテンツやボットを活用し、心理的負荷を強化。
- 動員違反や汚職スキャンダルを誇張し、社会不安を煽る。
- 「ウクライナは戦争に勝てない」という絶望感を醸成。
3. 主要な偽情報のナarratives
ロシアは特定のナラティブを利用してウクライナを貶め、国際社会の支援を削ごうとしている。
- 「ウクライナはロシアの一部」:「一つの民族」「ロシアの影響圏」
- 「戦争の正当化」:「ウクライナ政府はネオナチ」「2014年のクーデター」「ウクライナ軍の戦争犯罪」
- 「汚職と腐敗」:「ゼレンスキーは腐敗している」「西側の支援はウクライナ政府が着服」
- 「動員の恐怖」:「戦場に送られる=死」「ウクライナ軍は無能」「政府は国民を見捨てた」
4. ロシアのFIMIエコシステム
ロシアは複数の手段を組み合わせてFIMIを展開している。
- 疑似ウクライナ系メディア:クローンサイトや偽アカウントを運用。
- ボットネット:SNSでの大量投稿、誘導コメント。
- 外国メディアを利用:第三国のニュースサイトを通じて偽情報を拡散。
- ディープフェイク・プロパガンダ:ゼレンスキー夫人の高級ジュエリー購入などの虚偽ニュース。
5. ウクライナの対応
ウクライナは政府、民間団体、国際支援を活用し、FIMI対策を進めている。
政府機関
- 戦略コミュニケーション・情報安全センター(CSCIS)
- 国防省・安全保障会議・諜報機関(SBU, HUR, 外務省)
市民社会・独立メディア
- OSINT団体(StopFake, Molfar)
- メディア監視機関(Detector Media, CEDEM)
EU・西側支援
- 戦略的コミュニケーション強化
- メディアリテラシー向上
6. ハイブリッド戦争としてのFIMI
FIMIの最大の脅威は、「偽情報そのもの」ではなく、「ナラティブの浸透」にある。
- 「ウクライナは失敗国家」という印象を世界に植え付ける。
- ロシアのFIMIはウクライナだけでなく、NATOやEU諸国にも拡大。
- 戦争は物理的領土の奪取ではなく、情報空間の支配が鍵。
結論
ウクライナ戦争は、現代の戦争が単なる軍事戦ではなく、情報戦の側面を持つことを示している。ロシアの情報操作は国内外に影響を与え、ウクライナ政府の信用を低下させようとしている。ウクライナは戦略的コミュニケーションや情報防衛を強化しているが、西側諸国のさらなる対策が不可欠だ。
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