以前、Metaのファクトチェックプログラム終了:表現の自由と新モデルへの移行で書いたように、Metaは米国におけるサードパーティ・ファクトチェックプログラム(3PFC)を終了した。2025年1月31日に公開されたEDMOの報告「Top ten disinformation stories in the EU that the META fact-checking program helped mitigate」では、3PFCが偽情報の拡散をどのように防ぎ、社会の安定に寄与してきたかが具体的な事例とともに示されている。特に、選挙、健康、気候変動、社会不安などの分野において、いかにして偽情報が広がり、それを食い止める役割を果たしてきたかが明らかにされている。
Metaの3PFCが防いだ偽情報トップ10
EDMOの報告では、3PFCがEUで軽減した代表的な偽情報事例が以下のようにまとめられている。
10. マンモグラフィーに関する陰謀論
クロアチアでは「マンモグラフィーは女性を傷つけるための組織的犯罪である」というデマが拡散した。科学的根拠に基づき、この誤情報はファクトチェックされ、訂正が加えられた。
9. 偽の募金キャンペーン
ギリシャでは、「3歳の少女ががんで苦しんでいる」として偽の募金キャンペーンがSNSで広まり、4万ユーロ以上が詐取された。この偽情報は3PFCにより露見し、拡散が抑制された。
8. 社会不安を煽る偽情報
ドイツ・マクデブルクでは、サッカーファンの映像が「反テロデモ」として歪曲され、社会不安を煽る目的で拡散された。ファクトチェックにより、事実とは異なる内容であることが明確になった。
7. 選挙関連の偽情報
スペインでは、有名ジャーナリストが特定政党の広報担当として雇われたという虚偽情報が拡散された。
6. DANA洪水に関する陰謀論
スペインの洪水後、軍服を着た男が「政府が意図的に洪水を引き起こした」と主張する動画が拡散。ファクトチェックの結果、この男は軍人ではなく、主張も完全に虚偽であることが判明した。
5. 気候変動関連の偽情報
「山火事や異常気象は気候変動とは無関係である」とする誤情報が拡散。科学的証拠に基づき、この主張は誤りであるとされた。
4. ロマ(ジプシー)に対する誤情報
ギリシャでは、「ロマが全犯罪の86%を占める」という誤解を招く統計が広まり、差別を助長した。実際には、組織犯罪の一部を指しているだけであり、全犯罪の大多数ではなかった。
3. COVID-19関連の偽情報
COVID-19ワクチンによる大量死を示唆する虚偽情報が拡散したが、ワクチンの安全性に関する科学的データに基づき、これが誤情報であると指摘された。
2. 火災の放火犯とされたボランティア
ギリシャの火災で、実際には消火活動を行っていたボランティアが「放火犯」として誤認され、攻撃対象になった。ファクトチェックにより誤認であることが明らかにされた。
1. 選挙関連のディープフェイクと情報操作
スロバキアとルーマニアでは、選挙期間中に候補者の発言を歪める編集動画やディープフェイク音声が拡散し、選挙の公平性が損なわれた。3PFCによる検証が行われ、これらが虚偽であることが確認された。
EDMOの見解と懸念
EDMOは、Metaの3PFCがEUの偽情報対策において極めて重要な役割を果たしていたと指摘し、以下の懸念を示している。
- 警告ラベルの削除が偽情報拡散を加速させる
- 3PFCが機能していたとき、EUでは6800万件以上の投稿に警告ラベルが付与され、95%のユーザーが誤情報をスルーしていた。
- これがなくなることで、誤情報を事実と誤認するリスクが増加する。
- 「Community Notes」モデルの限界
- ユーザー主導のファクトチェックは迅速な対応が難しく、特に政治的に対立のある話題では、コンセンサスを得ることが困難。
- その結果、誤情報が放置されるリスクがある。
- 民主主義への脅威
- EDMOは、Metaの方針変更が民主主義社会における情報の信頼性を損なうと警鐘を鳴らしている。
- ファクトチェックは検閲ではなく、正しい情報提供のための手段であると強調している。
まとめ
Metaの3PFC終了は、偽情報対策における大きな転換点となる。このプログラムはEUにおける広範な偽情報の拡散を防ぎ、社会の安定に貢献していた、とEDMOは主張している。今後、EUが独自の規制を強化する可能性が高まっており、Metaの対応も注視される。偽情報対策は単なるプラットフォームの課題ではなく、社会全体の問題として取り組まれるべきである。今後もこの動向を監視していく必要がある。
コメント
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